気づきの連続が氷見と出会わせた。おかあさんは、流しの公務員

こんにちは!ハロリノ編集部の牧です。

ハロリノにまた、新しくプロジェクトが生まれます。

富山県氷見市に「湊川(みなとがわ)」という小さな川があります。
この小川沿いに佇む、趣深い倉庫。その昔、藺製品用に使われていたこの倉庫を舞台にこのプロジェクトは始まっています。

プロジェクト名は、「藺製品倉庫をひらく」。

今回ご紹介する記事は、このプロジェクトのリーダー 林 美湖(はやし よしこ)さんが氷見と出会うまで。

いつも前向きで闊達にプロジェクトを進行されている林さんをみていると、ここから何が始まるのか、ここで何が生まれるのか。今から楽しみが止まりません。

初めまして。みこです。

美湖と書いてよしこと読むのですが、みこと呼ばれています。
新潟の佐渡で生まれ、大学進学で東京へ。そのまま30年暮らしていました。

商社で働き、いつかは海外駐在したいと思っていたのですが、結婚・出産を機に自分のキャリアを考え直すことになりました。学士入学で建築を学び直すことにしました。

育児をしながら学生をする。しかも提出課題が多い建築学科で!いま思えばなんて無謀なことをしたのだろうと思います。ですが、育児をしながらだからこそ気づけることがたくさんありました。歩道の段差がバギーを押すのにバリアになること。公園や道、まちってそもそも誰がどうやって作っているのだろう?多くの疑問。そんなことを考えるようになったのです。

自宅の近所には、当時珍しかった、住民参加でつくられた「世田谷区立ねこじゃらし公園」がありました。とても居心地の良い場所で、元々つくられた経緯は知らずにファンになっていたのですが、設計段階で参加していた住民の方がそのまま維持管理グループを結成・活動していることを知り、私も参加するようになりました。公園を住民グループで維持管理する。毎月ニュースレターを発行し、年に1度はバースデイのお祝いイベントをする。大変だけど楽しくやりがいがありました。これが自分の地域とつながるはじめの一歩でした。

所属していた大学の研究室では、毎年夏のゼミ合宿に富山県内を巡って、先生と地域の工務店の仕事に触れ、合掌集落、「おわら風の盆」で有名な八尾町など、地域性が高く、まちなみの優れた場所を訪れました。それがきっかけで、建物単体の設計ではなく面的なまちづくり・まちなみに関心を持つようになりました。自分が取り組みたいのはこれではないかと思いました。

卒業後は、大学院に在籍しながら、まちづくり系NPO法人で働きました。少人数のスタッフで多種類の業務をこなすNPO法人の仕事はとてもいい経験になりました。会計、広報をはじめ、地域にお住まいの方やお店の方を講師に迎えて学ぶ講座の企画・運営や、地域のシンボルツリーを伐採の危機から救う活動をしました。

建築行政の世界へ

建築の専門性からちょっと外れていたところに、知り合いに声をかけていただいて、建築行政の世界に入ります。
建築基準法に基づく確認申請の審査・指導という、とても難易度の高い仕事でしたが、住民の安心を建物の安全を通して守るんだという使命感で乗り切りました。その後、縁あって横浜で住民参加のまちづくりに関わることになりました。
鉄道事業者・沿線住民と一緒になって、行政の立場からまちづくりを進める、やりがいのある仕事でした。地域の市民グループが考えた企画を実現できるよう支援したり、一緒に駅前広場の活性化イベントを企画・運営したり、楽しくて仕方がありませんでした。

ただ、その頃、大都市の過密さや、リーマンショック後から続く余裕のない働き方から派生すると思われる社会の不寛容な雰囲気に疑問を感じるようになりました。佐渡に帰りたいなぁと思うなかで、学生時代に夏合宿で訪れていた富山県の氷見市にご縁をいただき、3年半ほど前に移住しました。世田谷区、横浜市、氷見市、ここまでくるともう「流しの公務員」です。

氷見市役所

なぜ氷見だったのか。

富山県氷見市は能登半島の付け根にある寒ブリで有名な町です。富山県のお魚は佐渡と同じく美味しいからいいな、とは思ったものの、氷見を訪れたことはまだありませんでした。訪れることになったきっかけは、氷見市役所の庁舎でした。県立高校の体育館2つをリノベーションしてできた開放的でおしゃれな庁舎を建築雑誌で見かけて、見学リストに入れていたところ、職員募集もしていると聞き、見に行こう!と娘を誘って出かけたのでした。

JR氷見線の終点、氷見駅を出ると黒瓦をのせたキャノピーが駅前広場に回っています。駅舎の隣には巨大ガラスが明るくてカッコイイ公衆トイレ。まちの玄関が綺麗なら良いまちに違いない。なにより、娘の第一声「おかあさん、空が広いよ!」そう、田舎育ちのわたしと違い、娘は東京生まれの東京育ち、この子のためにも移住がいいかもしれない、と思いました。

湊川 倉庫とツツジ

レンタサイクルを借りて当てずっぽうに走り出し、ぶつかったのが湊川。よし、河口に向かえば海に出るだろうと川沿いを走ってみると、なんて気持ちのいい空間だろう。すぐに河川敷に下りられるし、水面との距離が近い。大好きなオランダのデルフトみたいだ!この川に船を浮かべて遊びたい!と、すっかり湊川ファンになっていました。

いま思えば、この氷見湊川との出会いがこのプロジェクトの始まりでした。

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