空き家再生プロデューサー育成プログラム in 別府
こんにちは、ハロリノの牧です。
空き家の再生利活用を継続的に進めていける人材を見い出し、相互のつながりを深めていきたい。こうした思いでエンジョイワークスが2018年から取り組んでいる「空き家再生プロデューサー育成プログラム」。自治体と共創して取り組むなど、今年度はより実践的なプログラムに進化したことはお伝えしたとおりですね。今回は南伊勢町、いすみ市に続き、12月12日・13日には大分県別府市と共同開催しました。別府市の開催目的は「別府市で空き家再生の取り組みを実際に行える人材の発掘と育成」。このプログラムを行って見えてきたものとは―? 得意分野の垣根を越えてともに学び、想いを共有し合った二日間の様子をお伝えします。
温泉を中心とした街「別府」
参加型のまちづくりは、まち(地域)と建物から導かれるストーリーとプロジェクトリーダーの想いを掛け合わせて、一番重要なコンセプトをつくることが大事です。ここがなかなか難しい。プロジェクトの軸となる“コンセプトづくり”に参加者の皆さんは悪戦苦闘しながら、グループワークを組み合わせて、それぞれのプロジェクトの土台を固めていきます。
コンセプトに煮詰まったらまちを歩くことはとても重要です。そう、フィールドワークです。講義をしている別府大学から徒歩15分ぐらいの鉄輪温泉までお昼を兼ねてまち歩きをしました。
さすが別府の街です。温泉があちこちにあり、温泉宿の風情がある街並みに空き家が結構多い。少しずつ空き家を改修してカフェやコワーキングオフィスが増えているようでした。公民館に温泉があるなど、温泉を中心としたまちづくりが行われており、私としては大変興味深かったです。
さまざまなバックグラウンドを持った参加者たち
今回の参加者も、多彩なバックグラウンドを持つ人々でした。縁あって地域おこし協力隊に転職し、昨年4月に東京から大分県竹田市に赴任した人、Uターンしてまちづくりを行っている人、熊本の阿蘇から別府への移住を検討している人(なんと阿蘇からバイクで来られたそう!)など、じつにさまざま。本プログラムへの、湯を沸かすほどの熱量がうかがえ、私たちもとても嬉しかったです。
それぞれの想いの塊が、いよいよプロジェクトのかたちに
二日間の講義とワークショップのプログラムを通して、それぞれの想いの塊だったものからプロジェクトのかたちが見えてきました。それぞれの夢や想いが詰まった、出来立てほやほやのプロジェクトについて紹介します。
■「内成棚田 千年物語プロジェクト」 原 千砂子さん
美しい棚田の存続をかけて取り組んでいるのが、原千砂子さんの内成棚田プロジェクト。別府市の市街地から車で20分程度のところにある約1000年の歴史を持つ棚田を再生するため、空き家を利活用して棚田に人が来る仕組みをつくろうとしています。
以前から本プログラムの運営元エンジョイワークスに原さんから相談いただいており、これから一緒にプロジェクトを進めていくことになりそうです。実際に視察に行ってきましたので、後日、別記事で詳細を報告します。
■「TAKETA EARTH FOOD PROJECT」 齊藤 美絵さん
続く発表者は、別府市の隣の隣に位置する竹田市にて地域おこし協力隊の一員としてまちづくり活動を行っている齊藤さん。「TAKETA EARTH FOOD PROJECT」は、竹田市の魅力である綺麗な水と炭酸泉、そして豊かな食材、さらにご自身のもつ食品開発の能力と人脈をフル活用して「人と地球に健やかな食」をつくっていくプロジェクトです。空き家を拠点に、食の分野で有名な方とコラボレーションしたイベントや商品開発を行いながらPRをしていき、食を通じたコミュニティ形成や地域の魅力発信を行っていきます。
■「緑の中を歩く街 – 別府100年プロジェクト」 笠木 政治さん
地元の不動産屋を経営している笠木政治さんは、別府を世界に誇れる街にする「緑の中を歩く街 – 別府100年プロジェクト」を発表しました。内容はドイツのヴォーバン地区の事例を踏まえ、狭い道を広くするのではなく魅力的にしていこうというもの。地域の大人や子どもを巻き込み、小径に名前をつけるワークショップを行い、自作マップと動画で愛らしい小径を配信していく計画。さらに地域の人が集まる場所もつくります。小商が実現できるよう、空き地に小さな3坪ハウスをいくつか建てて賃貸し、事業を新たに行いたい人の1歩を応援します。
■「最後の城下町再生プロジェクト」友永 英治さん
齋藤さんと同じく、竹田市の地域おこし協力隊隊員の友永英治さんは、地域のアイデンティティの一つといえる思い出深い武家屋敷が老朽化によって取り壊されるということを本プログラムの前日に知り、急いで取り壊しをストップさせ、武家屋敷存続させるべく受講されました。
