氷見の新しい暮らしの取り組みは「乗換駅」。オンミナデー・イベントレポート

こんにちは!ハロリノ編集部の牧です。
能登半島の付け根に位置する富山県氷見市。JR氷見線の終着駅「氷見駅」から徒歩5分ほど、街中を流れる「湊川(みなとがわ)」沿いの築99年の倉で、on the Minatogawa 一般社団法人(以下、オンミナ)の新しい取り組みが始まっています。
毎月月末の日曜日は「オンミナデー」としてイベントを開催しています!今回はオンミナスタッフの吉田英文さんから、6月28日のイベントのレポートをいただきました。「倉」と乗換駅の興味深いアナロジーからイベントをご報告いただきました。出会いの交差点からはじまる無限の可能性について、深く考えさせられます!

当日の映像はこちら

倉の名前は藺製品倉庫。

かつて加賀藩内で小松と並び藺草(イグサ)の産地として知られていた氷見。時代の流れとともに藺草の生産者が途絶え、藺草製品である「氷見表」の貯蔵場として使われていた倉も使用されなくなっていました。この倉を、多くの人が集い、交流する場に復活させようと活動がスタートしました。

そもそも「倉」は、歴史的にみると「船」と「舟」の乗換場所に建てられました。航海のための大きな「船」と細い川の運搬用の「舟」は同じ水上に浮かぶ「フネ」なのですが、乗換が必須です。川用の舟は海で転覆しやすいですし、海用の船は川に入ると座礁してしまいます。そこで、川と海の結節点では、一時的に物資を保管する倉が必要となり、物資の集積地として経済が発展していきます。倉敷や倉吉をはじめ「倉」のつく地名は全国にあり、県庁所在地も川と海の結節点にあることが多いですね。

新宿駅、渋谷駅、池袋駅・・・、視点を都市部にうつすと、乗換駅には多くの人が集まり、周辺の街は栄えていることが多いです。個人的にも、仕事帰りの新宿駅構内の立ち飲み屋さんで妻と談笑したり、見知らぬ人と仕事や政治の話をしたりと思い出は多くあります。偶然の出会いも含め、多くの人が行き交い、新しい何かが始まるエネルギーがあるんです。

6月28日に行われたイベントに参加し、ここが氷見の「新しい乗換駅」に感じられました。幅広い世代が集い、それぞれが自由に活動を楽しみ、ピザを食べながら談笑する。この光景が、かつて利用していた乗換駅と似ていることはもちろんのこと、その場づくりに自身が参加できるという点で「新しい」と思ったのです。以下、その1日を簡単にレポートさせてください。

集合は13時。

暑すぎず、過ごしやすい天気。早めに準備をしてくださっている方に感謝しながら、私は、まず氷の作業に取り掛かった。氷で冷ます旧式の冷蔵庫用に、量を調節しながら氷の袋詰めをしていく。なかなかピッタリの量にならないのがもどかしかったが、ぴったり収まるとそれだけで楽しい。倉ができた頃は電気も普及しておらず、自然のエネルギーを使っていた100年前の暮らしを、つい想像してしまう。

この日のメニューは「ベンチづくり」「つくえづくり」と「オンミナ菜園でバジルを摘んでピザを焼こう」の三本立て。それぞれが好きなものに関わるという流れで、子どもたちは「てんません」に乗船して遊んだりもできる。私は全体を見ようとしていたが、つい木工作家の平川大さんがレクチャーしてくれるベンチづくりにどっぷり浸かってしまった。ノミを使うのは初めてで、うまくいかないこともあったが、一緒に作業してくださった方の助けを借りて、仕上げることができた。塗装は「ウッドロングエコ」を使用した。木の成分と塗料が反応し、数十分後には見違えるような風合いになっていた。

ベンチが完成した後に、外へ出てみるとピザが焼きあがっていた。自分たちで生地を成形し、具材をのせて焼き上げる。こちらも手作りで、愛着が湧く。地元のお酒やビール、自家製レモネードを携え、話も盛り上がる。このような場は、多くの人と少しずつ話をしたい気持ちもあるが、一緒にベンチづくりを共にした「同志」ともいえる方々と、これまたどっぷり話をした。富山、そして氷見から外に出てみないと、地元の魅力が分からないままだったということが話題となった。Uターンされた方や移住された方、ずっと氷見に暮らしている方など、多様なバックボーンをもつ人が集い、語り合い、地域や互いの良さを確認しあえる場だったと感じる。

17時過ぎ、夕方の入り口頃に私は一足早く失礼した。その後も、楽しい談笑が続いたのだと思う。最初は、記録を取ろうと傍観していたが、どこかで面白くないと気づき、当事者として参加していた。視野は狭いが、「広く浅く」ではなく「深く」コミットできたと感じる。自分でつくったベンチへの思い入れは強く、この場所が自分の居場所になったことは何事にも代え難い。

人生は、よく旅に例えられる。

氷見は終着駅としての魅力もありますが、長い人生、旅はまだまだこれからです。オンミナの集まりでお会いした方には、氷見に落ち着いた人もいれば、氷見に来たばかりという人、転職など人生の岐路に立つ人、それぞれの人生がありました。藺製品倉庫が旅の途中の「乗換駅」として、新たな出会いを生み、広い海へと進んでいくことを勇気づけてくれる場になったらいいな、と思うのです。とはいえ、せわしない世の中、湊川の流れようにゆったりと歩んでいきたいと考えています。

写真:北条巧磨
文:吉田英文

人気の記事

【募集】商店街活性化へ!官民連携の「リアル」を学ぶ視察ツアーin 和歌山・紀の川市
オススメのイベント

【募集】商店街活性化へ!官民連携の「リアル」を学ぶ視察ツアーin 和歌山・紀の川市

2024-06-04 開催

和歌山県紀の川市