空き家バンクとは? 基本情報や自治体の最新動向を簡単に説明します

空き家の所有者と利用を希望する人を結ぶ「空き家・空き地バンク(空き家バンク)」。昨今は自治体や国任せではなく、事業者が主体的に空き家課題の解決に乗り出しています。各地の情報を集約した全国版空き家バンクや空き家の課題解決事例集、近年の自治体の取り組みについて紹介します。

1. 空き家・空き地バンクとは

「空き家・空き地バンク」は、地方自治体などが空き家や空き地の売却情報や賃貸情報をウェブサイトなどで提供し、移住希望者とマッチングを図る取り組みです。全国の約7割の自治体が設置済みといわれています。

一方で、空き家や空き地バンクを設置していない自治体向けには、先行自治体の取り組み例などを盛り込んだ「空き家・空き地バンクの設置・運営に関するポイント集」を策定し、空き家バンクの設置・運営を促進しています。*1

掲載された物件は、誰でも買ったり借りたりできるわけではありません。空き家バンク事業の目的を移住促進としている自治体は、県外市町村外からの利用に限定している場合があるので利用条件は各自治体に確認しましょう。

2. 各自治体の情報を集約した‟全国版“空き家・空き地バンク

「全国版空き家・空き地バンク」は、自治体ごとに設置された空き家バンクの情報を自治体横断で簡単に検索できるように構築されました。各自治体の空き家などの情報を標準化・集約化し、全国どこからでも簡単にアクセス、検索できます。

現在は公募で選定されたLIFULL HOME’S、アットホームの2事業者が運営しています。ただし、全国版への掲載には、利用者(売りたい方、貸したい方)の同意が別途必要になるため、物件の登録時に同意が得られていない物件は掲載されない可能性があります。また、各自治体の個別の判断で掲載されない可能性もあります。

3. 全国で実施された364の空き家の課題解決事例

各自治体や事業者が行う空き家課題の解決に向けた取り組みを横展開したくても、ノウハウなどの情報が集約されておらず、情報収集に時間や手間がかかることが少なくありません。そこで国土交通省はこうした取り組みを事例集としてまとめ、全国版空き家・空き地バンクを運営する上記2社に提供。これによりほかの自治体や事業者の取組事例を参考にしたい自治体・事業者は、2社のサイトを利用することで、簡単に取組事例を検索できるようになりました。各社とも「テーマ」「課題」「エリア」「取組み手法」など、項目や特色、課題ごとに整理して紹介しています。

*記事下で「空き家・空き地バンクに関する情報一覧」を掲載しています

4. 空き家・空き地バンクの最新動向

自治体では、物件情報の紹介だけでなく、遠隔での内覧サポートや多様な助成支援などさまざまな取り組みを展開し、人口減時代の移住に弾みを付けています。いくつか見ていきましょう。

(1)静岡県は広い空き家物件に特化した県版を10月に開設

静岡といえば、豊かな自然、そして富士山。県が今年10月に開設した県版空き家バンク「ふじのくに空き家バンク」では、「富士山が見える」「農地付き」物件が検索できます。

物件は、建物の延床面積120㎡以上の広い住宅または広い庭のある県内全域の空き家物件のみを掲載。購入時の不安払しょくするため専門家が無料で建物の状況を調査する「建物状況調査実施制度」を導入するほか、物件への移住にかかる移転費用は最大20万円まで助成する「移転費補助制度」も併せて展開し、移住促進に取り組みます。登録物件はまだまだ少ないものの、静岡らしい物件に出会える試みはユニーク。各制度には対象期間や上限があるので、詳細は問い合わせを。

ふじのくに空き家バンク
https://akiyashizuoka.com

(2)広島県全域で空き家バンク掲載物件をVR化

物件に興味のある人が手軽に室内を見られるようにするため、仮想現実(VR)の技術を活用して提供するバーチャル物件内覧サービス。今春、宮崎県木城町が空き家バンクの登録物件で同サービスを始めましたが、広島県では県全域を対象に開始し、順次VR化を進めています。都道府県として導入するのは全国初。県や市町の職員が360度カメラを使ってパノラマ写真を撮影し自らVRコンテンツを作成、入居を促します。