エンジョイワークスが神奈川県葉山町で行っている平野邸の取り組みに共感し、平野邸を参考にしながら構想を練った友永さん。二日という短い準備期間でしたが、武家屋敷を1棟貸しの宿泊施設と地域住民が使えるコミュニティスペースに活用するプロジェクトを発表しました。地域住民の思いが詰まった場所ならではのプランで、これから事業のブラッシュアップと実現がとても楽しみです。
■「シングルマザーの安心・安全を考えたシェアハウス」坂田 綾子さん
別府市在住の坂田 綾子さんは、ご自身の経験からシングルマザー専用のシェアハウスをつくりたいと今回参加。さまざまな事情を抱えたシングルマザーの心身のケアを、一番の理解者であるシングルマザーが行う仕組みに加え、子どもたちの教育もみんなで行う取り組みです。
このプロジェクトを検討するにあたって坂田さんがシェアハウス事業を行う物件の当てがなく悩んでいたところ、地域のリノベーション会社で働いている城さんから、坂田さんが求める条件で物件紹介が。これによってプロジェクトがより具体化へと動き出しました。
こうした横のつながりが生まれていくのも、「空き家再生プロデューサー育成プログラム」の魅力。本プログラムの価値は受講して学びを得ることだけでなく、同じ志を持った仲間とのネットワーキングがとても重要だと考えています。空き家再生の相談ができるプロデューサーが地域にいることの重要性が改めてわかる出来事でした。
■「帰りたくなる場所」八重森 好和さん
またまた竹田市の地域おこし協力隊の八重森 好和さん。前職のつながりで竹田市を知って、気に入り移住され、竹田市を盛り上げるための活動をされています。竹田市にエスニック料理のお店が少ないということに着目し、さらにご自身の料理の腕前も存分に発揮して、地域の方の日常と訪問者の非日常が交差するようなそんなレストランを目指します。参加型の仕掛けとしては地域のおもしろい人を店員さんとしておき、ローカルのおもしろさをどんどん発信していく、そんなプランを考えています。
■「余白に街の種をまく」 平野 俊幸さん
今回、一番遠くからいらっしゃった平野さん。なんと熊本県は阿蘇市からいらっしゃったそうで、しかもバイクでいらっしゃいました。素晴らしい、熱量です。普段は屋根屋さんとしてお仕事をされているそうですが、別府に移住してやりたいことがあるとのこと。それは空き倉庫や工場に小さなボックス小屋を建てて、そこをハブに小さな商いやコミュニティが生まれていく場づくりです。小屋もスクラップアンドビルドで自由に入居者が変えていくそんなイメージ。言うなればみんなの夢のアトリエのような場です。とても実現が楽しみですね。
■「空き家写真展 in 別府」 城 尚志さん
特に印象に残っているのが、大分市のリノベーション会社を営む城 尚志さんの発表でした。写真家さんと組んで空き家の写真展を、空き家を借りて行うという取り組みの発表が大変興味深かったです。「マネタイズが問題なんです」とご本人も話されていましたが、実際に空き家の歴史や想いやストーリーがとてもよく伝わるメディアになり、空き家の価値が見直されるきっかけとなるのではと思います。さらに全国的に展開されている空き家バンクの取り組みと連携させることで、空き家再生のきっかけ提供に大きな寄与をするのではないかと考え、これからの進展が楽しみなプロジェクトです。
多様で頼もしいまちづくりのアプローチ
多種多様なみなさんの発表を通して見えてきたのは多様で頼もしいまちづくりのカタチでした。多様なバックグラウンドから発生する多様な想い。そして、「地域を盛り上げる」という軸で多様なアプローチの仕方で発表されていて、聞きながらとても頼もしく感じました。今後、今回のプログラムを機に互いに繋がり合い、ときには共創しながら別府・大分エリアの活性化が行われるよう、自分もサポートしていきたいと強く感じた2日間でした。発表を一緒に聞いてくださっていた、別府市役所の建築指導課 渡辺さん平田さんからも前向きにアドバイスや賛同のご意見をいただき、行政とも一緒になって進めて行けたらと考えています。
皆さんの発表に対して、他の発表者の方や別府市役所の皆さんと我々も含めて付箋にコメントを書いてフィードバックをしました。最後はホワイトボードに貼って全員で記念撮影。
とても満足そうな表情のみなさん。今回の機会をきっかけにこれからも引き続きコミュニケーションをさせていただき、各プロジェクトを応援していけたらと考えています。
今後のみなさんのアクションをどうぞお楽しみに。