ハロー! RENOVATION

スタイリスト石井佳苗さんインタビュー。The Bath & Bed HAYAMAのインテリアに込めた思いを徹底解剖!(前編)

インテリアに向き合う姿勢を通して「蔵再生」という次の時代をつくる発想の源を探る、人気スタイリスト石井佳苗さんのインタビュー。みんなの再生アイデアで生まれた“泊まれる蔵”「The Bath & Bed Hayama」(神奈川県葉山町)のインテリアには、どういった遊びの要素が秘められているのでしょうか。スタイリングに込めた思い、施工当時のエピソード、全国展開に期待することなど、たっぷりお話をうかがいました。前後編でお楽しみください!

プロフィール
インテリアスタイリスト 石井 佳苗(いしい・かなえ)さん
インテリアメーカー「Cassina ixc.(カッシーナ・イクスシー)」に10年間勤務後独立。雑誌、広告、CM、カタログなどインテリアを中心にライフタイル全般の提案やスタイリング、ショップディスプレイ、モデルハウスのスタイリング、講師、商品開発など幅広く活躍。スタイリストならではのセンスあふれるDIYは女性の中でも先駆け的存在となり、自宅のセルフリノベーションやDIYのライフスタイルも注目されている。

Instagram/ @kanaeishii_lc

1. 狭い、暗い、古い蔵を宿に? 実現できたらおもしろい

ハロリノ荘司(以下、荘司):当時を振り返っておうかがいしたいのですが、石井さんはこのBBHのプロジェクトのどういったところに魅力を感じてご参加いただいたのでしょうか?

石井 佳苗さん(以下、石井):やっぱり「蔵」というところですね。古民家の宿はよくありますが、蔵と聞いて「え?大丈夫なの?」と思ったのが正直なところです。ただ、私たちが求めているホテル像とはすべて逆のイメージである「狭い」「暗い」「古い」といった蔵がどうなるのかな、もしできたらおもしろいだろうなという希望もありました。だからインテリアの面で関わらせていただいて、やりがいがあったというか、すごいプロジェクトでしたね(笑)


荘司:改修前の2018年はこんな感じでした。このときには空間のイメージをもう描かれていましたか?

石井:そのときも半信半疑でしたね(笑) ジャグジーバスを入れる案を聞いても、おもしろそうと思いつつ「そんな大きなバスルームをつくっちゃって大丈夫?」って。でも施工されるCALLAC(キャラック)の大塚哲也さんは大工目線で「こうやったら入れられるね」とイメージされるので、大塚さんの感覚でものごとを見ていると「あ、やれそうかな」と次第に思うようになりました。

2. 「蔵らしさ」を残しながら、ギャップも感じてもらいたい

荘司:開業までが短い期間のなかで、どのようにインテリアをイメージしていったのでしょうか?

石井:この蔵は石でできた外観に対して、中は木で組まれています。そうしたこの「蔵らしさ」を残しながらギャップも感じてもらえるように、と考えていきました。たとえば1階の半分をジャグジーにすることで雰囲気がガラッと変わるので、壁はそのまま残した方がいいかなって。2階は天井に組まれた梁がおもしろいからこのまま使いたいけど、壁が木のままだと下の印象と同じに。それに全部が木で囲まれてしまうと暗さを感じてしまいます。暗さも良さではあるけど、2階に登ったときに1階とは異なる印象を与えたかったので、白い壁にしました。そうすることで天井の良さも出て、それぞれの良さが際立ちましたね。

1階は、開けてすぐの印象がとても大切です。インテリアで考えるならやはり照明ですね。これはイギリスのものだったかな。シャンデリアといってもギラギラした感じじゃなくて、少しレトロな感じのこの空間にふさわしいアンティークのものを選びました。あとはアートもほしかったので、そこは地元の方で、よく一緒に仕事もしていたアーティストの田中健太郎さんにお願いしました。なぜ象の絵かというと、私が健太郎さんを初めて知った名古屋の展示会であの象を描かれていて、すごくいいなと思ったんです。描き方もアレンジが効いていて、紙ではなくトタンに描いてあるんですよね。素材感のおもしろさもいいなと。

それと、つくり付けでシンプルなソファを入れようとなったので、張り地を合皮にしてクッションで遊ぶ感じにしました。少し温かみを持たせるために手仕事を感じさせるキリムのクッションをミックスして置き、ラグも民族系の古いものを入れました。

荘司:行ったことのない方にとってみたら、もしかしたら広いんじゃないかという錯覚に陥るような写真かなと思いますが、実際はすごく狭いですよね。

石井:そう、入ってすぐに2段下がりますが、この部屋だけで6畳もないとても狭い空間です。でも広くとられたバスルームがガラス張りになっているのでそんなに狭さを感じさせない印象はありますね。

荘司:この写真の左側のミラーも演出のひとつでしょうか?

