プロジェクト始動、内成棚田の千年物語を終わらせない

こんにちは! ハロリノの牧です。
突然ですが、みなさんは大分県別府市にある「内成棚田」を知っていますか?

温泉で有名な大分県別府市の中心部から車で南西部に約20分走ると、山あいの秘境といっても過言ではない、心が洗われるような棚田の風景に魅せられます。鎌倉時代から1000年もの歴史を重ね、約1300枚もの水田があるといわれる内成棚田。今回は、農林水産省「日本の棚田百選」にも選ばれたこの棚田を守ろうと立ち上がったプロジェクトのお話です。

「ここは日本か?」と思うほどの絶景、存続の危機

初めてこの絶景を見たときの感動は、どんな言葉でも、どんな写真でも、なかなか伝えることが難しいので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

息をのむほど美しい、この内成棚田が、実はいま存続の危機に瀕しています。

内成エリアは9つの集落に分かれて80世帯のお宅があり、170人程度が住んでいますが、山間部の厳しい環境やインフラ上の問題、また都市が近いという理由から若者が都市部へ移ったり、家族で山を降りたりして、農業の担い手が不足しています。そのため農家の高齢化が進み、いまこの地で農業をしているのは70〜80代の方が多数。一番若い方で60代です。

棚田はアップダウンが激しく、1面あたりの田の面積が大きく取れないため、耕作を効率化することが厳しく、加えて、棚をつくっている石垣の整備などもあり、管理が大変な状況にあります。

「内成棚田千年物語プロジェクト」のリーダーである原千砂子さんは、「高齢化が進んでいて、あと10年もすれば誰も農業を行わなくなる。1000年も続いてきた棚田が、そんなに簡単になくなってしまっていいのだろうか」と語ります。

内成棚田について説明してくれる、「内成棚田千年物語」のプロジェクトリーダー、原千砂子さん

農業を続けている畑もある中で、耕作を行うことができず耕作放棄地になりススキが生えてしまっている畑も数多く見られます。また、生活排水の設備が整っておらず飲用ではない沢の水を引いて日々使用しています。

このような厳しいインフラ環境から、地域の方の中には棚田から移り住んだ別府市街地で生活しながら、夏場だけ農作業をしに、棚田に通っている方が多いそう。今回、原さんがこの棚田を守ろうと思ったきっかけも、別府市街地から棚田に通っている農家の後藤さんとの出会いからでした。

写真左から、原さん、農家の後藤さん

棚田への想い

後藤さんと原さんは住まいが近所で、原さんは後藤さんからお米をよく買っていたそうです。お米を買いながらお話する中で、原さんはこの棚田のことを知り、「内成棚田を守るプロジェクトを行おう!」と思うようになっていきました。そして立ち上げたのが「内成棚田千年物語プロジェクト」。もちろん、後藤さんもプロジェクトメンバーの一人です。棚田にある後藤さんのお宅で、棚田で収穫した米や、ジャム、工芸品などを売ってプロジェクトの活動資金にしています。

原さんは、後藤さんの住まいがある太郎丸エリアをベースに、プロジェクトを展開しています。後藤さん宅の裏には2軒の空き家があります。
今回、エンジョイワークスが原さんと知り会ったのは「この空き家を利活用したい」と、「空き家再生プロデューサー育成講座」に参加されたのがきっかけでした。

利活用予定の空き家

太郎丸エリアは内成棚田の一番奥にあって自然が豊かで、景色がよく、空気がおいしいと感じる場所です。きれいな空気を求めてこの地に越してくる人がいるぐらいです。この太郎丸エリアでせっせと農作業をされていたシズエさん。80代ですが元気に日々農業をされています。急にうかがった私たちとも楽しげにお話されていたのが印象的で、お正月はお子さんが帰ってくるのでとても楽しみだそうです。

写真左がシズエさん

地域の農家さんもこの状況をどうにかしたいと思っていますが、再生作業はとても重労働で、それぞれ自分の畑の維持管理があり、ほかの田畑まで手が回らないのが実情。耕作放棄地を再生する原さんの取り組みにみなさんは感謝していて、喜んで使っていない畑を提供してくれています。

すでに鋭意活動中の原さん

原さんは定期的にイベントを開催したり、周囲の方に声をかけて協力してもらったりしながら棚田の再生活動や空き家の改修、棚田の体験プログラムの構想を練っています。

昨年はプロジェクトに関わってくれる方々と3枚の田んぼを復活させました。伸び放題の草を刈って畦を補修して、土を起こして。すべて手作業で行い無事に稲の収穫までを行いました。棚田は良くも悪くも1枚あたりが狭いので、丁寧に1枚1枚復活させていくことがとても重要です。

「次はあそこの畑の草を刈って耕して桔梗を育てよう!」と、次々と田を復活させている原さん。その非常にポジティブで素晴らしい行動力、実行力は、バイオマストイレづくりにも発揮されています。

内成には下水がありません。なので、トイレはいわゆるボットン便所。ただ、棚田の水を汚すわけにはいかないため、そこで「ナルナル菌」という菌と籾殻を混ぜることで、汚物を発酵させて浄化させるということを調べて、見事にバイオマストイレをつくり上げました。

加えて、プロジェクトの参加者とみんなで協力しながらつくった棚田ブランコ。とてもかわいいブランコで、棚田の中に飛び込んでいけるような緊張感と楽しさがあります。プロジェクトの資金集めも兼ねて30分1000円。みんなで楽しく遊べます。

ここでどんなことができるのか

原さんはこの棚田の価値を誰よりも感じています。石垣を組んでできている棚田。その石垣を組む技術の伝承や、夏にはホタルも飛ぶほど豊かな自然環境と景観のよさ、棚田を潤す神秘的な水源など、魅力がとてもたくさんあります。

この棚田を守るため、私たちはどんなことができるのでしょうか。消費される観光ではなく、多くの方がこの棚田の再生に尽力し、景観を守る努力を一緒にしながら棚田に関わってもらう循環をどうつくれるか。まさに参加型で多くの方からのアイディアや協力が今後重要になってくるでしょう。

棚田の未来を見据えながら、この美しい棚田の存続に向けて日々活動を行なっている原さんを私たちは全力でサポートしていきます!

今日はここまでです。ぜひ今後の進展をお楽しみに!

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