空き家や古い家から生まれたアップサイクル事例集。廃棄素材の可能性をクリエイティブの力で高めて
廃棄されていた資源をより価値の高いものに生まれ変わらせるアップサイクル。古い家や空き家のアップサイクルには、家そのものをリノベーションする取り組みだけでなく、古い家の取り壊しや改修の課程で生まれる廃材や建材の端切れ、不用品に着目したプロジェクトも全国で生まれています。この記事では、破棄される運命にあった素材や道具にデザインの力で新しい魅力を吹き込んだ取り組みを紹介します。
1. 空き家からレスキューした家具や建材をリデザイン
ものづくりの現場においてはリサイクルや廃材活用を見据えた製品開発が求められるなか、いま役目を終えようとしている廃材をアップサイクルする取り組みも多様さが増しています。
アップサイクルと聞くと、新しい取り組みのように思われますが、伝統工芸においても金継ぎ、裂き織り、琉球ガラスなど、古くから新しいものに蘇らせる取り組みが行われてきました。そこに宿るのは、日本人が大切にしてきた「美意識」の心。「もったいない」という思いから生まれる再利用の枠を超え、より美しく、付加価値をつけて蘇らせたいという思いが込められています。
2. 行き場を失った古材を”レスキュー”する「リビルディングセンタージャパン」
資源の循環モデルを語るうえでリビセンは欠かせません。リビセンこと「リビルディングセンタージャパン」は、長野県諏訪市を拠点に、家屋や工場の解体や片づけの現場に赴いて行き場を失った古材や古道具を「レスキュー」して再販するリサイクルショップとして事業を始めました。REBUILD NEW CULTUREという理念のもと、磨いてそのまま必要とする人へ受け継ぐこともあれば、空間デザインやオーダー家具への古材活用、ワークショップ開催などさまざまな活動を展開しています。
「自分が育ったおうちを壊すことの寂しさ申し訳なさ、少し形が合わないだけで農作物を廃棄しなければいけないやるせなさ。古材や農作物といったものだけでなく、そういった思いもレスキューできればいい」(サイトより転載)と、古材そのものの美しさや心地よい空間に触れながら、ものが紡いできた歴史や思いを伝えます。
3. 古い箪笥や木彫りの熊を発掘し、アートの力でアップサイクルする「家‘s」
富山県を拠点に日本の古いものをアップサイクルする事業を展開する「家‘s(イエス)」は、空き家からまだ使える箪笥や木彫りの熊などを発掘し、アートの力でアップサイクルして販売。「見過ごされていた価値を再構築し、世界を豊かにする」をビジョンに掲げ、空き家や不要となったものに光を当て、現代の暮らしにあった新たな価値を吹き込みます。
代表的なプロジェクト「Re-Bear」は、「木彫りの熊をもう一度、リビングへ」をコンセプトにアーティストと連携しながら木彫りの熊をアップサイクルするもの。昔、北海道のお土産として全国に広まった木彫りの熊に改めて焦点を当てることで、脈々と続く日本のカルチャーを次の世代へつなぎます。
2月12日までNICK WHITE(東京都港区)にて、国内初のポップアップイベント「P/OP(tansu×acrylic)」を開催中。詳しくはこちら。
4. 建築を身近に。建築の端材や廃材を使ったアクセサリー「K i N a K o」
思い出のつまった建物を失っても、その欠片を残すことで記憶や思いを受け継ぐことができる。そんな思いが込められたアクセサリーブランド。建築の端材や廃材を活用するだけでなく、日本の伝統技術である木造建築工法を用いるなどアップサイクルされたアイテムがより長く使い続けられるよう工夫を重ねています。
Instagramでは、アクセサリーの紹介やイベント情報に加え、建築業界で起きているゴミ問題や失われつつある建築資材や技術についても自らの足で情報を集めて発信。こうした取り組みは2021年、NHKの海外向けチャンネル「NHK WORLD-JAPAN」の番組「Zero Waste Life」で紹介されました。アーカイブ映像で端材や廃材探しからデザイン制作、納品までを知ることができます。
5. ‟ごみゼロ”上勝町で、廃材や古道具を建物に使ったブルワリー「RISE&WIN」
取り壊される空き家をアップサイクルする取り組みはよくありますが、徳島県勝浦郡上勝町にあるブルワリー「RISE&WIN」は廃材や古い道具などを用いて建物をつくってしまいました。上勝町といえば、2003年に自治体として日本で初めて、ゴミを出さない社会を目指す「ゼロ・ウェイスト宣言」を行ったことで世界から注目を集める町。ごみの収集は行わず、町営ごみステーションに住民自らまたは近所の人たちが協力してごみを運び、45種類に分別するなど再資源化に本気で取り組んでいます。
RISE&WINはこの活動に共感し、2015年に醸造所、レストラン、ショップ、宿泊施設を備えたブルワリーを開業。「持続可能な社会のあり方を表現」したという建物には上勝町の木材が用いられ、メインファサードの窓枠をはじめ建物には解体される建物で使われていた建具や家具、ごみステーションから拾ってきたものなどが使われています。また、クラフトビール製造においては特産品を余すことなく取り入れた製品開発のほか、昨年には醸造所から出た廃棄物を液肥にして麦を栽培し、それをビールの原料にすることも実現。循環型経済(サーキュラーエコノミー)に向けた活動を展開し続けます。
2020年に上勝町のシンボルとして開業した「上勝ゼロ・ウェイストセンター WHY」の企画・提案にも携わりました。
SDGs(持続可能な開発目標)への社会的関心が高まりから一層重要になってきている循環型経済。この取り組みは、誰かの“不用品”を“資源”と捉えることから始まります。そしてそれらの資源を循環させるためには、異なる業界や業種の人がつながり、連携していくことが大切です。ハロリノではさまざまな事業やプロジェクトの取り組みを通じ、異なる業界の人と出会える機会を提供しています。最新情報をSNS公式アカウントのほか、無料のハロリノ会員に向けたメルマガで発信中。ぜひご登録ください!