2022.08.01
人と街と不動産にとって幸せなマッチングを考える|受講生インタビュー
「まちづくりの原点を深堀りする」をテーマに、自分の言葉で伝える力を高めていく「書く部」が発足しました! 記念すべき最初の記事は、次世代まちづくりスクール受講生同士のインタビュー企画。まちづくりへの想いを受講生視点で深掘りし、インタビュアーとインタビュイーが学び合います。 今回のお相手は、東京から熱海に移住し『ライフスタイルデザイナー』として活動する受講生の中屋香織さん。 不動産業でのキャリアもお持ちの中屋さんに、まちづくりの視点で暮らしに寄り添う現在の活動の背景や想いをうかがいました。
『ライフスタイルデザイナー』をご存知でしょうか?
中屋さんがご自身で生み出した職業で、今の生活に違和感があって、自分らしく暮らしたい人のためにライフスタイルの「妄想から実現まで」をトータルでサポートするという職種です。
自分の暮らしを見直したいと思ったとき、人に相談したり、関連する本を見たりといった手段が考えられますよね。
仕事であれば転職エージェント、家の中であればインテリア雑誌や片付け術の本、住むところなら不動産屋や移住相談窓口と、専門家も分野ごとにいます。でも暮らしは複合的なもので、「転職する」「家の中を模様替えする」「住む場所を変える」のそれぞれを試してみても、自分のほしい暮らしを得られるかどうかは分かりません。
では暮らし全体を相談したいとなったら、誰に相談したら良いのでしょうか。そんなときに頼れるのが、ライフスタイルデザイナーなのです。
ーその人の理想の暮らしを理解し、フィットする不動産を提案したい
中屋さんは不動産業界で十数年のキャリアをお持ちです。
中古マンションのリノベーション再販業ではバリバリ営業をしていて、お客様にどういった物件が受け入れられるかを徹底的に考え、高売上をたたき出していたそう。
その後、東京R不動産へ。毎日1,000件超えの物件から「これだ!」と思う物件をセレクトし続け、不動産の目利きにさらに磨きをかけていきました。これだけ不動産業やリノベーションの経験豊富な中屋さんが、なぜ今までにない職種を生み出してまで、自分らしい暮らしのサポートをすることにしたのでしょうか?
「不動産を買ったり、移住したりすれば幸せになれると思っているお客さんが結構多いなあとモヤモヤしていたんですよね。
仲介業をしている人の中には、なかなか決められないお客様のことを優柔不断と言う担当者もいました。
だけどそれは適切なアドバイスができていないからだと思うんです。不動産を手に入れることは目的ではなくて手段。その方が幸せに暮らすために必要なツールなんですよね。
なので、どんな暮らし方をしたいのかというのがなければ、なかなかそこに辿り着くことは出来ないんです。私自身も仲介担当をしていた時はまだお客様にどう寄り添ったらいいのかはわかっていませんでした。
ただ漠然ともっと一人ひとりに寄り添った関わり方をしたいなと思っていたんです」
ーライフスタイルデザインのサポートは徹底的なヒアリングから
「自分らしい暮らしがしたい。そう思っても、どんな暮らしかを具体的にイメージ出来ている人は少ない」と中屋さんはいいます。
ぼんやりとはイメージ出来ても、具体的にしようとしたとき、確かにどう考えていったら良いかが分からないもの。
中屋さんはどのように相談に乗っているのでしょうか。
「移住で良くあるのが『田舎でゆっくりしたい』という漠然としたイメージ。
どんな田舎で、どんな風にゆっくり出来たらあなたは幸せなのかっていうのを聞くと、こんな感じです、こんな感じです、っていうのが段々出てくるんですよね。それを細かく千切りしていく感じです。
人によって違うので、人それぞれヒアリングをして、足りないところを考えるきっかけをつくるという感じですね。
写真をぺたぺた貼るコラージュが合うひともいれば、文章で書いてもらったりするのが良い人もいるし、その人がやりやすいようにやってもらいます」
自分らしい暮らしをしたいと悩んでいる人それぞれに合った質問を投げかけたり、アウトプットの方法を取ることで、その人だけでは気付けなかった自分の思考の軸がはっきりします。そして、目指したい暮らしのイメージが明確化することができます。
ー新しい職業の認知不足は「移住相談窓口」になって解決
「何をやっている人かっていうのを、簡単に他人に伝えられないっていうのが一番困ったことですね。
サービスが何なのか人に伝わりにくい。なので、「ライフスタイルデザイナー」という自分の肩書はつけたんですけど、スタートは移住相談で始めたんですよね。
