まちなみから歴史をみつけた、たまよんプレオープンデー日記

重い障害があっても、地域で暮らし続けられるように。障害者の自立生活の試みが各地で広がる中、世田谷区玉川では緑豊かな庭を地域交流スペースにした重度障害者の住まいづくり「たまよんガーデン・コミュニティ・プロジェクト(たまよんプロジェクト)」が始まります。

重度障害者、特に医療的ケアを必要とする障害者は、家族のサポート力が失われると、遠く離れた場所で暮らさざるを得ません。それは地域のグループホームやセーフティネットとなってきた施設が制度的にもうつくられないことが影響しています。私たちは問題解決に向けて、まずは築60年の実家を障害者が自立して地域とつながりながら暮らし続けられる住まいとして再構築し、共感を広げながら周辺にも”住まい”を増やし、地域に根ざしたコミュニティを育てていこうとしています。

たまよんプロジェクトでは、現地見学会&交流のイベント「オープンデー」を不定期に開催していきます。今回はプレオープンデーとして、地域交流スペースである「たまよん」の現地見学と、玉川4丁目周辺のまちあるきを行いました。今回のテーマは「国分寺崖線」。

最初に向かったのが、徒歩5分の距離にある「旧小坂家住宅」。いまではその庭園が世田谷区の公園として登録されています。たまよん最寄りの裏門を入ると、植物が生い茂り湧き水が流れる、森のような傾斜地の庭園があらわれました。ここでは世田谷区の花・サギソウやカタクリが可憐な花を咲かせ春の新緑、秋の紅葉も楽しめます。そして回遊式庭園の小道を上っていくと立派なお屋敷が見えてきます。

自然と文化をまるごと感じる、別邸建築「旧小坂家住宅」

「旧小坂家住宅」は昭和12年実業家・政治家の小坂順造(1881年 – 1960年)の別邸として建てられたもので、現在は世田谷区に寄贈され、区の指定有形文化財となっています。
この地域は、豊かな自然がありながら都心から交通の便がよい絶好の立地とされ、明治〜昭和期に数多くの華族や政財界人の別邸(週末住宅)が数多く建築されていました。残念ながらそのほとんどが失われてしまい、現存するのがこの「旧小坂家住宅」のみ。庭園内にあった茶室は、戦時中大空襲の難を逃れたかの有名な日本画家の横山大観が一時期移り住んでいたこともあるそうです。

回遊式庭園。崖地の上から庭を見下ろす

当日の資料(制作:NPO法人せたがや水辺デザインネットワーク)

いまでは、区の財産として公開され、その恵まれた庭園環境、格調高い建築の室内空間などがコンサートやイベントの会場として利用されています。関心を寄せる市民からなる委員会によって定期的に開催しているのが、お茶やいけばな、ひな祭り、お月見など、四季を感じる日本ならではの催事です。いまでは「緑地」と呼ばれるようになったこの庭園で行われる自然観察会も人気です。草刈りなどの庭園の整備活動にも区に協力して地域の人たちが参加しているそうです。

立派なお屋敷の内部。当時の調度品の一部がそのまま展示されているなど、各部屋の中にも見どころがたくさん

瀬田四丁目旧小坂緑地
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/012/015/001/010/d00023421.html
〒158-0095 東京都世田谷区瀬田四丁目41-21
休園日:月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は次の平日)と年末年始(12月29日から1月3日)
開園時間:9:30~16:30

せたよんフィールドミュージアム

https://seta4.mizubedesign.org/?fbclid=IwAR0n2b091m3-fepmN8hrJPG0tNN1eIq40pRvQoCuDqxCKZRaVduVlHyPvtU

世田谷のみどりの生命線「国分寺崖線」をたどる

国分寺崖線をご存知でしょうか。多摩川が10万年以上かけて武蔵野台地を削り取ってできた地形で、立川市から大田区まで数十キロに及んで連なっています。特徴として、崖線沿いには湧水スポットが多く、豊かな水辺があること。まちを歩きながらよく観察してみると、単純に多摩川の支流だと思っていたせせらぎは、途中で崖線とつながっていたりしました。

(世田谷区webサイトより)
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/sumai/010/003/001/d00004905.html

まちあるきしたルートの中央に流れる丸子川が、崖線の端のライン

スケッチの中央にある旧岩崎邸(静嘉堂文庫)の緑地に接しているあたりでは、湧水が流れ込んでくる様子や、この環境に集まってきた野鳥たちの姿も見られます。ラッキーな日はカワセミも現れることがあるそうです。先に訪れた旧小坂邸も崖線の中にあり、湧水も流れていて、まさに崖線の自然そのままを生かした庭園になっていたのです。

かわべ農園さんの「みんなの畑」

たまよんの近く、かわべ農園さんの「みんなの畑」に立ち寄ると、とても立派に育った大根やねぎを分けてくださいました。周辺に暮らす子どもたちが農作業のお手伝いをするなど、地域の交流拠点にもなっています。

ここまで1時間ほどゆっくりとまちを歩いて、食事をとり、たまよんに戻ってきました。

みんなであつまるリビングで、これからのたまよんを語らう

まちあるきのあとは、「たまよん」で交流会を行いました。今回お越しいただいたのが、福祉、まちづくり、不動産の活用について関心がある方々と、速水さんの旧友でありNPOソラマ会員として活動に参加されてきた方々。あらためて「たまよん」の活動を紹介し、できたての建築模型も見てもらいながらプロジェクトの進捗について解説をしました。

すでに始まりつつある、地域の方々との活動サークルの紹介も行われました

今後「たまよん」は新しい施設として計画が進んでいきます。今回集まった和室と同じ位置に、コミュニティスペースができる予定です。開業後もこんな風にみなさんと集まれる場になるんだなと、イメージがふくらむ1日になりました。

これまでオフラインでの企画が開催できず、現地での企画は今回が初めて。このオープンデーを通じ、相手に現地の空気を体感してもらうことで初めて伝えられることの多さを強く感じました。これからもこの不定期開催のオープンデーを通じて、出会ったみなさんとの交流の場を継続していきます。


これまでの記事もお読みください

重い障害があっても地域で暮らし続けたい。多摩川とともに普通に暮らす、つながる、生きる、やさしいまちづくり(2021年11月14日)
https://hello-renovation.jp/topics/detail/12681

地域密着での重度障害者の住まいづくり。母親として、オープンに周囲を頼り共に考える(2021月12日1日)
https://hello-renovation.jp/topics/detail/12733

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