【インタビュー】WOODPRO中本敬章さん、レインボー倉庫広島ヤスムラミチヨシさん(後編)みんなで考え、つくること、「廃材の森」から「空家の学校」まで

建設現場で使い終わった杉の足場板をリユースして販売等されている「WOODPRO」中本さん、2017年5月にはウッドプロのショップとカフェもある広島市西区商工センターに「レインボー倉庫広島」をオープンさせました。引き続きウッドプロ社長、中本敬章さんとレインボー倉庫広島の運営を担うヤスムラミチヨシさんにお話を伺いました。

【インタビュー】WOODPRO 中本敬章さん・レインボー倉庫広島ヤスムラミチヨシさん 前編 | 「杉」がある豊かな暮らし、そんな未来を目指して

<プロフィール>
中本敬章(なかもとひろあき)
株式会社WOODPRO代表取締役社長。杉足場板の伝道師。1958年広島生まれ。大学を卒業後、同族経営の建材メーカーに就職。営業・商品開発に携わる。1997年、父親が立ち上げたWOODPROに移籍するも、天災で経営危機に陥り、事業縮小を余儀なくされ、数年は事業の再構築に費やす。2000年よりネット通販店をオープンし各種オリジナル商品を展開、2011年より地元広島に実店舗「WOODPRO Shop & Cafe」、2015年にDIY専門店「WOODPRO BASE」をオープン。2017年地元クリエイターとつながる場として「レインボー倉庫広島」をオープン、新たな情報発信基地として連日賑わいをみせている。
「WOODPRO Shop & Café」: http://woodpro-shop.com/

ヤスムラミチヨシ
レインボー倉庫広島、etc.CARAVAN運営。1984年広島生まれ。高校時代から東京のファッション専門学校が企画するサマースクールに参加するなど、ファッションの夢を叶えるべく行動するも家庭の事情により進学を断念。その後、アパレル会社のグローバルワークに就職し、四国の各店と東京本社に勤務。東日本震災後、地元広島に帰郷し、現在グランピングの企画やシェアスペースの運営等を行っている。
「レインボー倉庫広島」: https://www.rainbowsoko-hiroshima.com/

ウッドプロベースは足場板だけでなく、各種部品や塗料も用意されている

-WOODPROのショップ運営に加えて、さらにレインボー倉庫広島を立ち上げた経緯を教えてください。

中本敬章さん(以下、中本):4年ほど前ですがショップの一部をイベントスペースとして使っていました。週末はマルシェを開催したりしていましたね。ヤスムラさんと会ったのもその頃からです。現在この場所は「WOODPRO BASE」という呼び名でDIY専門店として使っています。これは足場板の可能性をさらに広く世の中に提示するためには必要な動きでしたが、残念ながら人がつながる「場」がなくなっちゃったんですね。「レインボー倉庫広島」はこの「場」づくりを主眼に生まれました。

-単純にイベントスペースではなく「レインボー倉庫」にされたのは、なぜですか。

中本:世の中には、多様な場の展開バリエーションがありますが、レインボー倉庫はよりクリエイターに寄った場づくりをしている点が特徴です。使い方は借り手次第で自由で、ギャラリーからショップ、アトリエや工房、ある意味なんでもあり。結果クリエイターそれぞれの個性が空間に表現されます。仕事仲間でもある東京のレインボー倉庫に行ってみて、その可能性を肌で感じた上で、広島だったらもっと物理的にも内容的にもより広い展開ができるとも考えました。

オープンスペースはゆったり広々、イベントもしやすい

-ヤスムラさん、確かにレインボー倉庫広島は、ゆったりしている印象がありますね。

ヤスムラミチヨシさん(以下、ヤスムラ):そうですね、個々のスペースに加え、共用スペースはかなり広々と確保しています。イベントやワークショップはやりやすいと思います。足場板を敷き詰めた外部テラスもけっこう広くて、BBQをメンバーと行うなど「人とつながる場」という考え方は、常に意識しています。

-ヤスムラさんのこれまでの活動とも関係しているのでしょうか。

ヤスムラ:現在も「etc.CARAVAN」というグランピングの企画・運営事業を並行して行っています。それからウッドプロさんのイベント出展ブースのデザインにも携わらせていただいています。元々アパレル業界にいたところから「場」のデザインに興味を持ち、今の道に進んできているため、いわゆるインテリアや建築といった視点よりも、そこに関わる人がどうしたいかが大事という考え方があります。そういった点でレインボー倉庫広島は可能性のカタマリですね。

