工場をリノベーション! 桜山シェアアトリエが廃工場から生まれ変わった経緯

JR逗子駅から徒歩20分、緑豊かな山あいの住宅街に桜山シェアアトリエがあります。
廃工場の建物や古建材を活かしたリノベーションにより、14ブースを持つアトリエとして生まれ変わり、多くのクリエイターやアーティストが集まる人気物件です。アトリエが生まれた背景には、今までにない魅力ある建物をつくるために集まった多くの人の思いがありました。
人気のシェアアトリエが生まれた経緯と工場リノベーションの魅力について詳しくお伝えします。

工場をシェアアトリエにリノベーション


桜山シェアアトリエでは、14のブースにクリエイターやアーティストが入居し、逗子の緑深い静かな環境で制作活動を行っています。

入り口に小屋があり、木造平屋建ての奥に長く伸びた特徴ある構造です。もとは工場で、144平米の大きな作業スペースを共同アトリエのためにベニヤ板で区切ってブースに仕立てたものなので、スペースは広々としています。

各ブースは作業場や工房として活用され、入居率はほぼ100%の人気物件です。集中できる環境を備えたブースの上部には、制作で用いる資材や道具などを収納するロフトスペースがあり、ものづくりのための利便性も十分備えています。さらに、ブースは、入居者がニーズに合わせてDIYをして改造することが可能です。

ブースには入居者が集中して制作・作業に没頭できる「大人の秘密基地」といった趣があります。

一方、共用スペースは開放的でくつろげる空間です。工場時代の床や骨組みなどのたたずまいを残し、デザイン的にもクリエイターの感性にマッチする空間を演出しています。ウッドデッキのサンルーム、薪ストーブ、ミニキッチン、シャワーなどの共用施設も充実し、ブースでのオンと共用スペースでのオフとを切り替えることができます。

桜山シェアアトリエでは、ブースで思い切り制作や創作に没頭、共用スペースでくつろぐことはもちろん、入り口の小屋=コーヒーショップで談笑することも、自然環境と触れ合うこともできます。

このように魅力にあふれた桜山アトリエですが、背景には廃工場再生への今までにない発想と取り組みがありました。

廃工場の価値

桜山シェアアトリエの土台となった廃工場は、リノベーションしなければ「処分に困るガラクタ」にあふれ、価値がそこまで見込めない物件でした。

古い建物のうえ、大きさも一般住宅より大きいため、解体するにはコストもかかりがちです。更地にしても借地権付きの土地のため、高く売ることは不可能という不利な条件がありました。そのうえに古道具にあふれています。「処分に困るガラクタ」という見方は多数派のものの見方といえるでしょう。当時オーナーも同様の見方をしていたようです。

ところが、ハロー! RENOVATIONを運営するエンジョイワークスから見ると、この物件は宝の山です。年季が入った作業机や木枠にはめてある古いすりガラス、味わいとツヤのある古道具など魅力が詰まっていました。ご存知の人も多いと思いますが、古道具・再生家具はファンも多く「見る人がみると宝」となります。

また、クリエイターやアーティストから見ると、もともと広い作業スペースは魅力的です。アトリエは一人ひとりで準備すると、賃料や設備のコストで高くついてしまうものですが、もし共同でコストをシェアできると助かります。エンジョイワークスでもクリエイターやアーティストのニーズを把握、かねてから共同アトリエの企画を考えていたのです。

そこで、廃工場のオーナーにこれらの道具も含めて売却を依頼しました。廃工場も解体を免れ、オーナーにとっても厄介な物件が魅力的な資産に変わりました。

現在の桜山アトリエには、古い工場のたたずまいと、古道具の醸し出すアート空間が残されています。

見方によっては厄介な物件、コストがかかる物件も、魅力がわかる人がいる、使うニーズがあることによりお宝物件に変わります。桜山シェアアトリエの土台となった廃工場もそんな物件の典型例です。

こんな物件があったらいいのにをかたちに

魅力のあるリノベーションの素材だった工場の発見から数か月後に「そんな物件ねーよ!をつくる会議」が開きました。会場は「HOUSE YUIGAHAMA」。これも私たちが手掛けた再生物件です。

今までにない物件をつくることがコンセプトであることから、「そんな物件ねーよ!をつくる会議」とネーミングしています。

「そんな物件ねーよ!をつくる会議」は投資希望者や物件を探している借り手候補者が、理想の物件についてアイディア出しを行い、ニーズを開示し、企画を考えるための会議です。

投資家、オーナー、借り手候補など、理想の物件をつくることに情熱と関心があるメンバーが集まり、ブレストが長時間にわたって行われました。

逗子や鎌倉などの湘南一帯はアーティストやクリエイターに好まれる地域としても知られていますが、一方で、アトリエを借りることは騒音やスペースコストが壁になり難しいことがわかりました。

このように、アーティストやクリエイターのニーズがブレストで明確化していくと、切実な借り手のニーズが浮かび上がってきました。そこで、ニーズにこたえるため廃工場をシェアアトリエへとリノベーションすることが決まったのです。

ちなみに、物件再生や活用のアイデア出しや、実際に手を動かしてDIYに参加できるイベントは、継続的にハロー!RENOVATIONで実施しています。
リンク:https://hello-renovation.jp/event

Facebookやメルマガなどで情報を発信しているため、気になるイベントがあればぜひご参加ください。

アトリエは完成までに満室に


廃工場ではシェアアトリエに生まれ変わるためのリノベーション工事が進められました。

シェアアトリエは、借り手となる人のニーズをふんだんに盛り込んでつくっています。廃工場のスペースは、基本的に柱とベニヤ板によりブースをしつらえるのみで、大きく変更を加えずに設計しています。工事コストは低く、個室を十分に確保することが可能です。

