アップサイクルとは? リサイクルとの違いや企業の事例紹介も

アップサイクルは近年、SDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まりから、環境に配慮した個人や非営利組織だけでなく、継続的な仕組みづくりに挑むビジネスモデルも相次いで登場しています。アップサイクルの基本的な考え方やリサイクルとの違い、代表的な企業の事例を紹介します。(最終更新日:2023年2月5日)

アップサイクルとは

アップサイクルは、廃棄物や不要品を回収してデザインやアイデアを加えて価値を付加して再循環させる取り組みをいいます。この考え方は1990年代に海外で生まれました。日本では趣味の延長戦で楽しむハンドメイド品やDIY家具などで用いられていましたが、近年は規格外の食材や一度も着られないまま破棄される服などを有効活用し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現につながると期待されており、継続的な仕組みを築こうとするスタートアップも続々登場しています。

リサイクル、リメイクとの違い

リサイクルが一度使用されたものを資源に戻して再利用するのに対し、アップサイクルは製品の素材などをできるだけ生かして付加価値の高いものに生まれ変わらせることが特徴です。エネルギーを用いて原料に戻すリサイクルよりも環境負荷が低いという利点もあります。また、リメイクは「作り直す」という意味で、製品に手を加えて再利用したり、違う印象のものにしたりすることをいいます。付加価値をつけるアップサイクルと異なり、必ずしもバリューアップするわけではありません。

アップサイクルとダウンサイクル

ダウンサイクルは、アップサイクルと反対の意味を持ちます。アップサイクルは新しい原料から商品を作ったのと同等の品質であることに対し、ダウンサイクルは使用済みプラスチックを再加熱して強度や精度の低い再生プラスチック製品を作ることとされています。

アップサイクルに取り組む企業と事例

若者らの間で環境に配慮した消費行動が広がり、廃棄野菜が絵の具に、りんごがハンバーガーに、化粧品がクレヨンになるなどアップサイクルビジネスは多様さが増しています。ここでは、アップサイクルの取り組みとして注目されてきた企業の事例を紹介します。

ANA「アップサイクルプロジェクト」

画像出典 https://ana-upcycleproject.com
参考 https://www.ana.co.jp/ja/jp/brand/ana-future-promise/resource-recycling/2022-01-21-01/

「廃棄予定の作業着の生地を再利用できないか」「自分たちの想いの入った作業着をよみがえらせることはできないか」。そんな思いから、ANAの現役整備士が2019年に社員提案制度で提案。資源を有効活用してバッグとして蘇らせるプロジェクトが始まりました。約2年の調査、検討、そしてトートバッグ専門ブランドのROOTOTEとの出会いを経て、2021年にANAのクラウドファンディングサイト「WonderFLY」で試験販売して商品化へ。昨年、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子で事業化、引き続きSDGs活動に参加できるビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

パタゴニア「ネットプラス・コレクション」

画像出典 https://wornwear.patagonia.jp
参考 https://www.patagonia.jp

アウトドア企業のパタゴニア日本支社は2016年、多くの海洋生物に深刻な被害を与えているプラスチック製の漁網を回収して高機能なリサイクルナイロン素材「ネットプラス」を製造しているブレオ社とタッグを組み、帽子のつばにアップサイクル。現在では74点ものコレクションを展開し、344トンの漁網を衣類へと生まれ変わらせたといいます。また、着古されたTシャツを回収してリサイクルし、新たなTシャツをつくる“ティーサイクル”の取り組みも全国の直営店に拡大。昨秋には廃材を再利用して作られたリペアトラックをバイオディーゼル仕様にアップデートし、ウエアを修理して回るツアーを実施しました。

オイシックス「Upcycle by Oisix」

「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の定期配送サービスを運営するオイシックス・ラ・大地は2021年、これまで見栄えや食感の悪さなどから捨てられていた食材を、より環境負荷が低く、新たな価値を加えた自社オリジナル商品として開発、販売するフードロス解決型ブランド「Upcycle by Oisix」のサービスを開始。畑や加工現場で未活用だった食材約71トンをアップサイクルし、フードロスを削減しています(2023年1月12日現在)。2品から始まったオリジナル商品数は57品に。また、昨春には「フードレスキューセンター」を新設し、年間1,000トンのフードロス削減目標を加速させています。

今年のバレンタイン向け商品では、梅酒を漬ける時に使われる梅、検品で使用されなくなった割れピスタチオ、カットりんご工場で未活用だったりんごの皮、ワインを製造する工程でぶどうを絞った後に残る果皮・種(ワインパミス)をアップサイクルした3点が登場しました。

