住民参加がもたらしたリノベーションの成功。ポートランド・パール地区の歩いて楽しい街づくり
“全米で最も住みやすい街”に選ばれた、西海岸オレゴン州のポートランド。
ZINEを代表とするDIYカルチャーの発信地としても知られる、緑豊かな居心地の良さが魅力のこの街には、都市再生の成功事例として、世界中から注目されるパール・ディストリクトがあります。荒廃して見捨てられていたこのエリアが、どのようにしてリノベーションに成功したのか、その秘密と魅力を探っていきましょう。
倉庫にアーティストが移り住んできた
via: pearldistrict.org
1980年代半ば、鉄道の車両基地と、倉庫が建ち並んでいたこのエリアに、ニューヨークのSOHOを見習ったアーティストたちが移り住んできます。州の行政機関のPDC(ポートランド市開発局)はこの動向から、パール地区に公的資金を投資すれば再生可能だと判断、1990年代から、民間のデベロッパーと地域住民を参加させる、都市再開発に着手しました。
PDCは、ポートランドの公共の路面電車「ストリートカー」を、中心部からパール地区まで延長させます。これによって地区へのアクセスが飛躍的に容易になり、税収増を見込んだ公的資金による再開発が加速されていきます。
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古い建物をリノベーションした歩いて楽しい街づくり
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ポートランドの街全体が、200フィート(61m)というアメリカの他都市の半分の大きさのブロックで構成されていることが、パール地区の街づくりに大きく影響しています。
「歩いて楽しい街づくり」を主眼として、古い建物をリノベーションして活用。建物の1階部分には、レストランや開放されたロビーなど、誰もがすぐに飛び込んで楽しめるスペースを確保しています。
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歴史ある倉庫のレンガの外観と、新しい建物の入り混じったミクスチャーが、パール地区独特のワクワク感をかもし出しています。
全米最大の蔵書を誇る独立系の本屋さん「パウエルズ・ブックス」の、新刊と古本をいっしょに並べて販売している様子は、まさにこの街らしさを感じさせます。
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環境に配慮したサステナブルな開発
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PDCの指導する街づくりでは、常に環境を重視した開発が求められています。投資する建物にはグリーンビルディングの指標のLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)認証が必要となっています。
建築案件からもれたエリアは、昔の湿地をテーマにするなど、特色のある魅力的な公園として整備して住民に開放しています。歩き疲れたらほっと一息つけるスペースはありがたいものです。
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路面電車を推奨し、車の通行量を減らして自転車の利用が多いところが、ヨーロッパのアムステルダムを彷彿とさせます。ポートランドでは、日本の京都のように、景観保護のために建物の高さ制限を設けている点もユニークです。
住民の声とセンスが最大限に反映
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パール地区の再開発には、コミュニティの住民の声が最大限に反映されています。PDNA(Pearl District Neighborhood Association)などのボランティアの住民コミュニティが、開発を検討するデザインワークショップを通じて、建設物に対して意見や要望を出します。これによって、住民の要望にそった、需要の見込みの高い開発が可能になっています。
もともと、アーチストなど、センスと美意識の高い人たちが移り住んできたパール地区。官の行政機関のプロフェッショナルな交通網整備や公的資金を使った開発に、住民が積極的に関わることによって成功した事例です。都市再開発のモデルケースとして、パール地区には、世界中からデベロッパーや投資関係者、公的機関の人たちが視察に訪れています。ただ、リノベーションの成功のキーとなった、パールの住民の意識や姿勢は、なかなか簡単にはマネできないものかもしれません。
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