これは「個室スペースが欲しいが賃料は抑えたい」といった借り手のニーズにマッチした設計です。

また、工場の質感や風合いや道具類などを活用し、アートな空間として借り手の感性にもマッチするようにしています。例えば古い配電盤や無造作に壁にかけた古道具も、余白の多い壁に配置されるとアート作品のようです。

共用部分は薪ストーブやウッドデッキ、キッチンを整備。共同でくつろげる空間のほうにはきめ細かく手を入れています。

工事中の状態で何度も内覧やDIYイベントを開催したのもこの物件の特徴です。リノベーションの模様をSNSで発信したところ、アトリエがほしい借り手候補の問い合わせが日ごとに増えていきました。

イベントには、参加者を多く集め、ペンキ塗りなどの作業を楽しみながら自然とコミュニティが生まれています。投資家や借り手、そして地域の参加者を巻き込み、桜山シェアアトリエは完成前に満室を確保、その後も満室の状態が続いています。

工場リノベーションのメリット

工場は、利用をやめると更地にして土地のみを利用するのが一般的です。しかし、従来のこうした利用方法と異なる桜山シェアアトリエの例に見るように、廃工場をリノベーションすることにはメリットがあります。

  1. コストを抑えられる……リノベーションを行うことにより、解体コストはかかりません。また、できるだけ利用できるものは捨てずに利用することにより、リノベーションコストを下げることができます。
  2. 工場の個性を活かしてオリジナルな雰囲気の物件に再生・有効活用できる……工場は雰囲気や醸し出すたたずまいに惹かれる・写真撮影を趣味にしている、という人もいます。その個性を活かせれば、オリジナルな他にない個性的な物件に生まれ変わることができるのです。
  3. 地域の活性化にも……リノベーションの過程で地域社会との接点を増やすことができると、地域の理解が生まれ、騒音問題などの緩和にも役立ちます。実際に、桜山シェアアトリエの借り手はいろいろな分野のクリエイター・アーティストであることから、ワークショップやマルシェが開催され、地域住民と交流・よい関係を築いています。

このように「廃工場」の従来のイメージや価値評価は、リノベーションによって変えることができるのです。

持続可能なコミュニティへ

桜山シェアアトリエは、オープンから3年後の2018年に「ハロー! RENOVATION」で投資型クラウドファンディングを行いました。

オーナーが所有権をエンジョイワークスに売却し、購入資金を投資型クラウドファンディングで募ったものですが、投資家延べ70人が1,200万円を出資しています。

現在でも継続的にイベントを行い、入居者や投資家が共同で運営アイデアを出し合っており、持続的なコミュニティが形成されています。その結果、空室が出ても、コミュニティのつながりから紹介があって入居者が決まるような好循環が生まれています。

不動産の価値、特にマンションなどの共同住宅では、コミュニティの価値を見直し、コミュニティを形成・維持する努力が行われている例が多く見られます。マンションの価値の維持を長い目で考えた場合、コミュニティの役割・持続可能性は重要な要素であると考えられるためです。

桜山シェアアトリエでは、物件の維持・管理・地域住民とのかかわりに投資家・入居者・地域住民が参加する仕組みがあり、コミュニティの持続可能性が高いといえるでしょう。

その結果、賃貸収入を得て、収益を分配する仕組みであるクラウドファンディングの投資家にも利益が還元されやすくなっています。桜山シェアアトリエの場合、稼働率が100%であれば利回りは年率8.08%、稼働率が80%で、年率2.69%となることを想定しています。

新しい価値を生む共創型リノベーション


投資家、オーナー、借り手などのメンバーが共につくり上げ、運営してきたシェアアトリエは、投資型クラウドファンディングのリターン状況も良好です。

投資型クラウドファンディング開始時からの3年の稼働率は、当初こそ93%でしたが、ほぼあとは95~100%となっています。実績 を見ると、1期7.6%、2期9.5%、3期9.4%(想定 通期平均6.7%)の利回りで推移していました(決算報告書・財産管理報告書より)。

オープン時から半ば取り合いと評された人気物件ですので、その後の稼働率も安定して高レベルです。桜山シェアアトリエを対象物件とする投資型クラウドファンディングは2018年10月~2023年9月を事業期間としています。事業期間が限定されている投資型クラウドファンディングでは、満期=事業期間終了になったら出資金と最後の配当金が支払われる予定となっています。桜山シェアアトリエの場合も同様です。

参考情報:決算報告書・財産管理報告書より抜粋
<桜山シェアアトリエ>
現在の運用状況~配当の実績
・2018年10月1日~ファンド運用中(運用期間:現在3年6ヶ月/5年0ヶ月)
・決算実績:全3期、対象期間:3年、最新決算日:2021年9月30日
・稼働率実績 1年目94% 2年目97% 3年目99%(想定は95%)
・全3期にわたり、想定を上回る売上(賃料収入)計上
・分配金実績=損益累計(3期合計):想定2,260千円 < 実績3,174千円
・分配金利回り実績:実績 1期7.6%、2期9.5%、3期9.4%(想定 通期平均6.7%)

 

桜山シェアアトリエの事例は、工場ならではのリノベーションの可能性や魅力にあふれるものでした。廃工場を素材として、投資家・オーナー・借り手候補のニーズにマッチしたリノベーション物件は今後も事例が増える見通しです。

ハロー!RENOVATIONなら、投資型クラウドファンディング形式により小口で出資できるだけでなく、イベントに参加するなどして、実際にリノベーション完了後の物件運用にも参加でき、物件を中心とするコミュニティの発展・地域社会の発展に持続的に貢献することができます。まちづくりや地域づくりに興味のある人はイベントやアイデア出しにぜひご参加ください。

(2022年5月30日加筆修正)

 

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