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はてな近藤淳也さんがリリースした「物件ファン」は今までの不動産サイトと何が違うのか?後編

ハロリノ編集部

株式会社はてなの代表取締役会長 近藤淳也(こんどうじゅんや)さんが2016年にリリースした最新サービスは「物件ファン」という不動産紹介サイト。インターネット界で数々のヒットサービスを開発してきた彼が、なぜ今「不動産」に関わろうとしているのか? その背景にある想いと「物件ファン」の特徴についてお話を伺った。

 

個の力とその集合、インターネットがもたらしたもの
東京に事務所を構えた翌年の2005年、近藤さんは「はてなブックマーク」をリリースした。インターネットに公開されている記事をオンライン上に保存できるサービスだ。個人が保存した記事を人とシェアしたり、タグから関連記事を追いかけたり、興味の近いユーザーに出会うこともできる。

 

近藤:「2005年当時、日本にはブログを書くユーザーが約500万人くらいいると言われてました。自分の日常を文章に書いてインターネット上に公開するという行為をする人がそのくらいの規模でたくさんいたんですね。その中には時々めちゃくちゃ良い記事があるんですよ。一般の人が書いたブログの一記事なのにとんでもなく面白い。それまではRSSなどの機能を使って、このブロガーさんのブログをフォローする、ということはできましたが『記事』という粒度(りゅうど)で集められるサービスがなかったんです。今日のこの記事が面白い!が見れるものがなかった」

 

はてなブックマークのトップページには、その日最も多くの人にブックマークされた記事が上がってくる。つまり、みんなが今面白いと思っている記事が優先的に表示されるのだ。世の中の大方のメディアには編集者や監修者がいて、その人たちが選んだトピックスが読者に対して供給される。しかしはてなブックマークでは、みんなが面白いと思った記事が上位表示される。そこには権威や特定の誰かの思惑は介入しない。

 

近藤:「インターネットの面白さは、一個人でも誰でも見れる、ということなんです。集合知と言ってもいいし、ある種のエンパワーメントなのかもしれない。個人の力が集合的に集まって、専門家がやるよりも良い結果をもたらす。ひとりの人間が日記を書いてるだけでも面白いし価値がある。そういう意味では個人が尊重されていると言えるかもしれません。

インターネットの世界というのは、そもそも既存の場所でやれている人にとってはいらない場所なんです。そうじゃない人たちから必要とされた、いわば西海岸のカウンターカルチャー的なものだったんじゃないかと思いますね。自由な個を尊重するという」

 

かつて情報は上流で漉されて一方向に流れてくるものだった。しかし今は違う。勝手に価値づけされない自由な情報を個人から発信し、それがネットワーク化し、時にボトムアップで社会に影響を与えるような大きな力にもなる。

 

近藤さんとエンジョイワークス代表 福田。

近藤さんは、長年身を置いて来たインターネットの世界についてこう語る。

 

近藤:「僕は都市の家の造りが、インターネットにも影響を与えているんじゃないかと思います。経済効率主義の下で、職場と家、というか寝床をいかに効率的に行き来するかという構造になっている。そこでは、会社の同僚と家族以外の人とどこで話したらいいの?となってしまう。会社と家以外の場所を豊かにしようという概念がなくなってしまう。でも本当は、会社と家の間に、ご近所さんや友達や地域やいろんなものがあったはずなんです。それが分断されてしまった。そこともう一度繋がりたいと思った時に、ネットの方が手っ取り早く繋がれたということなんだと思います。その段階を経て、今リアルな世界へもその揺り戻しが来ていると思います。人はやっぱりリアルな中にもともとあったものを欲するんじゃないかと思いますね」

 

本店と称する東京のオフィスで営業しつつも本社は京都に置き、お住まいも京都にあるという近藤さん。京都というまちは、会社と家の間にある無くしたくないものをいつも感じさせてくれるのだろう。

 

「物件ファン」にはさまざまな不動産業者が取り扱う個性的な物件記事が、独自の切り口で日々集められている。

 

「物件ファン」は何を変えていくのか

 

2014年、近藤さんは株式会社はてなの社長を交替し、代表取締役会長に就任した。その理由はいたってシンプルだ。

 

近藤:「もっと自分で何か作りたかったんです。いろいろと調整をしましたが社長という立場ではそれがなかなか難しかったので、社長は信頼できる人にお任せして、また自分で一から新しいものをやることにしました」

 

そうして自らが事業責任者となって2016年にリリースしたのが「物件ファン」というウェブサイトだ。このサイトでは、住む、住まない、買う、買わないなどに関わらず「不動産物件情報を見て楽しむ」ことを主眼に置いている。なぜ不動産という分野をテーマにしたのか、と近藤さんに尋ねると、

 

近藤:「僕はインターネットの中で完結するサービスというのをずっとやってきたので、視野をもっと広げたくなったんです。住む、とか、まち、とか、住まいとか、そういうものを考えたいと思った時、入り方として『不動産』になりました。だから『物件ファン』は完全ユーザー目線でやってますよ(笑)」

 

「物件ファン」はインターネットの世界からリアルな世界への、近藤さん自身の揺り戻しでもあるのかもしれない。

 

近藤:「ここ数年、従来型の不動産サイトとは少し違う新しい傾向が出てきていますよね。エンジョイワークスさんもそうだと思いますが、ちょっと変わった、というか今までの基準からすると規格外みたいな個性的な物件を紹介するサイトや不動産業者さんが増えてきている。でもユーザーからすると増えすぎてよく分からなくなっているんです。僕自身が好きで物件サイトをよく見るんですが、不動産業者さんのそれぞれのサイトを4つ5つチェックするってそれだけで大変だし、知りたいのはやっぱり新着物件なので、それを横断的に見たいんですよ。地域も限定しないでいろんな所のを」

 

そんな近藤さん自身の着眼もあり、「物件ファン」ではさまざまな不動産サイトに上がる新着物件をこのサイトでまとめてチェックすることができる。物件のラインナップも、今までの不動産や住まいの定石からはみ出すようなユニークなものが多数を占める。

 

近藤:「不動産が大好きで詳しい人はもちろんですが、住まいや暮らしの価値、新しい視点で不動産を見ることにまだ気づいていないような人にも『物件ファン』を見てほしいんです。『本気でこういう家ってあるんだよ』ということを伝えたい。読んでいるうちに住まいへの感覚が変わっていってくれたらいいなと思います。何気なく見ていたのに、いきなりピン!とフラッグが立つこともあるのが不動産の面白い所。そんなワクワクもありつつ、見ていてほしいと思っています」

 

“自分自身として長い時間を過ごす「住まい」を見る視点が変わることで、自分の暮らしや生き方に改めて向き合い、自分にとっての本当の豊かさを発見することにも繋がっていくんじゃないか?”

 

それが今、近藤さんから提示された最も新しくなんとも人間臭い「問い」、まさしく「はてな?」なのだ。インターネットという手では触れない世界の側から、不動産という地続きで生身の生活に繋がる世界へのアプローチ。それは双方の既存世界に次なる進化を促す、興味深いリノベーションの始まりとなるのかもしれない。

 

前編を読む

 

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近藤淳也(こんどうじゅんや)
株式会社はてな代表取締役会長。1975年生まれ。2001年に京都ではてなを創業、自らプログラムを書いて数々のサービスを開発し、会社の成長とともに経営の仕事へとシフト。2014年会長に就任し、2016年に自ら事業責任者となって新しい不動産紹介サイト「物件ファン」を立ち上げる。

 

株式会社はてな

http://hatenacorp.jp/

 

物件ファン

https://bukkenfan.jp/

 

 

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