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対談:北海道Uターン起業家と公務員、Iターン経験者が目指す地方の未来

ハロリノ編集部

官民連携で取り組むニセコのまちづくりにかかわる人たちを対談形式で紹介する本連載。今回は、UターンやIターンをして北海道で働くことを選んだ「株式会社ニセコまち」の3名のメンバーの対談をお届けします。
何を求めて地方移住をしたのか、暮らしの魅力と課題、仕事のやりがいなどをお聞きしました。

北海道移住の理由は三者三様

田中健人さん(以下、田中):私は札幌出身なので、いつか北海道のために何かしたいと考えていました。東京でのウェブマーケティングの経験を生かして札幌へUターンして株式会社ノースアンビシャスという会社を立ち上げ、ITの力を使って北海道の魅力を広めることを目標に事業を展開していました。

田中健人さん。東京でベンチャー企業の創業メンバーとしてWEBや動画等を活用した採用・マーケティング支援などに従事後、2016年に札幌へUターンし、株式会社ノースアンビシャスを設立。北海道第一主義を掲げ、道内の企業や自治体、地域金融機関らを中心に情報発信の支援や事業開発などを行う傍ら、2020年にはニセコ町の官民連携の株式会社ニセコまちの取締役に就任。

宮坂侑樹さん(以下、宮坂):私は学生時代からスノーボードをするためにニセコには頻繁に通っていたんです。東京の大学を卒業後、地元である北海道へUターンして民間企業に就職しましたが、ニセコ町に移住したくて、転職してニセコ町役場へ入りました。

宮坂侑樹さん。北海道出身。2010年日本大学卒業後、金融機関に従事。2014年スノーボードが好きすぎてニセコ町役場に転職。2016年ニセコ町役場から内閣府地方創生推進事務局に研修派遣。2018年ニセコ町役場に帰任、環境モデル都市推進係として第2次環境モデル都市アクションプランを担当。2020年株式会社ニセコまちに研修派遣。

佐々木綾香さん(以下、佐々木):私は学生のときから国際協力について学んでいて、卒業後は民間のコンサルティング会社で海外開発支援の仕事に携わっていました。その後、北海道北部にある天塩町の地域おこし協力隊として地方と海外をつなぐ取り組みなどをしていたのですが、後志総合振興局で募集していた国内留学プログラムに参加するために今年1月にニセコに移住しました。

佐々木綾香さん。群馬県出身。学生時代に国際関係・国際協力を学び、大学院修了後は海外開発コンサルティングの会社で日本の政府開発援助事業に従事。アフリカの国々の平和構築・農業研究開発プロジェクトに携わり、アフリカ現地での業務も経験。その後は道北地域でまちおこしの活動に約3年携わり、2021年4月より株式会社ニセコまちの配属でニセコ町地域おこし協力隊として活動を開始。

宮坂:そうそう、佐々木さんは本当はそのプログラムのためにニセコに移住してきたんですよね。

佐々木:そうなんです。でも移住してきたあとにそのプログラムがコロナの影響で中止になってしまって。プログラムが終了したら、ニセコに留まってまちづくりに関わるような取り組みができたらと思っていたのですが、ちょうどそのタイミングで株式会社ニセコまちの配属で地域おこし協力隊の募集が出されていて。会社の方にお話を聞いて、すぐに応募を決めました。

田中:入ってみてどうでしたか?

佐々木:ニセコまちのメンバーは、それぞれまったく異なるスキルや経験を持っていますよね。でもメンバーの理念は一致しているように感じられるところがおもしろいです。

田中:確かに、だからこそ同じゴールを目指しつつ、さまざまなアプローチができる。私自身にもいえることですが、「なぜ自分は今ここに立っているのか」という理由が大事になってきますよね。「このプロジェクトを通して自分は何を実現させたいか」という一人ひとりの理由の積み重ねで組織が強くなるのではないかと思っています。

宮坂:それでいうと、私は町役場から株式会社ニセコまちへの出向を聞いたとき、「やってやるぞ」という気持ちで、絶対にこの事業を実現したいと思いました。また、前例のない事業なので、プレッシャーもありますが自分にとっても挑戦だという意識があります。