分かりやすいワードにしないと伝わらないので。人に紹介してもらう時に『移住のことに悩んでるんだったら、この人に相談してみるといいよ。』そういう口コミが出来たらいいなと思ってたんですよ。
移住相談をしていく中で『ライフスタイルを考えましょう』ということを、一番強いメッセージとして相談に来ていた方に伝えていたという感じですね。」
移住は自身の暮らしを見直したいのがきっかけになることも多いだろうし、移住をすれば生活環境が大きく変わります。
そんな移住相談者の人たちには、「まずライフスタイルから考えることが大切」という中屋さんのビジネスの核となる部分が響きやすく、最初のターゲットとして適切だったのではないでしょうか。
まちづくりという視点からは少し離れるが、中屋さんのお話からは新しいサービスを生み出す上で大切なことにも気付かされます。
徹底的に、まずは自分がやってみる主義。中屋さんご自身「自分らしい暮らしがしたい」と思ってから、とにかく悩んで悩んで悩みまくって、ライフスタイルそのものを描く重要性に辿りつきました。
それだけ自身が悩んだ末、現在自分らしい暮らしを実現出来ている中屋さんだからこそ、相談者に親身に寄り添えるし、相談したいと思う方が増えているに違いありません。
ー今後したいことは、移住サポーターの育成
「『移住サポーター』の育成をこれからやっていきたいと思っています。
移住相談の窓口は行政がやっているケースが多いので、数年で担当が変わってしまって、スキルが蓄積されないんですよ。
移住相談をやっている人は頑張ってやっています。相談窓口からは不動産屋につながることが多いんです。ただ、不動産屋に聞くと、不動産屋は『夢が膨らみ過ぎている移住希望者の力になれることはほとんどないのが現状』って言うんですよ。ということは、移住窓口は不動産屋につなぎたい、でも不動産屋はつながれても困る、力にはなれません、っていう状態なんですよね。ってことは、その間の人がいない。
私、そこ全部出来るなと思ったときに、そこを出来る人を増やしたいと思って。なので、色んなまちで、私と同じようなサポートが出来るようなひとが増えたらいいなと思っているんです」
自分らしい暮らしを求めて悩んでいる人にとって、ライフスタイルデザイナーは必ずや心強い味方になるでしょう。
インタビュー後には早速、静岡県東部地域の方たちと勉強会をされるとのこと。まちスクにも「ライフスタイルデザイナー育成講座」が出来ないかと密かに期待しています。
(編集後記)
事前打合せも含め、中屋さんとお話していると無性に人生相談までしたくなってしまう(他の参加者からも同じ意見が)。
私自身のことでいうと、まちづくりの領域で仕事をしてきたが、最近どう関わりたいのか、どう関わることが出来るのか悩んでいるので、余計そう感じたのかもしれません。今回のインタビュー企画では、既存のまちづくり領域では何が不足しているのか、また、それを埋めるためのアプローチ方法は様々ありそう、という可能性に気付かせていただきました。
執筆・グラフィックレコーディング:平山由里子
グラレコは下記ダウンロードいただけます。ぜひチェックくださいね。
~今回の企画でご協力いただいた受講生のご紹介~
■インタビュイー/中屋香織さん
首都圏での中古マンション買取再販と仲介業を経て、既存の不動産屋とは違う形で『人と街と不動産の幸せなマッチング』ができないものかと考え、4年前から熱海へ移住・活動。(活動内容:自分らしく暮らしたい人の妄想〜実現までをサポートするために、移住相談、空き家相談、改装提案などを実施)
自分の暮らす街で1年間活動をしてきた中で、空き家率は24%なのにマッチング先(物件)が少ない現実にぶつかり、空き家の物件化やオーナーへの活用提案スキルを身につける必要性を実感。
<アタミステイル>https://bit.ly/3s6BgKe
■インタビュアー/平山ゆりこさん
ライティングとグラレコを用いて伝えるスキルをまちスクでも発揮。ゼミや各所で登場する平山さんのグラレコは受講生同士の学びを深めるツールになっている。現在第4期治田ゼミを受講中。
■アドバイザー/江田加奈枝さん
新しい情報が行きかう東京での暮らしを経験し、地方の温かさや時間の流れ、生活を大切に過ごしている地元の良さを改めて感じる。沢山の人達にこの魅力を知ってもらえる機会を増やしたいと思い、
地元日光市の魅力発信サイト「モグローカル」を幼馴染と運営し「地域コーディネーター」として人と地域と繋ぐ活動中。
<モグローカル>https://www.mogu-local.com/
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