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リノベーションしながら成長するオフィス。 ENJOYWORKS

角舞子/ハロリノ編集部2018.5.3

起業家のスタートアップはコワーキングオフィス、というスタイルも定番化してきた。そこでビジネスの芽が出てきたら次なる一手をどう打つか。コワーキングに留まる?それとも自分の城を持つ? ローカルに根ざしたワークスタイルをイメージするなら、鎌倉の由比ガ浜通りで古い空き店舗をリノベーションしてオフィスにしているエンジョイワークスの事例が面白い。

 

由比ガ浜通りにあったシルバーアクセサリーの店舗跡。商店街の知り合いを通じてオーナーを紹介してもらった。

 

商店街で初めの一歩

鎌倉駅から長谷観音や大仏様へと向かう由比ガ浜通りは、観光客にとってのメインストリートであると同時に、このまちに暮らす地元住民の生活道路でもある。通りの両側には、観光客向けの店舗もあるけれど、米屋、八百屋、金物屋、クリーニング店、美容室、老舗の飲食店といった、昔からここで地元相手に商売をしてきたお店も混在している。

しかし人々の生活や買い物のスタイルも変化した現在、全盛期に比べればこの通りの賑わいは穏やかになり、ここ数年は店主の高齢化のためシャッターを閉めたままの店舗も目立つようになっていた。

東京の世田谷で起業したエンジョイワークスが、由比ガ浜通りにオフィスを移転したのは2011年のこと。

2006年の創業当時から鎌倉、逗子、葉山といった湘南エリアのライフスタイルや家づくりを事業の中核にしようとしていた同社にとって、鎌倉への移転は長らくの念願だった。

湘南でビジネスをするなら、やはり拠点は鎌倉。しかも観光色の強い小町通りなどの東側ではなく、地元の人や暮らしとの距離が近い西側の由比ガ浜通りで、と決めていたという。

 

鎌倉に初めて構えたオフィスの内装はごくシンプル。
元のエントランスの造作を生かしつつ、室内にはスタッフの配置と動線を考えた大きなデスクを1つ造作しただけ。

 

地元色が濃い、ということは外から入ろうとする者にとっては試練にもなる。シャッターを閉めたまま使わないでいるのなら、そのスペースをぜひ自分に安く貸してほしい!と思うのが借りたい側の心情だが、オーナー側からすると昨日今日鎌倉に来た信頼のおけないよそ者に貸すぐらいならシャッターを閉めたままにしておいた方が楽、別に困っていないし、というのが本音だ。

そんな土壌の昔ながらの商店街によそ者が場所を持とうとする時、必要なのは地元のキーマンとつながること、そして自分たちをどうにかして信頼してもらうことである。エンジョイワークスの創業者である福田と小川は、移転の数年前から、この通りでいちばんの老舗である米屋の主人との親交を温めつつ、商店街が開催する夏祭りに毎年手伝いに来ては焼きそばを焼いて地元に顔を売るという地道な活動を続けていた。そんな努力のかいあって、米屋の主人伝いに物件オーナーに話がつき、由比ガ浜通りのシルバーアクセサリーショップ跡の空き店舗を貸してもらえることになった。ローカルに入り込む初めの一歩をどう踏むかは非常に重要であり、突破口は理屈で得られるものではない。

 

外観は白いペンキで塗装、向かって右の門扉の向こうには多肉植物の寄せ植えなどライフスタイルを感じさせる提案を。ライトが灯るオリジナルの看板も設置した。

 

この鎌倉で初めての事務所を開いた時、エンジョイワークスのメンバーは社長 福田と取締役 小川の2人だけ。まずは湘南エリアの個性的な不動産物件を新しい着眼点から紹介するウェブサイトを本格的に稼働させつつ、不動産仲介をメインに少しづつ実績を積み重ねていった。

業績が上がって来たところで、スタッフを1人、また1人と増やし始めた。不動産仲介を任せられるスタッフ、情報発信に強いスタッフ、そして建物を建てられる設計士。不動産仲介だけでなく、オリジナルで設計ができればさらに提案できることも広がる。建築設計を2本目の事業の柱にすることも、エンジョイワークスが早期に実現したい目標だった。

