【ハロリノ訪問記】鯖江市_2017
めがねのまち鯖江。日本製メガネフレームの約96%が作られていることで有名です。めがねの他にもたくさんの伝統工業があるまちなのですが、いち早くオープンデータの考え方を市政に取り入れたり、IT企業と市政の連携や、鯖江市役所JK課!、市民が参加して一緒に育ていくアプリの開発など、開かれた・ボトムアップ型のまちづくりを進めています。ハロー!RENOVATIONに通じるコンセプトを感じます。
果たして、まちの人はみんなメガネをかけているのか。ハロリノ隊はそんな妄想を持ちながら、鯖江市を訪問しました。
鯖江流、ボトムアップ型まちづくりを学ぶ旅スタート
お試しサテライトオフィス
福井県の真ん中くらいにある鯖江市には、羽田空港から小松空港まで1 時間、そこから特急で約50分。意外と東京から近いのです。ちなみに飛行機は離陸するとあっという間に着陸態勢に入ります。ITでまちづくりを推 進する鯖江市は総務省の「おためしサテライト事業」に採択されており、ハロリノ隊も今後の各地域での活動を視野に、サテライトオフィスをお借 りして鯖江に滞在しました。宿泊も含めて必要なものが揃っており、快適に仕事ができました。
鯖江の古民家カフェ & 教室 ラシーク
デスクワークは後回しにして、さっそく鯖江のまちを巡りました。鯖江 市役所さんサポートのもと、空き家をリノベーションしてカフェのオープンを目指されている、見延さんを訪問させていただきました。見延さんが借りた古民家は、築100年。鯖江市の中ではわりと新興住宅街となっているまちにあるようで、やや取り残されたような状況。なかなかアクセスも難しい場所にありましたが、見延さんが目指すのは地域の住民の集えるカフェ・子供と一緒に過ごせて学べる場所(2017/9/26にオープン)。鯖江出身の見延さんだからこその、選択と事業コンセプトなのだと感じました。
リノベーションの期間は、たった1ヶ月半。見延さんの活動に共感しているサポーターのみなさんや、鯖江市の協力でアジアの建築学生がデザイン・製作したファサードなど、たくさんの人との共創ですることで、実現にむけて意欲的に進められていました。やはり、まちづくりには中心になる人が欠かせないなと、鯖江に来ていきなり再認識させられました。
鯖江の古民家カフェ教室-ラシークFacebookページ
鯖江まちづくり仕掛け人・竹部美樹さん
Hana道場
次にお会いした方は、鯖江市役所の方ならどなたでもご存知なのかもしれないと思うくらい有名。竹部美樹さん / NPO法人エル・コミュニティ代表です。竹部さんを訪ねて、竹部さんの拠点となっている「Hana道場」を訪問しました。4才から74才まで通うというHana道場は、ITを学べる場であり、クリエイティブな活動を支える道具を借りられたりする場所。子供から大人までが同じ土俵で学ぶことで、世代間の交流が生まれる場にもなっています。道場は文化財の「旧鯖江地方織物検査所」をほぼそのまま使われていて、訪問した時もIchigoJamという1500円で購入できるプログラミング専用子供パソコンを使って、子供たちが一生懸命学んでいるのが印象的でした。
NPO法人エル・コミュニティ代表 竹部美穂さん
その竹部さんは、東京のIT企業で働いていたそうですが、そこでの刺激を故郷のまちに活かしたいと鯖江に戻られました。そして「市長をやりませんか?」という刺激的なキャッチフレーズのもと、商店街をはじめとする地域の方々・市役所とともに「鯖江市地域活性化プランコンテスト」を打ち出し、2017年で10回目という鯖江になくてはならないまちづくり施策の発展に貢献されています。後述の鯖江市役所JK課もこのプランコンテストで生まれた事業です。
竹部さんの事業を応援する企業も多数。竹部さんがとても行動力があり積極的な方であることがサポート理由の中心にあると思います。そして、鯖江のまちづくりを子供たち含めた市民が考えていく新しい仕組み・まち全体がアントレプレナーのようなイメージのボトムアップの仕組みが、様々な人を引きつけているのだと感じました。
NPO法人エル・コミュニティHP
Hana道場HP
デザインの力で地域に力を!新山直広さんの取り組み
TSUGI 新山さん
鯖江はめがねだけではなく、伝統的なものづくりが今も受け継がれています。そんな鯖江市の東側、中山間地域にある河和田地区は、特に越前漆器の職人さんが多いまち。自然環境も非常に豊かで、鯖江市の中でも独自のアイデンティティーがあります。
そのまちの発展にデザインで貢献されているTSUGIの新山直広さんにお会いして来ました。ガイアの夜明けに出演されたり、D&DEPARTMENTの企画展「NIPPONの47人 2017 これからの暮らしかた」に福井代表として選出されるなど大活躍されていて、訪問当時も「RENEW×大日本鯖江博覧会」という河田地区のビックイベントの準備でお忙しそうでしたが、とても気さくな素敵な方でした!
