ESG投資とは(2)メリットや銘柄の選び方、国内の動向

ESG投資は、近年国内外で広がりを見せています。従来の投資とは異なるというイメージはあるものの、具体的な内容についてはわかりにくいものです。そこで本記事では、ESG投資について解説するとともに、メリットやデメリットを紹介します。国内の動向やESG投資の始め方も説明するので、ぜひ参考にしてください。(最終更新日 : 2022年11月13日)

1. ESG投資とは? 簡単に紹介

ESG投資とは、組織が行っているESGの取り組みを評価したうえで、投資対象を決めて行う投資活動のことを指します。ESGとはEnvironment(環境)とSocial(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った言葉で、企業の経営はこれらの3つの観点を持って進めるべきだという考え方が世界中で支持されています。

ESG投資では、企業が環境、社会、ガバナンスに関する社会課題を解決するために取り組みを行うことに対する投資です。あくまで投資なので、寄付や援助とは大きく異なり、十分なリターンも追求されるのが特徴です。

地球温暖化をはじめとする気候変動などの環境問題は、社会に大きな影響を与えることが懸念されています。また、企業の社会的責任が追求され、労働環境の改善や多様性の実現など社会への影響を考えた活動が促されています。さらに、適切な情報発信をするなどして不祥事のない公正な企業運営を目指すガバナンスも、重要度が高まっているのです。

企業はESG投資の対象となれるだけでなく、社会課題の解決につながる商品やサービスの提供によって企業価値を向上させることができます。また、企業がESG投資の対象となるためにESG課題に取り組む活動を行った場合、環境や社会に関する問題が引き起こされるリスクの軽減が期待できます。

2. ESG投資に関心が集まる理由と日本の動向

ESG投資は海外で活発化していますが、近年では日本でも関心が集まっています。その理由や日本の動向について、詳しく見ていきましょう。

短期的な利益を追求する投資への反省

もともと投資活動では、利益率やキャッシュフローなど企業の財務指標が重視されてきました。そこからESGが重視されるようになったのは、短期的な利益を追求することが目的だった従来の投資への反省があるからです。

企業が短期的な利益を追求して環境問題を無視した経済活動を行うと、自然環境の破壊や気候変動の悪化など、環境に悪い影響を与えてしまう可能性があります。また、社会に対して影響力のある企業がダイバーシティやサプライチェーンといった社会問題の解決に取り組まなければ、問題の根本的な解決につながりません。そして、企業統治がきちんと行われないと、企業が不祥事を起こしてしまう可能性が高まります。

企業がESGに注目した取り組みを行わない場合のマイナスな影響は、長期的に経済社会の持続的な成長を阻害します。そのため、短期的な利益ではなく持続可能な経済を実現させるために必要な活動を促す投資に流れが変化しているのです。

国連が投資行動原則を提唱

ESG投資に関心が集まるようになった理由として、2006年に国連が「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」を公表したことも挙げられます。責任投資原則はPRIという略称で呼ばれており、機関投資家がESGに配慮した投資を行うように定められた世界規模のガイドラインです。

PRIに賛同し署名するということは、ESGの観点を重視している企業であると公的に宣言することです。そのため、PRIへの賛同は社会的評価の向上にもつながります。ESG課題を投資の意思決定プロセスに盛り込むよう決めたPRIに賛同する企業が増えることで、ESG投資が注目される流れが加速したといえるでしょう。

また、2015年には国連において、2030年までに貧困や気候変動など17の目標を達成することを目指したSDGsが採択され、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に総合的に取組むことが重要とされたのです。

年金運用機関がPRIに署名

世界の年金運用機関の多くがPRIに署名をしたことも、ESG投資に関心が集まる理由です。日本でも、2015年に日本最大のファンドである年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名し、2017年にESG投資で日本株式の運用が始まりました。

PRIへの署名は日本ではGPIFが初めてだったので、これをきっかけに日本でESG投資が浸透するようになったといわれています。実際、2021年時点で日本では92の機関がPRIに署名しています。長期的で安定した運用が原則とされている年金の運用会社がESG投資に賛同するのは、地球規模の課題解決をしなければならない現代では必然といえるでしょう。

日本政府も推奨

海外だけでなく、日本政府もESG投資に積極的な姿勢を示したことで、日本でもESG投資への関心が高まりました。日本政府がESG投資を推奨しているといえる根拠として、近年の出来事ではまず2020年に当時の菅首相が「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」と表明したことが挙げられます。

また、2021年には環境省と経済産業省が「サーキュラー・エコノミーにかかるサステナブル・ファイナンス促進のための展示・対話ガイダンス」を公表しました。これは、資源の循環を促す取り組みを進める企業が、投資家や金融機関から正しく評価を受けて投融資を呼び込めるように取りまとめたものです。

さらに国土交通省は今年、ESG不動産投資がもたらす中長期的な投資リターンや社会的インパクト、機関投資家が必要とするESG・SDGsに関する情報開示のあり方などを検討するために「ESG不動産投資のあり方検討会」を設置し、4回の検討会を実施。不動産分野にESG投資を呼び込むための80強の評価項目をまとめました。つまり、日本政府はESG投資を促進する姿勢であるとわかります。

