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対談:住民とともに叶えるまちづくり。ニセコ町SDGs未来都市

ハロリノ編集部

今、日本各地の自治体が少子高齢化や経済の衰退などの課題に直面しています。この状況に向き合い住民の暮らしを守るため、北海道ニセコ町で2020年7月、株式会社ニセコまちが設立されました。まちの名前を掲げるこの会社の株主は、ニセコ町と地域事業者と一般社団法人クラブヴォーバン。まさに官民連携の組織です。

今回、株式会社ニセコまちの取り組みについて3名のプロジェクトメンバーにインタビューを行いました。お答えいただいたのは、ドイツのエコ先進国としての取り組みを調査し、それを活かした事業を行うクラブヴォーバンの村上敦さん、「無印良品の家」や「HOUSE VISION」などの設計を手掛け生活者に寄り添って新しい暮らしを提案する土谷貞雄さん、そして参加型まちづくりを行うエンジョイワークスのプロデューサーとして、住民参加型の空き家再生の仕組みづくりに取り組んできた牧寛之です。

未来の都市の在り方を実践する株式会社ニセコまち

(一般社団法人クラブヴォーバン代表 村上敦さん。ジャーナリスト・コンサルタント。ドイツに長年在住し、ドイツやEUのエネルギー・建築・交通・まちづくり分野で情報発信を行っている。著書に『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか?』『キロワットアワーイズマネー』など多数。)

――株式会社ニセコまちではどんな事業を行っているのでしょうか。

村上敦さん(以下、村上):株式会社ニセコまちはニセコのまちづくりに関するさまざまな事業に取り組んでいます。そのひとつ「NISEKO生活・モデル地区」事業は、ニセコ町の市街地に新たに街区、つまりまちを構築する事業。しかし、この街区開発はたんに土地を整備して住宅を供給するだけではなく、高齢化と核家族化が進行し、住宅と居住者がミスマッチを起こしている状況を改善するためのバッファーであると定義されています。大きな敷地の戸建て住宅におばあちゃんが一人で暮らしているというケースを、どのように考え、どのような選択肢を提供できるのか、というのがポイントです。日本では今後、増加・拡大・成長を前提としたまちづくりは必要ないのですから。もちろん二酸化炭素排出量の大幅な削減など環境への配慮、モデル地区における生活ルール、暮らし方やコミュニティといったソフト面についても、ニセコの変遷を見守ってきた地域住民と、対話をしながら一緒に考えています。

(詳しい事業内容についてはこちらをぜひご覧ください。「北の大地の新プロジェクト「ニセコSDGs街区」が目指すもの」)

(ニセコの公園で遊ぶ子どもたち)

――村上さんは岐阜県飛騨高山のご出身ですよね。なぜニセコでこのような事業を始めたのでしょうか。

村上:私は大学で土木工学を学んだ後、ゼネコンに入って東京湾の埋め立て工事に従事していました。でも船に乗り海上で人工島をつくる日々のなか、ある疑問が大きくなっていったんです。土木工学者としてコンクリートや構造物の寿命、耐久性を考えたとき、100年後、自分の子ども世代の暮らしはどうなるのかと。

これをきっかけに25年前、エコの先進性が評価されていたドイツに移り、それ以来、日本とドイツを行き来する生活を続けてきました。ドイツの都市計画や交通計画、エネルギー分野などでの取り組みを調査し、日本に紹介する活動を行っています。日本では、人口減少や経済的な課題などを抱えながら何か持続可能な取り組みをしたいという思いを持っている自治体と一緒に仕事をするようになり、ニセコ町での事業もその一つとして3年前から始めました。

(都市生活研究所所長 土屋貞夫さん。ムジネット株式会社(現MUJIHOUSE)取締役をへて2008年にコンサルタントして独立。現代の暮らしに関する知恵を集め未来の暮らしのありかたを提案し続けている。著書に「無印良品・みんなで考える住まいのかたち」「あったらいいな、こんな暮らし」など。)

――「NISEKO生活・モデル地区」事業での街区づくりが、今後どのように日本全体の暮らしに影響を与えていくと思われますか。

土谷貞雄さん(以下、土谷):街区づくりは事業のゴールではありません。最終的には、この街区をモデルとして町全体をつくっていくことを目指しています。街中で空き家が生じたらその活用をどうするのか、老朽化した建物が売りに出されようとするケースがあれば、その建物や敷地単体で思考するのではなく、町にとってどう活用するのが好ましいのか、そこまで踏み込んで事業を行ってゆこうと。それは社会をどうつくっていくか考えることでもあります。ニセコ町での試行や経験、検証は今後、大きな都市でも、他の地域にも適用する未来の都市のあり方を模索するための第一歩になると思っています。

――土谷さんは建築家であると同時に「暮らし研究家」としても活躍されています。地域の特色を活かしたまちづくりを進めるうえで、経験をどのような場面で生かされますか。

土谷:これまで「暮らし研究家」として世界各地の暮らし方を食べ物や生活様式、価値観などから多面的に調査し、国内外で調査や商品開発のサポートを行ってきました。このキャリアが始まったのは、2004年に無印良品が提供する注文住宅「無印良品の家」の開発にプロジェクト・マネージャーとして携わったときのこと。住宅をつくる過程で「人々はどういう暮らしを求めているのか、どういう社会をつくるのか」と考えました。そしてその答えを求めるうえで、言葉にできないような、人々の無意識の行動を読みとることの重要性に気付いたのです。こうした知見を街区の設計プロセスにも活かしていけたらと思います。