ひろしま空き家バンク みんと。
https://minto-hiroshima.jp

ひろしま空き家バンク みんと。
https://minto-hiroshima.jp

(3)三重県津市は契約仲介のつなぎもサポート

三重県津市は昨秋、市内の空き家の情報を集めたサイト「空き家情報バンク」をリニューアルし、物件情報は室内も360度のパノラマ写真で見られるように。また、交渉や契約の仲介は、三重県宅地建物取引業協会と全日本不動産協会三重県本部と協定を結び、手数料を支払うことで依頼が可能。リノベーション等補助金、家財道具処分補助金、利用物件改修費補助金、商店街等新店舗誘致奨励金など空き家活用における助成金も充実しています。

津市-空き家情報バンク https://www.info.city.tsu.mie.jp/www/akiya/index.html

(4)長崎と広島は物件の事前登録で、空き家化への心づもりを

2年前からは長崎県五島市が、今春には広島県安芸高田市が、現在居住する家屋のバンクへの事前登録を始めました。家の売買契約が決まることで独り暮らしをやめ、子ども世代と同居や老人ホームに入居する高齢者も増えてきているようです。

東京・多摩町では、0円空家バンク制度を開始

また、東京都西多摩郡奥多摩町の空き家バンクは今年4月、手放したい物件を登録する0円空家バンク制度を開始。一般向け、若者(子育て世代)用、0円空き家のジャンルで募集中の土地、建物が12月現在12件登録されています。

https://www.town.okutama.tokyo.jp/1/wakamonoteijusuishinka/seikatsu_kankyo/1/2/index.html

5. 空き家バンクをより実効性の高い制度とするために

国土交通省では、空き家対策に関する課題の解決、空き家等の流通・利活用の促進等を図るモデル的な取り組みを支援しています。エンジョイワークスは2018年以降、国土交通省の空き家活用等に関するモデル事業に毎年採択されており、今年度は次の三つの事業が「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」に採択されました。*2

長野県須坂市、愛知県蒲郡市、群馬県みなかみ町との協業
(部門1 / 専門家等と連携した空き家に関する相談窓口の整備等を行う事業として)
地域のステークホルダーと連携した空き家バンカー(空き家バンク運営の担い手)候補者の発掘、不動産取引に関する基礎的な知識や空き家バンク掲載候補物件の取材・発信方法に関する研修、空き家情報の発信等を行う。

・沖縄県、奈良県との協業
(部門2 / 住宅市場を活用した空き家に係る課題の解決を行う事業として)
出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益の分配を事業として行う不動産特定共同事業者を対象としたプラットフォーム機能の構築、全国の不動産事業者のネットワーク化、ファンド組成の支援等を行う。

・三重県南伊勢町との協業
(部門3 / ポスト・コロナ時代を見据えて顕在化した新たなニーズに対応した総合的・特徴的な取組を行う事業として)
空き家バンクと連携した空き家情報Webサイトの構築、遠隔地から不動産仲介業務をサポートする体制の構築、不動産取引に関する基礎知識を学ぶ研修会の実施等を行う。

地域の過疎化とともに深刻さが増す空き家問題は対策が急務です。コロナ禍でテレワークが進み、移住や二地域居住への関心の高まるなかで、空き家バンクをより実効性の高い制度とするためには「マッチングの前と後」に関わる人材育成が求められます。エンジョイワークスは地元の民間事業者や自治体と協業し、自治体側が過度な財源導入をせずに地域のさまざまな課題解決が可能になる仕組みづくりに取り組んでいます。

関連記事
三重県の自治体と考える「空き家×移住・人材育成プログラム」
https://hello-renovation.jp/topics/detail/9944


空き家・空き地バンクに関する情報一覧

国土交通省が構築・運営を支援する空き家・空き地バンクに関する情報を紹介します。

国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html

■全国版空き家・空き地バンク
・LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/akiyabank
・アットホーム https://www.akiya-athome.jp

◆公的不動産(PRE)情報公開サイト
・LIFULL HOME’S  https://www.homes.co.jp/akiyabank/pres/all/
・アットホーム https://www.akiya-athome.jp/contents/12

・公的不動産(PRE)ポータルサイト https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000102.html

◆国有財産売却情報サイト
・LIFULL HOME’S  https://www.homes.co.jp/akiyabank/pres/all/
・アットホーム https://kokuyuzaisan.akiya-athome.jp/contents/static
※LIFULL HOME’SはPREサイトで国有財産が検索可能となっています。

◆自治体運営空き家情報サイト
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/akiyabank_link.html

*1 報道発表ページ
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00037.html

*2 国土交通省 報道発表資料より
https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000154.html

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