3. ESG投資のメリット

ESG投資に興味がある場合は、まずメリットを知っておくのが良いでしょう。ここでは、ESG投資のメリットを二つ紹介します。

資産の長期運用に適している

ESG投資のメリットは、急成長している分野への株式投資などとは異なり、資産の長期運用に適していることです。近年では、安くて良い製品やサービスだけが求められるわけではなくなりました。社会課題の解決に取り組む企業へ投資することが評価されやすい傾向になってきたのです。

また、ESG投資によって経済全体のリスクを減らすと、持続可能な経済成長を促せるとともに金融市場の安定性が保たれます。その結果、長期的なリターンが期待されるのです。

持続可能な社会活動に貢献できる

持続可能な社会活動に貢献できることも、ESG投資を行うメリットのひとつです。ESG投資では社会・環境問題を解決しようとしている企業に投資をするので、企業の課題解決を支援できます。その結果、間接的に社会貢献ができるのです。

ひとつの企業を応援できるだけでなく、社会に蔓延る課題の解決に貢献できるため、社会的な意義が大きく満足感を得られるでしょう。

4. ESG投資のデメリット

ESG投資には大きなメリットがありますが、その一方でデメリットがあるのも事実です。ESG投資を始めたいと考えている人は、メリットとデメリットの両方を正しく知っておきましょう。

短期的にはリターンが低くなる可能性がある

ESG投資のメリットとして、資産の長期運用に適している点を挙げました。これは裏を返すと、短期的にはリターンが低くなる可能性を示しています。

ESGを重視した取り組みを進める企業は、短期的な収益だけを重視するのではなく、長期的な持続可能性を求める傾向にあります。ESG投資ではこれを評価しますが、環境問題や社会問題に対する取り組みは短期的に結果が出るものではないため、短期間での利益はあまり期待できません。ESG投資は、長期的な資産運用をするためのものだと覚えておきましょう。

グリーン・ウォッシュの見極めに手間がかかる

ESG投資のデメリットとして、グリーン・ウォッシュの見極めに手間がかかることも挙げられます。グリーン・ウォッシュとは、環境に優しいイメージを持たせる「グリーン」と、ごまかしという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語です。ESGに取り組んでいない企業が、取り組んでいるかのように見せかけることはグリーン・ウォッシュといえます。

適切に投資先を決めなければ、グリーン・ウォッシュの企業に投資してしまうことにもなりかねません。ただし、ESG投資ではIR情報や財務情報などさまざまな情報源から投資先を判断するのが大切であり、情報収集には専門的な知識を必要とするため、グリーン・ウォッシュの見極めには手間がかかってしまいます。

5. ESG投資の方法

ESG投資を始めようと思ったときは、主にこれから紹介する3種類の方法を選べます。それぞれの特徴を確認しましょう。

株式や債券に投資する

まず、ESG投資では株式や債券に投資する方法があります。FTSE Blossom Japan Indexは、ESGに優れている日本企業のパフォーマンスを反映するインデックスです。この構成銘柄に選定された企業は、ESG投資先として優秀といえるでしょう。

また、企業や地方自治体などがグリーンプロジェクトを行う際に必要な資金を調達するために、グリーンボンドと呼ばれる債券を発行することがあります。ほかにも、ソーシャルボンドやサステナビリティボンドなどがESG関連の債券なので、それらに投資すればESG投資を始めることが可能です。

投資信託やETFに投資する

自身で株式や債券に投資することも可能ですが、自分で銘柄を選定するのは難しく、知識や能力によって乖離が出てしまうのが難点です。そこで、投資信託やETFに投資する方法もあります。

投資信託やETFであれば、プロが銘柄を選んでくれます。投資比率まで選定してくれるので、手間を省けるのが魅力です。プロに依頼する分自身で銘柄を選ぶよりも費用がかかりますが、自分だけでESG投資を進めるのが不安な場合は利用してみましょう。

クラウドファンディングを利用する

社会課題の解決を試みているクラウドファンディングへの投資も、ESG投資のひとつです。クラウドファンディングを利用したESG投資では、社会インフラに投資でき安定したリターンを得られることから、投資家にも注目されています。

社会問題や環境問題の解決、地域開発などを目的としたクラウドファンディングの案件を支援すると、社会貢献につながるESG投資を行うことが可能です。

ESG投資は環境や社会、ガバナンスを重視した取り組みを行う企業に投資することで、近年では日本でも広がりを見せています。ESG投資を行う場合は、メリットとデメリットを両方理解したうえで適切な方法を選びましょう。

ESG投資のひとつとして、「ハロー! RENOVATION(ハロリノ)」があります。持続可能な地域社会づくりに貢献する不動産クラウドファンディングであり、全国で増加し続ける空き家や遊休不動産を、想いのある投資によって再生することを目的としています。持続可能で豊かなまちづくりに貢献できるため、ESG投資に興味がある人は一度取り組み内容を確認してみてはいかがでしょうか。


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