新山さんは京都精華大学の建築学科のご出身。京都精華大学からは、河和田町にある河和田アートキャンプ(学生が長期間滞在して創作活動を行いつつ、地域活動にも貢献するプログラム)に、たくさんの学生が参加していて、新山さんも学生の時に参加していたとのこと。その後、再度アートキャンプの運営にかかわることになったこと、人口減の中で新築の建築を創っていくよりもソフトを考えていくことが大事だと考えて、デザインしたコトづくりで、鯖江の魅力を伝えていくことに。
■TSUGI
http://tsugilab.c
鯖江出身ではない新山さんですが、河和田地区に腰を据えた理由のひとつが、まちを開拓可能だと感じたこと。たくさんの魅力が詰まっているのに、発信ができていないので、地域の魅力が伝わっていない。これをデザインで変えられると。さらに伝統工芸が半径10km以内に5つもあるポテンシャルや、今の時代河和田地区で仕事しても、東京や京都で仕事してもあまり変わらないことなど、学生時代から広い視野をお持ちでした。実際、TSUGIを結成・起業されてまだ5年くらいとのことですが、鯖江の中にあって、河和田地区が注目されていることでも、彼らの強い想いを感じました。新山さんもデザインという技術を用いて、地域の資源を掘り起こし、地域の職人さんやクリエイター、そして住民とともにボトムアップで鯖江のまちを活性化していっています。
TSUGI llc. HP
まちづくりのジブンゴト化。女子高生によるまちづくりとは
鯖江市役所
最後に、鯖江市役所も訪問してきました。どの部署に伺っても「竹部美樹さん(NPO法人エル・コミュニティ代表)のお知り合いですか?」と聞かれました!鯖江まちづくりのキーマンでいらっしゃることがよくわかります。2010年からデータシティ鯖江としてオープンデータを進めてきた鯖江市。他にもボトムアップにつながる施策・アイデアをいくつか紹介します。
鯖江市https://www.city.sabae.fukui.jp/index.html
鯖江市市民主役条例」市民が市政に主体的な参加を果たし、自分たちのまちは自分たちがつくるという市民主役のまちづくりを進めることを目的として、平成22年に制定された条例。ボトムアップ条例ともいうべき仕組みを、7年以上も前から鯖江市は取り組んでいます。具体的には鯖江市の事業をアウトソーシングするのですが、市民がその事業に対して提案をし、企画をし、運営発展させることができることが条件になっています。
「鯖江市役所JK課」市政に参加することが難しかった女子高校生がまちづくりの提案を行っています。図書館の空いている机をさがせるアプリの開発などで注目され、なんと総務大臣賞を受賞されています。
「学生が鯖江にまちづくりの提案を行う合宿」鯖江市に施策提案を行うフィールドワーク実習(提案型まちづくり活動)や、スポーツ・文化サークル等の合宿(合宿型まちづくり活動)、鯖江市を対象としたゼミ研究視察活動(ゼミ合宿・ゼミ視察活動)に対して、宿泊のサポートをしています。前述の河和田町アートキャンプや鯖江市地域活性化プランコンテストと連携して、学生の時から鯖江のまちづくりを考えることが、鯖江のファンを増やすことにつながっているように感じました。