価値ある体験とは何か? ビジネスとしてのまちづくりを考える。福田和則研究室レポート(4)
こんにちは!次世代まちづくりスクール「福田和則 研究室」TA(ティーチングアシスタント)の矢吹です。1月16日に開催された第4回「福田和則 研究室」ゼミの模様をレポートします。
南国の離島が舞台! スペシャルな体験の拠点をつくりたい
じつは今回、思い切ってゼミ生からのプロジェクト発表に手を挙げました。
「プロジェクト」といっても、まだ私の頭の中にしかない計画、いや、妄想段階のものではあるので、手を挙げるのには多少の勇気が必要でした。
しかし、過去3回の福田ゼミを通して感じたこのゼミの価値は、なんといっても福田教授はじめエンジョイワークスのプロデューサーの皆さんや世代も立場も異なる参加者の皆さんからのフィードバックだと感じていたので、ぜひこの渦の中に自分の考えているアイデアを投下してみたいと思ったのです。
私のプロジェクトの舞台となるのは、現在2拠点居住している私の拠点のひとつ、奄美大島の、さらに離島である加計呂麻島にある古民家です。
加計呂麻島はリアス式の複雑な海岸線と、緑豊かな山々といった力強い自然に恵まれた人口1100人ほどの島。多くの地方地域同様、少子高齢化による人口減少が急速に進んでいますが、今でも伝統芸能が受け継がれ、秋になれば集落ごとに豊年祭が行われています。また、第二次世界大戦中には軍港・特攻基地として重要な役割を担った歴史があり、島内には今も戦跡が残ります。自然が生み出す生命力と、悲しい過去という両方の側面から「命」を感じる島です。
私がそんな加計呂麻島で計画しているのは「“体験を通して奄美を学ぶ”ローカルツーリズムを実践する宿」。
島で仲間になったエコツアーガイドや地元の猟師さん、農家さんなどを巻き込んで、ゲストが求める体験を完全カスタマイズ、1日1組限定で提供できる場所をつくりたいと考えています。
そして、今回のゼミでは皆さんに「離島に求めるもの」「それなりの対価を払ってでも得たい体験」、そして今想定している場所はあくまで想定にすぎないため、「空き家探しとオーナー説得のアイデア」についておうかがいしました。
自分自身がこの島に魅入られている分、もはや俯瞰で見ることが難しくなっているという自覚もあったので、改めて「人が価値を感じる体験」とは何か? をこの場所で皆さんと考えてみたいと思ったのです。
参加者の皆さんからは「空港からの移動までを含めた体験を提供してみたらどうか」「みんなでワイワイ過ごすという体験も価値」といったご意見、エンジョイワークスのプロデューサーの皆さんからは「体験を宿泊の中に詰め込むのではなく“1泊2日しないと得られない体験”をつくる必要性」についてや、「まずはオンラインでプロジェクトを実施し、それに必要な場所を後から探す」という具体的かつ実践的なアイデアをいただきました。
特に刺さったのは、福田教授からの「矢吹さんが実際に何度も通って移住までした島の魅力は何か?」という質問。いろんな思いがありすぎて逆に一言で返せなかった自分にも驚いたりして……。
こういった原点になる部分を今一度紐解くことに価値がありそうだなと気づかされました。
「まちづくりビジネス」が提供する価値とは?
続いてはエンジョイワークスのプロデューサーのお仕事を紹介する「プロデューサーNOW」。今回は、この次世代まちづくりスクールの運営も担当されている世良プロデューサーからの発表です。
複数ある担当案件の中から、世良プロデューサーが議論の題材に選んだのは葉山町一色にある邸宅を活用したシェアハウスのプロジェクト。
オーナーの親族でもあり、舞台となる建物を設計された小谷部育子さんが啓蒙されていた、ゆるやかに人と繋がる「コレクティブハウジング」という住まい方の考えを承継する「ものづくり女子のためのシェアハウス」を参加型イベントを通してつくりあげていく予定とのことです。
実際に小谷部さんが使われていた建築関係の書籍なども残されていたり、共有部として生かせそうなスペースが点在していたりといった、ワクワクする要素がふんだんに詰まったこの物件をシェアハウスに生まれ変わらせるため、世良プロデューサーは当初、この物件でのリアルイベントの開催を計画。参加者と一緒にこの場所のあり方を考え、設えを考え、そしてそれをみんなでDIYしてつくりあげていく予定でした。しかし、1回目のイベント開催目前で発令された緊急事態宣言……。
少なくとも1月に予定されているイベントはオンラインで開催することに変更せざるを得なくなったといいます。
そんな世良プロデューサーからゼミ生に出されたお題は二つ。
(1)参加型まちづくりをどのようにビジネスにしていくか?
(2)緊急事態宣言も発令されるコロナ禍においてどのように集客していくのか?
今回のゼミの中では、一つ目の「参加型まちづくりのビジネス」について議論をすることになりました。
葉山一色のプロジェクトに当てはめて考えた場合、確かにオーナーさん単独でシェアハウスをつくり、入居者を募集することも可能です。
そんな中でエンジョイワークスのような企業が関わり「参加型まちづくり」をすることで提供できる価値とは一体何なのでしょうか?
ゼミ生からは「専門家としての案内人、翻訳家、ネットワーキングといった価値」「(今回のケースにおいては)入居者が制作したものを販売するEコマースの運営とコミュニティーの活性化」「企業に社員研修の場所としてイベントを販売する」など、物件オーナーに限らず、入居者やイベント参加者からフィーを取るビジネスモデルなど、多角的な視点からのアイデアが出されましたが、福田教授いわく、エンジョイワークスでは現状は入居者からは現状は家賃以外のフィーはとっていないといいます。その代わり、エンジョイワークスに関わってくれた人たちが賃貸、リフォーム、開業といったニーズが出てきたときに、相談の受け皿となるなどサービスを多めに用意しているということでした。
今回の葉山一色のプロジェクトに関しても「エンジョイワークスさんにお願いしたい」というオーナーからのお声がけから始まっているとのことで、地域に根ざした会社、ビジネスのあり方として非常に勉強になりました。
「葉山一色シェアオフィスプロジェクト」気になる1回目のイベントは1月30日(土)開催! イベントへのご参加はこちらから申し込みできます。