「縮小社会の経済」。前例も正解も無いからみんなで考える

――街区づくりは、プロジェクト全体のうち、今どれくらい進んでいるのでしょうか。

村上:スタートしてからすでに3年が経過し、やっと着工の段階に入ったところです。これはプロジェクト全体として10年はかかると見込んでいる計画のうち、第1ステージです。

――これだけの時間をかけて取り組んでいるのはなぜでしょうか。

土谷:まちづくりに興味のある一部の人だけではなく、町に住むみんなで一緒に考えていくというプロセスが大事だからです。高齢化や少子化がさらに進むと、人口減少は経済力の低下につながります。同時に自治体の税収入も減少するので、今まで通りの住民サービスやインフラなどのメンテナンスコストの捻出ができなくなります。そうした人口減少社会の中で、それでも幸福感をもって縮小していく方法を考えなければなりません。そこには新たな経済圏を前提に、住民が一緒に参加して自主自立する社会システムが必要になります。

村上:ただ、私たちはそうした縮小することを前提とした社会において、どういう経済なら人々が幸せに暮らすことができるのか、まだ答えが分かっていないんです。だからこそ、考えるプロセスをつくりたいと思っています。

土谷:そこで必要になってくるのが対話です。対話は、単に会話をするのとは違い、理解していくこと。地域のみなさんはまちが成長しないということを頭では分かっていても、受け止めることは難しいですよね。私たちも、それぞれの専門の立場を超えて地域の皆さんを理解しようとしないといけません。みんなが自分ごととして、リアリティをもって参画してもらうことが大事だと思っています。そこで、参加型でまちづくりを行ってきたエンジョイワークスさんにもこのプロジェクトに入ってもらいました。

小さな声まで拾いたい。 本当の住民参加型まちづくり

(株式会社エンジョイワークス空き家再生プロデューサー 牧寛之。長野県農村工業研究所にて農産物の残留農薬の検査に3年間従事したのち、東京の映像制作会社へ転職。テレビCMの制作を経験。エンジョイワークス入社後は日本各地のまちづくりプロジェクトに携わる。)

――牧さんはこれまで地域住民を巻き込みながら空き家再生に取り組んできましたが、ニセコではどういったことをされていますか。

牧寛之(以下、牧):「ニセコ 明日をつくる教室」というウェブサイトを立ち上げ、地域の声をインタビュー記事で紹介しています。これまで担当してきたプロジェクトではイベントを度々実施し、そこで出会った方々と関係性を築いてきました。でもイベントを開催できないコロナ禍で地域の方とのコミュニケーションの機会をつくることは簡単ではありません。そこでいまは1人ひとり紹介で繋いでもらいながら、インタビューをしています。自分自身、日々学びながら取り組んでいます。

――インタビューの対象はどういった方ですか。

牧:このサイトには、「普通にニセコに暮らす人」のインタビューを載せたいと思っています。プロジェクトの住民説明会に参加したり、まちづくりに関する何か目立った活動をしたりする人とは限らず、どんな人にも話を深く聞いていくと必ずその人のオリジナリティがあるからです。

(「明日をつくる教室」ウェブサイト)

土谷:住民説明会などにすでに来ている人や積極的に声を挙げる人のなかには、将来、街区に住まない人も多いです。そうではなく、実際に街区に住みたいと思っている人、住んでほしい人の声こそ、もっと聞きたい。インタビューなどをさせていただく中でそういった方々のお話を聞く機会も増えてきました。これは記事で紹介するというより、私たちの気づきの機会を増やすこと、そして何より、地域のネットワークづくりにつながっていくと信じています。

村上:明日をつくる教室の目的は、内外に向けてニセコの取り組みや日常の魅力を発信するとともに、地域にネットワークができて、地域の方からの相談ごとが飛び交うような場になると最高ですね。

プロジェクトのこれから

――今後の展開についてどのように考えていますか。

村上:自分たちの次の世代の未来について考えていきたいですね。今すでに低いと言われている給料が今後さらに下がっていくとしたら、今の若い人は人生をどういうふうに考えていくだろうか。代替案を提示する努力を続けないといけないと思っています。本当に提示できるかどうかは分かりません。ここまで急速に人口が減っているモデルは世界の歴史にもありません。でも可能性は感じているし、ニセコ町からチャンスをいただいたので、他の自治体にも横展開できるような議論ができたらと思っています。

土谷:これまでの増加や成長を前提とした社会システムは変化せざるを得ない状況です。金融、経済、医療や福祉などあらゆる分野で縮退することを前提とした社会に置き換えてゆかなければなりません。それは簡単なことではないですし、答えもまだありません。それでも、何もしないわけにはゆかない。その前提に賛同してくださる皆さんとともに、そこを考えてゆくプラットフォームになれるように私たちは今動いています。

――ありがとうございました!

ニセコ町で行われている議論などは、誰でも参加できるものもあります。
興味がある方は、ぜひお気軽にご参加ください。

▼イベント案内
・第196回まちづくり町民講座 「NISEKO生活・モデル地区の実現に向けて-まちづくり会社の活動報告-」
日時/3月15日(月)18:00〜20:00
<イベント詳細ページ>
https://www.niseko-asuwotsukuru.com/event/event-202/
※オフラインのイベントですが、後日ニセコ町HPで動画配信を予定しています。

・クラウドファンディングを使った 住民参加型のまちづくりとは?
日時/2021年3月19日(土) 18:00 ~ 20:00
<イベント詳細ページ>
https://www.facebook.com/events/873133343542504/
※オンラインとオフライン、お好きな参加方法をお選びいただけます。
<ニセコ町HP>
https://www.town.niseko.lg.jp/

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