石井:そうですね、鏡は洗面のところにもちろんありますが、広さを感じさせるのでここにもあるといいなと思ってヨーロッパの鏡を入れました。鏡は見る方向によってさまざまな景色を映してくれます。照明などのアイテムが映り込んだり、窓を開けたときには外の景色が映り込んだりして、いろいろなことを演出してくれるんですよね。狭いお部屋の中でも使える手法です。私の家にもインテリアとしての鏡があります。奥行きを感じさせてくれたり、室内の表情の変化を見せてくれたりというアートにはないおもしろいエレメントながら、アートのような存在感もあります。

3. 古いものと新しいもので「蔵らしさ」の中に驚きを

荘司:この写真はバスルームで、右側はトイレになっています。その手前にも田中健太郎さんの縦長の絵が飾られていますね。

石井:この健太郎さんの絵はバスルームから見ると分かるんですけど、細長い窓から見えるように配置しているんですね。窓は明かりとりになるけど、照明の入っているここは夜も明るいじゃないですか。この窓の意味を考えていて、何かほしいな、バスルームに入ったときに気付いていただけたらうれしいなと思って絵を入れました。

荘司:この写真の右側にあるスリット窓ですね。窓から絵がのぞいていることに気づくとうれしくなりますね。こうしたポイントが室内にいくつも散りばめられているなと感じました。ちなみにバスルームのタイルも一緒に選んでくださいましたよね。

石井:ジャグジーの奥のタイルは、下の方がカーブになっているのが分かりますかね。細いタイルではないとカーブが取れないんですよね。カーブ用のタイルもありますが、ここにはやさしいカーブを付けたかったので、小さなタイルを採用しました。

荘司:ここにもいろいろな見どころがありますね。かごを置いていただいて、ドアの取っ手も変わったものですね。

石井:かごも古道具ですね。桜花園で見つけたのかな。お風呂屋さんが昔使っていたかごです。古いものと新しいものをミックスするというのが私のやり方なので、きれいなモダンなところに古い蔵を感じさせられたらと考えました。取っ手はバスルームに行く扉のものですね。石がいいなと話していたら、設計を担当してくれていた方が森戸海岸で拾ってきてくれて。大塚さんが穴をあけて取り付けてくれました。こういったちょっとした質感があるものとか、その土地のものがあることで、少しの滞在期間でも愛着がわいてくれるといいなと思っています。

荘司:これがすべすべで肌触りが気持ちいいんです。そういった気持ちよさや「石なんだ!」という発見を、1泊2日という短い滞在の中でどれだけ持ち帰ってもらえるかというところが、石井さんにとっての宿づくりのポイントなのかなとおうかがいしていて思いました。

石井:家のイノベーションでもそうですけど、こういう細かいところにこそ気を使いたいと普段から考えています。どうしても目が行く大きなところにばかり気持ちは集中してしまうんですけど、ふとしたところや毎日使う何でもないポイントにこだわりが詰まっていると、「ああ、溶ける~」「いいよね、かわいいよね」となっていくと思うんですよね。だからこの取っ手やアート、タイルの曲線のように、ちょっとした驚きを散りばめています。

荘司:もしかしたら蔵というコンパクトなサイズ感だからこそ、よりこういう細部のものが引き立つのかもしれないですね。階段もじつは木でできているんじゃなくて、中に鉄骨が入っていて古材で巻いている作り方ですよね。

石井:一見すると木ですが、構造的にはしっかりとつくっています。もともとあった階段は急勾配だったので、お子さんもきっと泊まるでしょうからもう少し登りやすく、でも圧迫感が出ないように吊りをロープにして踏み場を工夫しました。宙に浮いているような階段ですね。結果、ちょっとしたスリルを感じるのもおもしろいかなと思います。結構ここは体験ができますね。

荘司:この階段があるかないかだと全然印象が違いますよね。揺れますしね(笑)蔵の中にいろいろな体験がありますね。

(前半おわり)

スタイリスト石井佳苗さんインタビュー(2) The Bath & Bed HAYAMAのインテリアに込めた思いを徹底解剖!(後編)

The Bath & Bed Hayamaについて

Bath & Bedシリーズのきっかけとなる「Bath & Bed Hayama(以下BBH)」は、エンジョイワークスが2018年6月に日本で初めて「小規模不動産特定共同事業者」となり、第1号募集ファンドで開業した、神奈川県三浦郡葉山町にある「一棟貸しの宿泊施設」です。約12坪の小さな蔵を、1階はラグジュアリーなバスルームとソファを据えてくつろげる空間に、2階は最大4名が泊まれる小上がりのあるベッドルームに改修し、コロナ禍でも順調に運営を継続しています。投資家や地域住民が主体的に関わることのできる仕組みにより事業計画が組み立てられ、参加型まちづくりの成功事例としても評価されています。
https://bathandbedhayama.com/

The Bath & Bed プロジェクト
日本中の蔵をホテルに!いよいよ全国展開へ

2022年8月に「The Bath&Bed Hayama」のビジネスモデルを全国の蔵の再生にも活用する「The Bath & Bedプロジェクト」を電通と立ち上げました。この「The Bath & Bedプロジェクト」で再生する蔵のインテリアデザインは「The Bath & Bed Hayama」のインテリアを手掛けたスタイリストの石井佳苗さんに引き続きご担当いただきます。
https://hello-renovation.jp/renovations/15709


※本記事は昨年11月に開催したオンラインイベントの一部から構成したものです。
イベントアーカイブはこちら https://hello-renovation.jp/topics/detail/18550

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