ダウン症のある人と家族によるIKKAの社会交流プログラム「ダウンインターン」レポ。旧村上邸でできること
旧村上邸では一人ひとりの個性が活きる社会を目指し、ソーシャル・インクルージョンという切り口から持続可能な未来のためにできることを考えています。その一環として行っているのが、IKKAさんとの「ダウンインターン」活動です。ダウン症のある人たちとその家族への新しい支援のかたちを知ってください。
一般社団法人IKKA(イッカ)
ダウン症のある人たちの「強み」や「良さ」を活かし、彼・彼女ららしく輝いて活躍できる場を広げることを目的に、保護者が中心となって結成した団体です。ダウン症のある人とその家族を「まなぶ」「はたらく」「くらす」三つの事業でサポートしています。
Instagram/ @ikka_for_ds
Twitter/ @IKKA_DS
website/ https://peraichi.com/landing_pages/view/ikka4ds/
ダウン症のある人にも、社会と交わり
「働くこと」を体感する機会を
旧村上邸-鎌倉みらいラボ-運営担当の小林です。今回はIKKAさんと取り組んでいるダウンインターン(お仕事体験)についてお伝えします。IKKAさんはダウン症のある子の保護者が中心となって結成した団体。高校生以上のダウン症のある人を対象に、仕事を通じて社会と交わり「働くとは?」を体感する就労体験の機会をつくっています。
プログラムの会場となるのは、IKKAさんの理念に共感する企業の職場。安心して働くことができるよう、ダウン症児を育てた経験を持つジョブメイトがダウン症のある人と社会をつなぐ「架け橋」となってインターン活動をサポートします。
「ダウン症」という言葉は、テレビや雑誌、ネット等で耳にすることは多くなったと思います。全国各地での啓発活動も功を奏して、社会での認知は進みつつありますが、まだまだ活躍できる仕事先などは少ないそうです。
IKKAさんは、彼、彼女たちの「良さ」や「強み」を活かし、活躍できる場を広げながら、親も「ダウン症のある我が子を育ててきた経験」をキャリアする。そんな方法を考えていきたいという思いで活動されています。こうした現状も教えてもらいつつ、僕たちも旧村上邸を使ってなにかできることはないかと思い、2020年の夏にお仕事体験を行っていただくことからスタートしました。
当日は名刺交換からスタート
インターンの前にzoomでIKKAさんと打ち合わせを重ね、参加者同士でお互いのあだ名や好きなもの、得意なことの紹介などの自己紹介を行いました。お掃除が好き、嵐が好き、仮面ライダーが好き。好きなことや得意なことを語っているときのみんなの表情や仕草がイキイキとしていたのを見て、インターン当日も引き受ける側として、彼・彼女たちの個性をうまく汲み取ってあげられたらと感じました。
インターンは8月の暑い中、2回にわたり実施されました。初日は名刺交換からスタート。この日のためにつくってきてくれた名刺をいただきました。事前に練習したのかな? とても上手に交換できました。
インターン1回目は中のお掃除をメインに
施設内はとっても広く、お掃除する場所がいっぱい。能舞台磨きや、机拭き、カーペットの清掃、雨戸開けなどを手伝ってもらいました。また、室内だけでなく、門の前のお掃除も。掃除の仕方は特別支援学校で習っているそうで、日ごろ僕たちではなかなか行き届かないところも、とても丁寧に取り組んでくれました。ひかるちゃん、あいちゃん、ありがとう!
インターン2回目は、お庭の除草作業
インターン2回目は、ゆうきくんと一緒に外の除草作業を行いました。事前のZoomでの自己紹介で「仮面ライダーが好き」といっていたので、男子だしカッコいいものが好きなのかな?と思い、さまざまなアイテムを駆使しながら除草作業を行いました。除草グッズを持ってくるたびにキラキラした目でやってみたい!と言ってくれたので、一緒に使い方を教えながら除草作業を。
最初は手作業で抜いていましたが…… ゆうきくんの「やってみたい!」を大事に、草刈り機で刈っていくことに。 使い方を覚えたら一人でもできるようになり、汗をいっぱいかきながら頑張ってくれました。ゆうきくん、ありがとう!
