江戸時代から続く広域観光圏・大山の先導師らに学び、みんなで考えた。令和版大山詣りアイデア発表!
豊かな自然にある丹沢大山国定公園、大山(おおやま)。日本人が数千年祈りを捧げてきた信仰の地であり、行楽の山でもある大山の活性化を目指す「大山これから会議」では11月1日、オンラインイベント「大山詣りの魅力とは?先導師さんと令和の大山詣りを考える会議!」を開催しました。
1. 大学教授と先導師に聞いた「大山詣り」と「大山講」の基本
江戸から近い観光地として人気だった大山には「大山講」という同業者や地域の人たちでグループをつくってお詣りする「大山詣り」があります。産業能率大学の古賀教授は、大山詣りを知るキーワードは「大山詣り」「大山講」「先導師」「宿坊」の4つであるとし、江戸時代の取り組みについて経営の視点も交えながら解説されました。
大山詣りを知る4つのキーワード
1. 大山詣り
箱根の関所を越えずに娯楽の要素を交えながら参拝に訪れることができるとあって、100万人といわれる江戸時代に年間20万人が訪れていました。令和の今日も脈々と続いているのが大きな特徴。
2. 大山講
江戸時代、地域や職業でまとまったグループが関東各地で組織化され、各地から伸びる大山道を通って大山を目指したそうです。いまの国道246号も大山道として有名。江戸時代ですでに広域観光を実現していたことが分かります。
3. 先導師
山岳信仰が廃れていくなかで、いまも大山詣りが脈々と受け継がれているのはおもてなしをする先導師の存在だといわれています。宿坊に来る大山講の人たちに暮れのあいさつ回りをしたり、講専用の行衣や食器を預かったりして継続利用の仕組みをつくっていました。今の観光の分野で着地型観光といわれる取り組みやCRM(カスタマーリレーションシップマーケティング)などを先導師たちは江戸時代から実践してきたのです。
4. 宿坊
宿坊はお寺や神社の宿泊施設を指すもので、大山には現在も40軒ほど宿坊が残っています。人が集まり、創造的なことが起こったりコミュニケーションできたりする空間や時間を共有することは重要。そういった場を講の人たちに提供することで地域や仲間意識が強化されます。こうした意味でも宿坊は素晴らしい役割を持っています。
詳しくはアーカイブをご覧ください。古賀教授、先導師の大藤さん、内海さんに加え、大山阿夫利神社権禰宜(ごんねぎ)の目黒さんも飛び入り参加いただくという大山豪華メンバーでお送りしたトークセッション。宿坊の歴史や印象に残った講の人々など見どころ満載です。
*プログラムと登壇者プロフィールは記事下で紹介しています
2. 「令和版大山講」のアイデア出しと発表
イベント後半は、参加者や大学教授、先導師、権禰宜、事務局スタッフらみんなで、現代の私たちがより大山を楽しめる「令和版大山講」について考えるブレストタイムです。
「大山の歴史というのは江戸時代から令和に至るまで、時代の点が線でつながっているのが有意義なものであり、意味のあるもの。先人たちが残してきた思いをくみ取ることも大切にしていきたいですね」と目黒さん。古賀教授からの提言「新たな大山講を考えるうえでの3つのポイント」も参考に、参加者とスタッフあわせて30人が4つのチームに分かれて始まりました。
新たな大山講を考えるポイント
- 大山である理由があるか
- テーマに継続性があるか
- クチコミによる伝搬が期待できるか
ブレストタイムは20分間。限られた時間とあって自己紹介もほどほどに、思い思いの“令和版大山講”をイメージ&シェアしていきます。ときにトークセッションの内容を振り返りながら、子育てのつながり、自分が住む地域のこと、食や美容、スポーツなど趣味や興味関心のテーマなどさまざまなアイデアが出されました。最後は各チームからの発表タイム。みんなのアイデアを紹介します。
チーム1
「子ども」「共通の趣味を楽しむ」といったアイデアが多く出てきたチーム1。「家族が増えるとパパ友やママ友など横のつながりも生まれるので、こうした人たちと講がつくれたらおもしろそう」といった声もありました。
チーム2
チーム2は従来のものをアップデートするもの、趣味関連、女性をターゲットにしたもの、健康関連などさまざまなテーマが登場。どれも「鶴巻温泉など県内周遊できたら」「周辺エリアと掛け合わせていきたい」と観光エリア全体を活性化させる視点が多く見られました。
チーム3
チーム3は、クチコミによる伝搬と相性がいいことから「食」をテーマにした講などが上がりました。また、個々のアイデアだけでなく、モチベーションアップを狙った新しい行衣づくりや、ご来光や登山といった大山そのものの魅力を訴求すること、山を登る大山講の人たちに積極的に声がけして地域利用のモチベーションを高めることなどの大切さまで広がりました。
チーム4
建築専攻の学生や街道沿いに住む人がメンバーとあって、新たな視点で語られたチーム4。目黒さんも「湯水のごとく出てくる」と刺激を受け、大山街道沿いの商店街で食材を買って大山講として新しい料理を作る講など、一緒にアイデア出しで盛り上がった様子。
講は企業や業界、地域団体単位が多いイメージですが、「大山講は新しくつくることができるので、専門分野や好きなものを題材にして集まるのもいいですね。業界で活躍する人に講師兼講元(講の代表)になっていただけたら、講義の時間だけでなく講として一緒にお参りするときも話す機会が生まれます」と目黒さん。講がきっかけで出会い、興味関心のあるテーマについて情報交換をしたりじっくり会話できたりするのが“令和版大山講のかたち”といえそうです。
3.玉置講、おやじの会講、宝探し講、婚活講などアンケートにもアイデア続々
発表しきれなかったアイデアや感想をアンケートでお伝えいただきました。その一部を紹介します。
アイデア・参加者アンケートより
・まったく知らない人たちで興味が同じ方々が、大山の自然と神さまのもとで一つになれる講、それが、新しい講として続いていく。テーマは、水、食、酒、宗教、治水・治山、大地の再生、マインドフルネスなど。あと私の居住地近くの江の島・片瀬や鎌倉は古くからの信仰の地としての大山とつながることが多々あると思う。
・普通にありそうなのが同窓会・同期会講。アニメ・ゲーム講から一歩踏み込んでコスプレ講。合コン・婚活講とかあってもおもしろいかも。あとは気軽にフラッと参加OKな飛び入り講とか即席講とか。
・コーヒー講/ドリップ体験、自分オリジナルのブレンド作成、焙煎体験など。コーヒーを大山の水で入れると本当においしい!
