ESG投資とは(1) ESGを意識した不動産投資の解説と始め方

投資に対する世間の意識が高まるにつれ、「ESG投資」という言葉をよく目にします。さらに近年では、不動産投資においてもESGを意識した投資を行う機運が高まっています。本記事では、持続可能な社会の実現に向けた不動産におけるESG投資の内容や関係性について見ていきます。

1. ESG投資とは? 簡単に紹介

ESG投資とは、組織のESGへの取り組みを評価し、投資対象を決定する投資活動のことです。もともとESG投資は海外で活発化していますが、近年日本でも関心が集まっています。ESGとはEnvironment(環境)とSocial(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったものです。
投資家が企業の株式などに投資する際、従来はキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報を用いて、投資先企業の価値を測定していました。これに加えて、非財務情報であるESG要素を加味した投資を行うのが「ESG投資」です。
経済が発展を続ける一方で、経済格差の拡大は明らかであり、気候変動などの環境問題、サプライチェーンにおける労働問題などの社会問題、企業の不祥事などコーポレートガバナンスの問題が顕在化してきています。
こうした問題は、社会経済の持続可能性を損なう可能性があり、環境、社会、ガバナンスの視点を投資判断に取り入れることで、長期的なリターンの向上が期待できるのがESG投資になります。

2. ESGを意識した不動産投資とは?

では、不動産投資はどのようにESGと向き合えばいいのでしょうか。見ていきましょう。

社会貢献性が求められる不動産投資

不動産投資は、中長期的な発展が求められる投資であるため、長期的なリターンが期待できるESGと相性が良い投資のひとつです。

不動産投資の収益源は、アパートやマンション、テナント、商業施設などからの賃料収入と、一定期間経過後の売却です。収益を得るためには、不動産を気候変動問題から守り、入居者に快適な空間を提供し、地域住民とより良い社会関係を築くことが必要です。

すなわち、不動産は物件そのもの(ハード)で価値を生み出すものではなく、物件が存在する地域環境や地域コミュニティとの関係性(ソフト)に資産価値が生まれるのです。

近年はESGを考慮し、入居者や物件オーナー、地域コミュニティ、さまざまなステークホルダーから共感を得ることで不動産価値を向上させ、リターンを獲得することができる不動産投資注目が集まっています。

不動産投資✕ESGの認知度

ESGを考慮した不動産投資はどの程度普及しているのでしょうか。

(出典)第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査~不動産のESG投資の認知度が向上~

投資用不動産を取り扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメントが、2022年に全国の不動産投資家400名を対象に行った「第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査」によると、ESGの認知度は前年の24.3%から30.5%に向上し、年々ESGの認知度が高まっていることが明らかになりました。

また、本調査では、不動産におけるESG投資の認知度に関わらず、投資先を判断する材料・要素としてESGの考慮が重要であると思うかどうかをたずねました。その結果、ESGという言葉になじみがなくても、環境や社会、ガバナンスへの配慮を投資判断の材料として重要視する不動産投資家が増えていることが確認されました。不動産投資家がESGを重要視する主な理由としては、以下の3点が挙げられています。

  1. 「中長期的な資産価値の維持に寄与すると思うため」
  2. 「賃料収入などリターンに好影響をもたらすと思うため」
  3. 「地域社会・経済への貢献」

3. 不動産投資✕ESGのはじめの一歩

ESGに配慮した不動産投資を始めたい場合、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれの特徴を確認してみましょう。

省エネ対策を施した施設運営


まず、省エネ対策を実施する方法です。近年注目されているグリーンビルディングは、不動産業界におけるESGを意識した取り組みの一つであり、多くの企業や物件オーナーが対応しています。

一例として、不動産テックIoTツールを活用し、照明や空調の省エネ、共用部の電力消費量削減を実現する商業施設の運営などが挙げられます。また、ESGはSDGs(持続可能な開発目標)とも密接に関係しており、環境に配慮した取り組みは、社会的プレゼンスを高めるきっかけになると考えられます

空き家活用による地方創生


空き家となったアパートやマンション、店舗などを再生・活用する投資手法は、地域の人口増加や雇用創出につながることから、有益なESG投資として各地で注目されています。

小口投資のクラウドファンディングを利用する


社会課題を解決するためのファンドにクラウドファンディングで投資することもESG投資のひとつです。インターネットを活用して小額からESG投資ができるため、幅広い投資家から注目されています。投資対象となるのは以下のような社会課題を内包している施設プロジェクトが中心です。