インターンの活動を通じて、IKKAさんのミッションである「一人一人が持つ『花』をみつけて、咲かせる」に僕たちはとても共感しました。3人ともそれぞれ得意なことがまったく異なっていて、お願いする側がその一人ひとりの個性を少し汲むだけで一生懸命取り組み、頑張ってくれます。そして一緒の時間を過ごして感じたのは、3人とも周囲を笑顔にする力がすごくあるということ。ひかるちゃん、あいちゃん、ゆうきくん、そしてIKKAのみなさん、ありがとうございました!
ソーシャル・インクルージョン × 旧村上邸
こうして二日間のお試しインターンは無事終わり、同年11月からは月1回、いまは月2回に回数を増やして継続的に清掃活動をしています。仕事の楽しさや喜びを知ってもらえたことでインターンの参加者が少しずつ増え、多いときは10名が参加する日も! 旧村上邸にとってもふだん行き届かないところまできれいにしてくれるので、とても助かっています。
この写真はコロナ禍で約1年ぶりの実施となった昨年3月の様子。素敵な笑顔が撮れました。お仕事は、雨戸開けや能舞台のお掃除、チラシ折り、庭作業などなど。インターン受け入れ側の僕たちが、一人ひとりの良さをきちんと見てあげることで「仕事って楽しい!」と思ってもらえたら。そして、この取り組みが持続可能な活動として続いていくためにも、インターン以外でも連携して収益を上げられる仕組みを何とかつくれないだろうか。そんなことを考えながら、お互いが良いかたちでずっと続けていける方法を模索しています。
IKKAさんが団体を設立されて4年。昨年8月には中央ろうきん助成制度「カナエルチカラ2022」に選ばれるなど、徐々に広がりをみせるダウンインターン活動。助成金で作ったユニフォームを着てうれしそうにしているみんなの表情がとても印象的でした。最初に着用したのが、はじまりの場所である旧村上邸だと聞いて、僕らもうれしくなりました。
人はみんな個性があり、周囲の人や社会が協力し合うことで豊かな日々を送ることができます。旧村上邸ではソーシャル・インクルージョンという切り口から持続可能な未来のためにできることを考えています。IKKAさんはこのインターン活動を、仕事を介して社会と交流するプログラムととらえ、活動に賛同する協力企業を募集しています。ぜひ興味のある方は問い合わせしてみてください。
旧村上邸-鎌倉みらいラボ-について
旧村上邸は、明治末期に建てられた伝統的な様式の和風木造住宅です。昭和16年に村上さんの所有となった後、母屋の一部を改造したという能舞台の存在が最大の特徴です。敷地内には別棟の茶室もあり、能や謡曲の会、茶会などが行われてきました。西御門という地名の静かな谷戸に建ち、広い敷地、雰囲気ある竹垣や門などを持つ旧村上邸は、鎌倉の典型的なお屋敷として存在感があります。旧村上邸は、所有者であった村上さんのこの景色を残したいという思いから、平成28年に鎌倉市に寄贈されました。
歴史的、文化的にも貴重な建築物である旧村上邸を残していく必要がある一方で、歴史ある建物だからこその資金面や運用管理上の課題もありました。そこで鎌倉市は、旧村上邸の持続可能な活用のために公募型プロポーザルを実施し、エンジョイワークスを運営事業者として選定しました。私たちエンジョイワークスはみなさんとともに村上さんの思いを引き継ぎ、建物の外観や佇まいはそのままに、新しいひとのつながりを生む場として「企業の保養も兼ねた研修所」と「地域コミュニティ施設」へと機能をアップデートしました。本施設の運営はエンジョイワークスの子会社であるグッドネイバーズが担っています。
https://kamakura-mirai-lab.com/
ソーシャル・インクルージョンとは
ソーシャル・インクルージョンとは、「社会的包摂」とも訳され、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」ことを意味します。この考えは、持続可能な開発目標(SDGs)が大切にしている「誰一人取り残さない」という理念に通じています。また、この活動は、以下のSDGsゴール達成に貢献しています。