2024.07.03
【記事】あらいきよてる教授から学ぶ まちづくりビギナーが知りたい「まち選び」の始め方
「どこで、まちづくりを始めるか」
まちづくりをする上で「場所」は最も重要な要素の一つです。
まちづくりを始める際、地元を選ぶ人もいれば、目的に沿って場所を選ぶ人もいるでしょう。
一方で、なかなか愛着がわく地域がみつからず「決められない」と悩む人もいるのではないでしょうか。
そこで今回はまちづくりビギナーが知っておきたい「まち選び」の始め方について、あらいきよてる教授にインタビューして得られた学びをご紹介します。
この記事は現役まちスク生の永瀬がインタビュー・執筆を務めます。異業種からキャリアチェンジし、駆け出しのまちづくりプロデューサーとしての視点で、まちスクでの学びをお届けします。
あらいきよてる教授のプロフィール
まちづくりの場所選びLv.1 選択肢を狭める
まちづくりを始める前に、まずは「自分は本当に場所を自由に選べる状態なのかどうか」を確認しておきましょう。
あらい教授は、福島県に移住しゲストハウスを経営する20代オーナーの事例を紹介してくれました。
その方は移住前から繰り返し、夏は猪苗代湖(いなわしろこ)でSUP、冬は磐梯山でスノーボードといった、その地域でしかできないライフスタイルを楽しんでいたとのこと。
自分の叶えたいライフスタイルを軸に考えた結果、「SUPができる湖があること」や「スキー場があること」が、移住先選びの条件だったのかもしれません(※)。
一方で、そういった気候や立地に制限されることなくできるのであれば、日本全国から、自ら自由に選ぶことになります。
自分がやりたいことは、その場所でしかできないことなのか。それとも、どこでもできることなのか。
場所選びを始める前に、まずはこれについて考えてみるとよいかもしれません。
第3回あらいゼミフィールドワークにお邪魔し、インタビューを実施。写真は住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」のシェアスペース
まちづくりの場所選びLv.2 場所を決めない
ここからは、自分で自由に場所を選べる人を前提にして記事を進めていきます。
「まちづくりがしたい。でも、場所を選べない」のように、拠点となる立地選びに悩んでいるのであれば、あえて特定の場所をつくらずに活動することも選択肢の一つだと、あらい教授は話していました。
「え! それでまちづくりって言えるの...?」と思う人もいるかもしれません。
ですが、特定の場所を決めずにできることはさまざまあります。
場所を決めないまちとの関わり方には、次のようなことがあります。
(1)時間貸しの会議室を利用する
フィールドワークをする際、事前の集合場所やオリエンテーションの場として1時間借りてみる。実際、筆者があらい教授にインタビューした当日、赤坂の貸し会議室を1,100円で借り、フィールドワークが始まる前の事前講義の場所として使用していました。
(2)すでにある場に参画してみる
あらい教授がプロデュースした住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」には、住む以外にもさまざまな関わり方があるようです。
ある人は、トレーラーハウスの駐車場所として。
しぇあひるずの一角にトレーラーハウスを駐車させてもらう代わりに、月額駐車料金をしぇあひるずに払う。一方で、しぇあひるずに訪れる旅行客の宿泊場所としてトレーラーハウスを提供する。しぇあひるずの入居者も、誰でもトレーラーハウスを使うことができる。トレーラーハウスのオーナーは、しぇあひるずに駐車することでその場と人との関わりを楽しんでいるようです(※)。
ある人は、飲みの場として。
しぇあひるずには、月額利用料を払えばいつでもしぇあひるずを利用できる仕組みがあります。「一人で繁華街に飲みに行くよりも、みんながいるしぇあひるずに来て飲む方が楽しい」とのことで、利用会員になっている人がいるそうです(※)。
自分はなんのためにまちづくりをするのか。当初の目的に立ち戻り、本当に拠点を用意する必要があるのか、自分と改めて向き合ってみる。
もしかしたら、特定の場所を選ばなくても、自分のしたいまちづくりがすぐにでも始められるかもしれません。
住宅型複合施設「しぇあひるずヨコハマ」外観
まちづくりの場所選びLv.3 テーマを決めてまちを歩き、ツッコミを入れる。
「どこか特定のまちを選ぶ必要がある。でも、自由に選べるが故に悩んでしまう。」
そういった場面で有効なのが、「まちあるき」です。
インタビュー中、あらいゼミで学ぶ大学生のスクール生から、次のような質問がありました。
「地元の駅から目的地までは、いつも車を使っています。
歩くとなると2時間かかってしまいますが、それでも歩いた方がよいでしょうか?」
この質問に対してあらい教授は、やはり歩くことをおすすめしていました。
(ただ、2時間無理に歩く必要はなく「ここからここまでを歩こう」と出発地と目的地を予め設定しておくことよいとのこと。)
歩きと車とでは速度や目線が異なり、目にとまるものも変わってきます。
「あそこは昼間なのに雨戸が閉まっているから、空き家かな」
「ここの歩道はまっすぐに作られていないな」
「自分ならこのまちでどんなお店ができるだろうか」
など、歩きながらツッコミを入れたり、妄想を働かせて歩くとよいのだとか。
そのほかにもあらい教授では、
・その日のテーマを決めて歩く
・写真を撮りながら歩く
・古地図と比較しながら歩く
などのまちあるきを推奨していました。
特に、古地図と比較することは、その土地の歴史や道路の成り立ち、ビルの建ち方の面白さを感じながら歩くことができます。
何気なく歩いていたまちでも新しい発見があると、次第に愛着が沸いてくるかもしれませんね。
東京・赤坂でまちの歩き方をレクチャーするあらい教授
まずはまちに目を向けるより、自分に目を向けることから
あらいゼミのテーマは『考えるより楽しむ!自分の「好き」を事業に変え「住みたいまち」の半歩先をリアルに創る』。その名の通り、あらい教授から学べる「まちの選び方」は、自分の好きなことだったり、やりたいことだったりと、「自分」にフォーカスすることから始まる方法ばかりでした。
「どこでまちづくりをしようか」と迷っている人は、不動産情報サイトで物件を始めるよりも、まずは自分の内側に目を向けることから始めてみてはいかがでしょうか。
※あくまでまち選びの一要素です。当事者のみなさまは、実際には動機や目的、機会などを統合したうえで立地を決定されています。
インタビュアー・筆者プロフィール
永瀬もなみ|株式会社生きものと暮らす 代表
2023年12月、都市部でも生きものとともに暮らせる環境と仕組みをつくる会社として「株式会社生きものと暮らす」を創業。未経験で宅建を取得し、異業種からまちづくり・不動産の領域に転身。現在はペット可賃貸を増やすための事業を推進中。今後は生きものをテーマとする物件の賃貸・管理・プロデュース・まちづくりを計画中。次世代まちづくりスクールゼミ生。