  • 待機児童問題
  • 空き家問題
  • 地球環境問題

4. ESGを意識した不動産クラウドファンディング事例

では、具体的に不動産クラウドファンディングのESG投資にはどのようなプロジェクトがあるのでしょうか。サービス事例を挙げて解説していきます。

● CREAL


CREALは、クリアル株式会社が運営している不動産クラウドファンディングです。2020年グッドデザイン賞を受賞しており、サービスが使いやすいのが特長です。CREALの一部プロジェクトでは社会課題化している待機児童問題の解消に寄与するために、クラウドファンディングで調達した資金で保育園等を新設しています。

「グローバルキッズ森下五丁目園」プロジェクト
こちらのプロジェクトの投資対象は、認可保育所の運営事業を行う、東証プライムの上場企業グループである株式会社グローバルキッズが運営する保育園です。クリアルが対象物件を購入して運用及び売却代金を基にして、投資家への配当および元本償還を行います。対象物件は江東区エリアに位置し、保育園の建設・運営は当該エリアにおける江東区の待機児童解消に寄与します。

● わかちあいファンド


わかちあいファンドは、株式会社日本プロパティシステムズが運営するサービスです。滋賀・京都で最初に不動産特定共同事業許可を受けた企業となります。社会課題化している地球環境問題の解消に寄与するため、対象物件から得る総賃料収入から必要経費や投資家への分配金を控除した残りのお金の一部を地方公共団体が運営する環境保護活動などに寄付しています。

「わかちあい大津日赤前ビル」プロジェクト
こちらのプロジェクトの投資対象は、鉄筋コンクリート造陸屋根3階建て6室のテナントビルです。インカムゲインを採用しており、対象物件の家賃収入やテナント料を投資家様に受け取っていただく毎月分配型のプロジェクトになっています。その後出資金を運用期間終了後に償還されます。対象物件は滋賀県大津市エリアに位置しており、生活に便利な大津市を代表する人口集積地にあります。

● FANTAS Funding


FANTAS Fundingは、FANTAS technology株式会社が運営するサービスです。ファンド運用実績が累計140件を超えており、新しく募集がかかったファンドも申し込みが殺到するほど注目が集まっています。FANTAS Fundingでは社会課題化している空き家問題の解消に寄与するため、クラウドファンディングで調達した資金で空き家となった住宅を引き取り、リフォーム・リノベーションすることで利用可能な状態へ再生しています。

「FANTAS repro PJ 第35号」プロジェクト
投資対象は日本が高度成長期に建てられた築48年になる量産住宅です。FANTAS technology株式会社が不動産を購入して運用及び売却代金を基にして、投資家への配当および元本償還を行います。対象物件は千葉県八千代市エリアに位置し、空き家再生によって当該エリアにおける空き家問題に寄与します。

ハロー! RENOVATION


私たちが運営する「ハロー! RENOVATION」は空き家再生を中心にまちづくりのための共感投資ができる不動産クラウドファンディングです。「みんなで一緒にまちづくりを!」を掲げ、イベントなどの参加機会から共感を集める参加型プロジェクトが特長で、ESG投資やSDGs投資に関心のある方にも注目されています。

●「鎌倉・旧村上邸再生利活用」ファンド
「ハロー! RENOVATION」が扱うプロジェクトのひとつとして、古民家を企業研修所と地域のコミュニティ拠点に生まれ変わらせた「鎌倉・旧村上邸再生利活用ファンド」があります。

経済、社会、環境、三つの視点で資金調達をはじめとしたさまざまな仕掛けをハロー! RENOVATIOが提供。耐震工事などリノベーション費用は投資ファンドで資金調達し、公的遊休不動産を再生しました。企業研修のほか、さまざまな市民のアクティビティを通じて、歴史・文化の大切さを知る機会を提供している参加型SDGsプロジェクトです。

日本では環境や社会、ガバナンスを重視したESG投資が年々拡大しています。今後、日本においてもESGを意識した不動産投資が重要な投資基準のひとつになることは間違いないでしょう。

ESG投資のひとつである「ハロー! RENOVATION」はまちづくりのための不動産クラウドファンディングであり、全国で増加し続ける空き家や遊休不動産を、想いのある投資によって再生することを目的としています。持続可能で豊かなまちづくりに貢献できるため、ESG投資に興味がある方は、ぜひ取り組み内容をチェックしてみてください。


【参考資料】
*1 第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査~不動産のESG投資の認知度が向上~

【関連記事】
ESG投資とは? メリットや銘柄の選び方、国内の動向
SDGsとESG投資の関係は? 社会貢献につながる投資先とは

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