・ヘルスツーリズム的な大山講は割とすぐできる気がします。大学病院もあるので連携できると良いかと前々から考えています。
・玉置講/なかなかお目にかかれない玉置浩二ファンと玉置さんのこれからの活躍を祈願し、好きな曲のプレゼン会をしながら朝まで語りたいですね。玉置ファンの先導師の方がいらっしゃるとベストです。
このほか、PTAのおやじの会や、野球、テニス、サッカーなどスポーツクラブ、子ども食堂などの地域の講、バイク、ツーリング・クラブ、同窓会など組織の講、おいしい水関連、グルメ関連、ゲーム関連(大山お宝探しゲーム)などのSNS/趣味の講など
・豆腐料理や近隣の温泉を活かした女性向けヘルシー大山講ツアー、江ノ島・鎌倉などと組み合わせ、江戸時代の参詣行路の令和バージョンを作成
・食べたり飲んだりを楽しむ講(地元の食材、酒、地ビールなど)、エンタメを含む講
4. 次回12/3イベントは大山講を体験してアイデアを深掘り!
今回のイベントでは、宿坊でのお祓いや大山阿夫利神社下社でのお詣りなど伝統的な「大山詣り」を一部体験したのち、山荘だいとう(宿坊)にて令和版の大山詣りを考える会議を行います。
詳細・申し込み方法はイベントページをご覧ください。
https://hello-renovation.jp/news/detail/16798/335
大山これから会議とは
全ての道は大山(おおやま)に通ず。江戸の人口が100万人だった江戸時代中期、毎年20万もの人々が訪れた大山。日本人が数千年祈りを捧げてき信仰の地であり、行楽の山です。令和の今も多くの方々を惹きつける大山ですが、観光地としてさらなる可能性を秘めていると考えています。大山に関心を持っていただいた皆さんとワークショップ等を通じ、観光エリアとしての課題解決、魅力向上、活性化を図っていきます。
※大山これから会議は終了致しました。
「大山歴史講座」目黒 久仁彦 さん
https://youtu.be/3JaezSFub_k
いせはらシティプロモーション公認サポーターで、阿夫利神社の神主さん、目黒久仁彦さんによる大山歴史講座。市内にある産業能率大学の令和2年度新入学生に向けた講義として制作したもので、大山の歴史をわかりやすく解説しています。雲海から見える大山の景色など自然や催事を撮影したドローンのダイナミックな映像も必見!
「大山、ふたたび。」小田急電鉄
https://www.odakyu.jp/oyama
*大山詣りの魅力とは?先導師さんと令和の大山詣りを考える会議!プログラム
登壇者紹介
・大山これから会議について
・産業能率大学・古賀暁彦先生より「大山詣り」とは?
・トークセッション~先導師さんに聞く!大山詣り~
(1)宿坊の歴史を教えてください。
(2)みなさんの宿坊にはどんな「講」の方がいらっしゃいますか?
(3)印象深い「講」の方の大山での過ごし方は?
(主催:大山これから会議、協力:次世代まちづくりスクール)
登壇者プロフィール
大藤 豊巳 さん
大山阿夫利神社先導師 大藤誠一20代目・山荘だいとう代表
神奈川県の寒川神社にて神職を40年務めた後、山荘だいとう第20代目先導師に就任。これまでに東京を初め、埼玉、千葉、神奈川の大山講社を50講社程受け入れ、阿夫利神社へと先導している。
内海 博文 さん
大山阿夫利神社先導師 内海政雄16代目・旅館かすみ荘代表
大学卒業後に湯島天神(湯島天満宮)にて神職を務め、一般企業への就職を経て、約400年続く先導師内海政雄と旅館かすみ荘の代表を勤めている。これまでに約30講社を受け入れ阿夫利神社へと先導している。
古賀 暁彦 さん
産業能率大学 情報マネジメント学部教授
1988年産業能率大学に入職。ゼミで大山、伊勢原のイベント参加や地域事業者と共同取り組みなどによる地域活性化に日々取り組む。