ヤスムラさんにレインボー倉庫広島をご案内いただく

-何かが生まれてきそうなワクワク感がありますね。

中本:ここの原動力はまさにそれです。実は「ものづくりは地方に限る」という考えは以前からありました。単純に広い場所で作業ができるということだけでなく、生活面でも同じコストで、クールでリッチな暮らしが可能になってきました。ここ数年で各種インフラが整ってきたことで、やっと機が熟した感があります。あとはクリエイターたちや彼らの活動に関心がある人々が集まれる場所、つながれる場所があれば、地方で彼らが精力的に暮らしていけるかたちができると考えました。

-確かにサービスのインフラ面は、ここ数年で整ってきましたね。

中本:面白いもので、インフラが整ったからこそ、逆に「めんどくさいこと」が楽しいという感覚も出てきました。「DIY」なんかも、まさにそれですね。なんでもグーグルで検索して、アマゾンで購入できる時代だからこそ、自分で素材を見極めて、つくる、ローテクが面白くなってきました。「2拠点居住」もそうです。移動することに別の意味が生まれました。自分たちの世代は簡単には変われませんが、次の世代は変わってきていますよ。

- 一見、相反する話のようで、連動していますね。

中本:価値観が多様化している中、どういった選択肢を示せるかが重要であると考えます。例えばウッドプロの家具で言えば、ちゃんと出来上がった家具、それから無塗装で自分好みにカスタマイズできるもの、そして素材として提供しDIYで作ってくださいというところまで選べる。単純に多くの商品バリエーションを用意しましたというのとは違いますし、DIYも可能になって、はじめてプロの実力も知れるわけです。

-レインボー倉庫広島も、同様の発想でしょうか。

中本:そうですね。一般の方々とクリエイター、両者をきっちり分けるわけではなく、つなげていく場になれば良いと考えています。そういう点で新たな取組みである「廃材の森」は、さらにウッドプロ本体との連携と言えそうですね。

「廃材の森」オープニングイベントの様子

-「廃材の森」ですか。どういった取組みか教えていただけますか。

ヤスムラ:はい。まずレインボー倉庫広島にて「廃材をおもしろく利用する会」というものを中本さんと立ち上げました。基本的にはフェイスブックグループで運用しながら、先日は「ステキSUGIコンテスト」という企画を行いました。足場板の廃材をリユースするアイデアとその作品を一般から応募いただくというもので、エントリーいただいた方には必要な材料をご提供し、さらに賞金も出ちゃいますという企画です。これら廃材利用の取組みを今後もしっかり継続し、さらにウッドプロさんと連携し、実働化させていくためにウッドプロさんの資材置き場の一画に廃材を結集し、より積極的にリユースを進めていく場「廃材の森」が生まれました。11月に行なったオープニングイベントはアウトレット品を含む廃材市や、各種ワークショップや屋台の出店、展望デッキやフェンスを足場板や廃材を使ってDIYするイベント、トークショー、そしてステキSUGIコンテストの受賞作品展示と、盛りだくさんの内容で、寒風吹きすさぶ中、多くの方が訪れていただきました。

中本:「ある工場の廃棄問題の話」になると突然他人事になってしまいますが、日本の杉をどう資源として活用したら良いだろうかと、そういった話に、常にみんなで考えてみようというスタンスが大事だと考えています。さらにそのための場を工場内に設けることで、うちの社員たちにも、考え方や一般の方とのコミュニケーションの仕方も含めて、しっかり伝えていきたいと考えています。

「廃材の森」DIYワークショップ、眺望最高のデッキができた

「ステキSUGIコンテスト」の受賞作品展示

-みんなで考え、つくっていく「共創」的なスタンスは「ハロー!RENOVATION」と共通するところですね。

ヤスムラ:同じ空き家をテーマにして、私たちも活動しています。「空家をおもしろくする会」と言って、同じくフェイスブックグループが運営の中心です。また「空家の学校」というシリーズで月に何度かイベントも開催しています。「空家の学校」」: https://www.facebook.com/AkiyaSchool/

「空家の学校」レインボー倉庫で行われたイベントの様子

-なぜ空き家をテーマにされたのですか。

ヤスムラ:それこそ「みんなの問題」であると感じたからなんですよ。まず私自身、祖父母の家が空き家になり、現在困っている状況です。当然、これまでの活動に紐付いて廃材を利用したり、DIYイベントを企画したりと、なんとか解決方法をこれから探っていこうと考えてはいるのですが、そもそも、これ特別自分にだけ降りかかってきた問題ではないなと感じたことがきっかけです。自分たち世代前後の多くの人たちが、将来にわたって、どこかで空家の問題を抱えこむ可能性はかなり高いはず。そのことをまず認識すること、そして学び、できればDIY等も実践してみる取組みとしてスタートしています。

-空き家は誰にとっても、むしろ身近なテーマ、ジブンゴトとして取り組める課題ということですね。今後は「ハロー!RENOVATION」との連携もぜひ、よろしくお願いします!本日はありがとうございました。

中本、ヤスムラ:ありがとうございました。

空き家は「みんなの問題」

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