 

シルバーアクセサリーの店舗跡に隣接していた仕立て屋は、この物件のオーナーの亡くなったご主人が営んでいた。
信頼関係の下、そのスペースを使わせてもらえることに。

 

2度目のリノベーション

スタッフが増えて来てさすがに手狭になった元アクセサリー屋のオフィスを不憫に思ったのか、オーナーから隣接している元仕立て屋だったスペースも使っていいと話があった。この仕立て屋は、オーナーの亡くなったご主人が営んでいた店だ。オーナーにとっても思い出深いであろうそのスペースを使わせてもらえるだけの信頼関係を、エンジョイワークスが培ってきた証だろう。

2013年の初春、長い間シャッターの降りていたこの仕立て屋跡のリノベーションが始まった。隣のオフィスとは壁一枚で隔てられていたが建物自体は一つで、オーナーからは間の壁を抜いて2つのスペースをつなげてもいいと許可をいただいた。仕立て屋部分には2階もあったが、オーナーのご主人の思い出の品々をひとまずそこへ仕舞い、階段部分は壁を設置していったん塞ぐことにした。その時点では2階部分まで手を入れるほど大きなスペースは必要なかったし、施工費も抑えられる。

 

2つの元店舗を内部でつなげて1つのオフィスにし、それぞれの入り口はそのまま残した。
入り口の頭上にある幸運の虫フンコロガシも元のまま。

 

こうして隣接した2つの別の店舗だったスペースを、表向きの入り口はそのままに内部で1つの空間につながったユニークなオフィスができ上がった。2つのスペースは床の高さが違うのだが間に階段を付けてつなぎ、その高低差が目線の変化を生んで、空間を分ける効果的な仕切りの役目を果たしている。

 

社員数が大幅に増えた2017年には、元仕立て屋の2階スペースも借り受け、オフィスをさらに拡張することに。

 

そして3度目の拡張

創業から10年目を迎えたエンジョイワークスは、当初からの不動産仲介と建築設計の事業に加えて、カフェやゲストハウス、シェアオフィスの自社運営や、それらの業態を志す人にそのノウハウを提供して開業を支援する事業、全国で増加の一途をたどる空き家をみんなの力で再生・利活用するためのクラウドファンディングサービス事業にも乗り出した。それに伴い、今までのメンバーにはないスキルやキャリアを持つ新たなスタッフを増員することになった。

当然オフィスはまたも手狭になったため、いよいよ元仕立て屋の2階スペースまで使わせてもらえないかオーナーに相談、オーナーはもちろん快く承諾してくれた。2度目のリノベーションの際に塞いだ階段をもう一度開けての工事だ。

 

元々あった間仕切り壁を生かし、中窓をつけて2つの空間に。
窓際にカウンタータイプのデスク、中央部にはみんなで囲める大きなデスクを造作し左官材でモルタル風にコーティング。

 

こうして3度のリノベーションを経て、エンジョイワークスのオフィスは現在の形に至る。その時その時の会社の状況に合わせ、オーナーや商店街との信頼関係を最も大切にしながら、あくまでも身の丈でできることを着実に形にしてきた結果だ。このリノベーションの歴史は、同社の、未来を見据えながらも足元から地道に積み上げる事業展開と同じ軌道を描いている。

まちなかや商店街でよく見かける長屋のようにつながった空きビルや空き店舗なども、このケースと同様の活用ができるかもしれない。例えば最初は小さなスペースであっても、人員の拡大と共に隣接するスペースや同ビル内のスペースを借り増ししていく。オーナーとの信頼関係がしっかりと結べれば、借り増しする際の保証料も相談できるかもしれないし、相場よりもまとめて安く貸してもらえるかもしれない。何より、ローカルを基盤としたビジネスを行おうとする時、オーナーをはじめとする地域の人とのつながりは、強力なドライブや自分たちだけでは届かないようなチャンスを必ずと言っていいほど連れてくるのだ。

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*ENJOYWORKS会社概要

https://enjoyworks.jp/

 

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