関東学院大学・学生空き家再生プロジェクト
横須賀市追浜(おっぱま)で何やら面白いことをやっているらしいと、ある空き家を訪れました。駅前の大通りから、少しだけ中に入ってみると、すぐに車も通れないほどの細さの道になり、さらに家と家の隙間に階段が登場。この階段をよっこらせと登りきった先にあった平屋に、たくさんの人が慌ただしく動いているのを見つけまして、今日の目的地到着です。
駅からすぐ近くなんですが、この道程が何とも言えない別世界感をつくっています‘(単に日頃の運動不足のせいで息があがってボォーとなっただけかもしれませんが…。)。
平屋の内部で作業をしていたのは関東学院大学の学生さん達と先生、それから今日の講師である逗子の「相談家具屋」の皆さんです。ちょうど木の板を並べた前で丁寧に説明中。「今日はこの板をつかって掘りごたつのテーブルをつくっていきましょう。ビスケットジョイナーって知ってますか?…。」これは楽しそうです。
逗子の相談家具屋さんによるレクチャー。テーブル天板には様々な樹種を使っている。
実は関東学院大学は、2014年度から学生主体の空き家再生プロジェクトを積極的に進めています。2014年度の第一弾は「学生用シェアハウス」への再生、そして今回の第二弾では、この空き家プロジェクトを継続的に進めるための「基地づくり」が目的とのこと。・・・・2014年度(2015年4月第一弾完成)、2015年度(第二弾物件、改修工事)、2016年度(第二弾物件を使いながら改修工事を継続、お披露目会、七夕まつりや掘りごたつづくりのワークショップなどイベントを重ねている)自分たちの手で自分たちが使う場所をつくるってワクワクします。しかも掘りごたつって最高です。
一部増築した部分は、この時点では、まだ防水シートがあらわし。
ここから、空き家プロジェクトを主導されている人間共生学部共生デザイン学科准教授の兼子朋也先生に同行しながら次の目的地へ。歩きながら、改めてこのプロジェクトが始まったきっかけについてうかがったところ、ある学生からの発案からだったそう。まずは、その学生が中心となって追浜地区の空き家調査を行った結果、100軒を越す空き家リストが出来上がり、そこから再生の試みがスタートしたとのこと。
そもそも横須賀市は2013年に人口の「転出超過」が全国市町村でワーストを記録、都内までの通勤圏であるにも関わらず、空き家問題の先進地域になってしまっています。特に谷戸と呼ばれる平地の少ない土地のため、まさに今回見学させてもらった平屋のように階段でしかたどり着けない空き家も多いそうです。そういった日本全国が抱える課題解決に学生が立ち上がったのは、未来への光になるかもしれません。
第一弾の学生シャアハウスまでは軽く登山気分。
眺めの良いスペースにバルコニーを増設している。
続いて行ったのが、3軒長屋の奥にさらに3軒の平屋が並ぶ場所。中庭に入ってみると、見渡す限りのオールドテイストが、まるで時代劇のセットのようです。かなり老朽化が進んでいるところもありますが、これは劇的なビフォーアフターが期待できる物件ですね。空き家活用には良い題材になるということで、学生課題のテーマにさせてもらっているとのことです。大きな通りに面しているので、アトリエ付店舗の提案なども出てくるそうで、実現したら追浜のまちにも良い変化が起きるはずです。
3軒平屋(左)と3軒長屋(右)に囲まれた中庭スペースは時間が止まっているよう。
小物までいちいち古い。
最後に寄ったのが前々からお話を聞いていた「100万円ハウス」。この空き家も急な階段を登った先にあるため、持主さんが100万円で譲るので活用してほしいと兼子先生にご相談されている物件です。そういう経緯より今回「ハロー!RENOVATION」の物件1号として掲載させてもらいました!(詳細に関しては物件ページでご確認ください。)
おっぱま100万円ハウス外観。
今回、たくさんの空き家を見せてもらいましたが、どんなに古い家であっても、元の状態から考えを始められるのがリノベーションの分かりやすいところですよね。しかも、もしこの空き家が別の何かに再生されたらどうなるだろうと、目の前にある現物で考えることで、よりまちのリアルに気がつく機会にもなりそうです。
学生が自分たちで考え、自分たちでつくって、そして自分たちで使っていく。これ、何かのオリジナルレシピをつくる程度ならばいざ知らず、空き家の再生をこういったカタチで取り組むこと、正直、とても恵まれている学生さんたちだなぁと思います。
なかなか参加したくても、そんな機会はありません。ただ強いて言えば、手前味噌ですが「ハロー!RENOVATION」がそんな機会の提供元になれれば良いなと考えています。空き家について、みんなで考えて、再生させていく。時にはDIYワークショップが行われ施工にも参加できる、そういったプラットフォームを目指します。