JR東日本「ステーション・ミュージアム」

高輪ゲートウェイ駅前特設イベント会場

JR東日本とJR東日本スタートアップ、福祉を起点に新たな文化創出を目指すスタートアップ・ヘラルボニーは協業し、駅や建設工事現場などを「ステーション・ミュージアム」として、知的障害のあるアーティストの作品を再利用可能な素材を活用して展示しました。展示後には作品をアップサイクルし、トートバッグとして販売することでアーティストの芸術活動を支援。従来の屋外広告で発生していた作品10点分(60 ㎡)の廃棄物を削減できたほか、トートバッグ5デザイン計80点は予約完売。作品提供料とバッグ売上により1作品あたり約12万円の報酬を福祉施設及び知的障害のあるアーティストに還元することができました。

アップサイクルされたアートトートバッグ

アップサイクルの活動に参加しよう

(1)アップサイクル食品を楽しむ

“もったいない野菜”を仕入れてプロの料理人が調理し提供するアップサイクルジャパンの新しい取り組み、”もったいない食堂”が神奈川・三浦海岸にオープン。余剰野菜のみならず、お魚やパンの「もったいない食材」も使用。近隣の有機農家や漁師さんから規格外の”もったいない食材”たちを仕入れてプロの料理人が美味しい料理へと生まれ変わらせ、フードロス削減に貢献します。

画像出典:PR TIMES

(2)イベントに参加する

事例を学び、交流できるアップサイクルイベント「Meet up」(大阪)

大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」では、アップサイクルやサステナブルについて関心がある企業や、廃棄する資材

食材を削減・有効活用したいと考える企業に向け、先行事例から学び、参加者同士で交流する中で自社での取り組みの可能性について考えることのできるイベント「Meet up」を3月7日(火)13:30~16:30に開催します。3月3日(金)17:00申込締切。詳しくはこちら

画像出典:PR TIMES

循環をテーマにした移動式ミュージアム「YOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUM」(横浜)

「YOKOHAMA CIRCULAR DESIGN MUSEUM」は、横浜発の循環経済や地産地消に関わるプロダクトやサービスを集めた移動式ミュージアム。2月2日〜3月31日に開催される今回のテーマは「Playful Circularity(循環を、あそぼう。)」。ペットボトルキャップを入れると横浜市内で作られた循環型グッズが手に入るガチャガチャ、廃材を活用したリサイクル三線、充電できるソーラーテーブル、コーヒー粕を絵の具にしたアップサイクルアートなど、楽しみながら循環を体験できる展示や仕掛けがたくさんあります。親子でぜひ。
詳しくはこちら

画像出典:PR TIMES

(3)アップサイクル素材でハンドメイドを楽しむ

ハンドメイドを通してエシカル消費を推進するCraftmade協会(⼤阪)は、シーグラスや炭などの捨てられるものをアップサイクルしたハンドメイド素材を開発。同協会定期開催のオンラインイベント・クラフトメイドマルシェの出展作家を対象に販売しています(今後は参加作家以外への販売も予定)。

クラフトメイドマルシェの次回開催は2月12日(日)14:00〜17:00。オンラインツールを使用してハンドメイド作品の購入やワークショップ体験、ハンドメイド作家との交流を楽しむことができます。詳しくはこちら

画像出典:PR TIMES

ここ数年、SDGsの取り組みの広がりとともに、資源の有効活用やゴミ削減への意識も高まっています。アップサイクルは持続可能なものづくりという観点だけでなく、デザインやアイデアによってさらなる価値を加えることができるとあって、アップサイクルされた商品の購入はもちろん、自分で挑戦する人も増えています。また、アップサイクルは不要になったヨットの帆をバッグに仕立てたり、残糸でニット製品を作ったりと、趣味やDIYの家具など趣味的な要素で使われることが多い言葉ですが、ハロリノで紹介しているような古民家をリノベーションして宿泊施設や飲食店、コワーキングなどの施設にするのもアップサイクルのかたちのひとつです。

ハロリノでは、これまで使われなくなってしまった蔵や古民家などの遊休不動産を次の世代へ受け継いでいくために、活用アイデアを地域のみなさんとともに考え、利活用に取り組んできました。現在も空き家や遊休地などを地域に開かれた場にアップサイクルしていくプロジェクトが全国で行われています。

私たちの取り組みに関心を持っていただける方は、ぜひ無料会員の登録をお願いします。会員になると、全国で行うまちづくりプロジェクトの取り組みやイベント、記事などの最新情報を得ることができるほか、全国のまちづくりをテーマにしたネットワークにつながる機会が増えます。

ハロー! RENOVATIONとは?もあわせてご覧ください!

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