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商店街に点在する空き家を次々に働く場所へ。

角舞子/ハロリノ編集部2018.5.12

鎌倉市の由比ガ浜大通り沿いに建ち並ぶ商店街に、ここ数年、面白い動きがある。

鎌倉駅から長谷の観音様や大仏様をつなぐこの通りは、観光のメインルートでありながら地元住民の主要な生活道路としても機能し、通りの両側には観光客向けの店舗と住民の暮らしを支える昔ながらの商店とが入り混じって存在しているのが特徴だ。

しかしその中には、オーナーの高齢化や商売の競争が激しくなったことなどを理由に、規模を縮小もしくは廃業するお店もある。
そんな商店街の空き店舗を次々と「オフィス」へリノベーションしているのが、この通りで不動産・建築・まちづくり事業を行うベンチャー企業エンジョイワークスだ。そのリノベーション事例のいくつかに注目しながら、空き店舗をオフィスにすることによる効果や影響を追う。

 

ご高齢のため営業規模を縮小した板金屋さんの元作業場をシェアオフィスにリノベーション。

 

築100年の板金屋作業場

見たこともないような太い梁。その両側には緑青も美しい手のこんだ銅の装飾が施されている。建物はざっと築100年。入り口の引き戸も木製の建具で、室内に入ればこれまた太い柱や梁に圧倒される。寺社並みと言ってもいいほど雰囲気のあるこの建物は、由比ガ浜通りで長年商売を営む板金屋だ。入り口に向かって右側の部分がその作業場だったが、2015年、職人でもあるオーナーがご高齢のためこの作業場を閉じる決断をした。

 

板金屋に先立ち、元魚屋だった店舗をリノベーションした複合施設「HOUSE YUIGAHAMA」

 

その前年に、ちょうどこの板金屋の向かい側にある元魚屋だった店舗を「HOUSE YUIGAHAMA」というカフェ、ライブラリー、ギャラリー、オフィスからなる複合施設にリノベーションし運営していたエンジョイワークスは、そのオフィス部分が自社スタッフの増員で次第に手狭になり、今までスペースをシェアしていた外部の連携業者の席をどう確保しようか困っていたタイミングでもあったので、この板金屋の作業場を借りることにした。

 

築100年の建物に敬意を払い、極力その姿を保ったまま、必要なデスクや棚のみ造作した。傷んでいた壁の一部はアンティークの壁紙でカバー。

 

スペースはさほど大きくはないが、5~7名分ほどの席が作れた。トイレや手洗いなどは無い造りだが、道路を渡ってHOUSE YUIGAHAMAを利用すれば問題ない。「家づくり発見」がコンセプトのHOUSE YUIGAHAMAのオフィス部分にはエンジョイワークスの建築設計部があるため、建築周りの仕事で協業できることを狙って、この元板金屋のシェアオフィスには家づくりや湘南のライフスタイルに関わる地元のクリエイター・フリーランスの方に、優先的に入居してもらうことにした。

例えば室内外に鉄製の造作を施すアイアン・アーティストや、庭師、中古住宅の診断をする住宅医、湘南のライフスタイルをメディアで発信しているエディターの方などだ。

この板金屋跡のシェアオフィスから、エンジョイワークスと入居者、あるいは入居者同士による仕事が創出されることを意図して、施設の名前は「YUIGAHAMA LABORATORY」とした。駅まで徒歩10分ほどの好立地ながら比較的安価な料金設定、エンジョイワークスとの協業への期待もいただけ、席は順調に埋まった。そしてここから実際に、エンジョイワークスで仲介する中古戸建の調査や、建築する家や商業施設へのアイアン造作の施工など多くの仕事が創出された。

 

板金屋の斜め向かいにあった定食屋「ふたばや」が店舗を半分に縮小することになり、空いたスペースを借り受けることに。

 

いつも食べていた定食屋の半分

このリノベーションからほどなく、2016年の春、板金屋の斜め向かい、HOUSE YUIGAHAMAの並びにあった「ふたばや」という定食屋のオーナーから、高齢のため定食屋を縮小して業態をお弁当だけの製造に切り替えたいので、定食屋の客席だったスペースを有効に使ってくれないかとの相談がエンジョイワークスに持ちかけられた。ここ数年に渡って、近所の魚屋や板金屋がエンジョイワークスによって若い人たちの集う新しい場に生まれ変わった事実を見てきたふたばやのオーナーだからこそ、信頼して相談してくれたのだ。ローカルでは、このような地続きの関係性が芋づる式に生まれやすいと言える。

 

お弁当をつくる調理場との間に壁を設置。
今まで定食を食べていたカウンターがスタッフのデスクに。正面の扉の奥には既存のトイレがある。

 

この場所は「ふたばやオフィス」とし、契約や打ち合わせにも使える柔軟なスペースとして活用することになった。

 

チーズ屋ファサード
チーズ屋室内
エンジョイワークスの本社の隣にあったスモークチーズのお店から、可愛らしい室内造作をそのまま引き継ぎ、賃貸スタッフのオフィスへ。

 

スモークチーズ屋をゆずり受け

続く2017年、エンジョイワークス本社の隣にあったスモークチーズのお店が、鎌倉市内に複数ある店舗を整理することになり、由比ガ浜大通り沿いのこの店舗は閉店することになった。そのスモークチーズ屋のオーナーとも懇意にしていたエンジョイワークスでは、今まで不動産営業部内にあった賃貸デスクを通りに面した場所に置くことでお客様との出会いのチャンスを増やそうと、この店舗をゆずり受けることにした。

この店舗はスモークチーズ屋のさらに以前からいろいろなテナントが使用してきたスペースで、アールの付いた木の格子窓のファサードは、他所ではあまり見かけないほど個性的で可愛らしい。幸運にも室内はチーズ屋の時代に非常に可愛らしく造作されており、そのまま引き継げることになった。広くはないが、このこぢんまり感と室内の味わいが、鎌倉や湘南で賃貸住宅を借りたいと思う客層の好みにフィットするのだ。

エンジョイワークスが初めて鎌倉の由比ガ浜大通りに本社を構えたのは2011年。元シルバーアクセサリーの店舗だった場所をリノベーションし、社長と取締役が2人のための小さなオフィスをつくってから6年の間に、事業の拡大と人員の増加に合わせて、この通り沿いの空き店舗や空き家を活用してカフェ、ゲストハウス、シェアオフィス、事務所の拡張、サテライトオフィスといった関連施設を増やしてきた。この会社の成長が、この通りのまちづくりや活性化に直結しているのだ。また社員たちがランチなどで地域のお店を利用することも、商店街への貢献になる。

全ての部署が1つのビルに収まっていた方が効率的だろうと考える人もいるだろう。しかし、まちの中に点在するオフィスは、この会社がその地域と一体になって事業に取り組んでいることの表れであり、地域からも信頼を得ている証でもある。だからこそ次々にオーナーからの相談が寄せられる。他の部署のメンバーと打ち合わせするにも、一度まちに出てその空気を吸い、すれ違う近所の人に挨拶をしながら移動することは社員にとっても大いに気分転換になるし、地域とのより良い関係づくりにもつながっているのだ。

ローカルに存在する古くからの商店街に、商店だけでなく、企業や、ビジネスを作り出す人々が入り込むことで、商店街には従来の観光客や地元客に加えて、新しいレイヤーの賑わいや事業までもが創出される。それは商店街全体にとって未来につながる恵みとなるのではないだろうか。

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