北海道には魅力と、もっと住みやすくなるポテンシャルがある

佐々木:北海道での生活は4年目ですが、こんなに表情豊かな地域はなかなかないと思います。これだけ広い面積を持つ都道府県は日本中どこにもないし、行く先々で違う景色が見られます。3年間住んでいた天塩町は漁業が盛んで漁師さんが多く、海産物をお裾分けしてもらうこともあったのですが、ニセコ町は農業が盛んで農産物が豊富でおいしいんです。何より日々刻々と変化する自然の景色を見ていると、それだけで毎日楽しく暮らせます。

田中:北海道には179も市町村がありますもんね。このプロジェクトで得たものをニセコに留めず一つでも二つでも北海道に広げていくことが私のミッションだと感じています。北海道の社会課題を解決する糸口になればいいなというのが願いです。

宮坂:ニセコ町は都心と比べて人口が少ない分、精神的な人との距離感が近いところがあり気に入っています。また、「小さな世界都市」を目指して自由に意見を言える環境づくりに励んできましたこともあり、決して閉鎖的ではありません。毎年一定割合の移住者がいることも寄与していると思います。そういった魅力を土台に、利便性などの面でも生活の質の高さをつくることで、さらに住みやすいまちを実現したいと思っています。

人口減少を前提とした地方創生のあり方

宮坂:ニセコは魅力の多い町ですが、冬の寒さや、車がないと不便な生活環境などが移住のハードルを高くしていると感じます。ドイツのまちづくりを視察したことがあるのですが、冬でも結露が少ない高断熱高気密の住宅や、徒歩圏内で必要な物が手に入る便利さなど、生活の質の高さに驚きました。

田中:私もドイツのフライブルクに視察に行ったときは衝撃を受けました。人口約23万人のまちなのに、中心地には渋谷のスクランブル交差点並みに人が集まっていたんです。日本だったらシャッター商店街になってもおかしくないのに、平日も毎日賑わっている。正直、こういう所だったら住んでみたいなと思いました。

宮坂:日本における少子高齢化による人口減少は、もはや食い止めようがないものですよね。だからこそ、このまちに住んでいる人や、ここに魅力を感じて移住してくる人にとってできるだけ住みやすい環境を整えたい。ニセコの良さはそのままに、より魅力を重ねていくようなイメージで、未来にも残るまちをつくっていきたいです。

田中:同感です。私も起業当初は地域の魅力を伝えたり、観光客を増やしたりすることを想像しながら「上場企業をつくるぞ」と意気込んでいましたが、それよりも事業を通してもっと本質的な課題解決に向き合う必要があると気づきました。
よくビジネスの場面でも地方創生という言葉が使われますが、ただでさえ本当の意味でまちをつくることは想像以上に大変です。例えば観光客が増えたら経済的には良いかもしれないけど、地域住民の暮らしが良くなるとは限らないですよね。

佐々木:観光客が増えることで生じる環境破壊や交通渋滞など、オーバーツーリズムは問題になっていますね。観光客にとって魅力的なまちになっているのに、住民視点からはまちの魅力が下がってしまうという……。

田中:そうなんです。そういう意味でも、まちづくりには正解がない。一人のカリスマがなんとかできるようなものではなくて、そもそも難しいんですよね。そこに人口減少という新たな課題が追加されているので、よりハードな挑戦だと思います。ニセコ町の事業も、地域の人と一緒にチームでやらないと、きっと形になりません。ただ、難しい取り組みではあるのですが胸を張ってこの事業は社会のためになると思っています。

佐々木: この事業は前例のない取り組みですし、私もこのチームに入る前は不安に感じる部分もありました。いろいろな立場の人の意見を聞くことになるだろうし、事業に携わる中で悩むこともたくさんあるのかな、と。でも、もしここに関わったら、まだ誰も見たことがない景色を見られるんじゃないかとワクワクする気持ちの方が強かったですね。
あと、ニセコまちのメンバーになるにあたって、この事業が掲げているSDGsという言葉をどこまで自分ごととして捉えられているか見つめ直しました。流行りもののようにもなってしまっているSDGsについて、より現実味をもって意識することや日々の行動を変えること、具体的に自分の生活とどう繋がるか考えてみることが重要だと感じます。地域の人にとってこの事業がそのきっかけになったらいいな、という思いも仕事のモチベーションになっています。

宮坂:この事業で目指すまちづくりが未来の世代に対して最適解になるかは分からないけど未来を想って、今からできることをやっていきたいです。住む人々が豊かな生活を送ることができる。その中で、人が生きるよりも長い時間軸で、建物が資産としての価値を保ちながら、使い続けられる。そんな地域になっていってほしいと思います。

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