南伊勢での濃密な2日間で見えてきた、自治体共創型の空き家再生
こんにちは。ハロリノの濱口です。
空き家の再生利活用を継続的に進めていける人材を各地域で見い出し、またつながっていきたい、そういった思いで2018年の試行からスタートした取り組み「空き家再生プロデューサー育成プログラム」。今年からは自治体と共創して行っていくなど、より実践的プログラムに進化しています。
進化する「空き家再生プロデューサー育成プログラム」
これまでの育成プログラムには、すでに約600名の方に参加いただいており、「空き家再生」を実践している個人間のネットワーク化は育ちつつありますが、より地域に根付いたかたちで活躍できる人、空き家を継続的に再生させながら地域課題を解決できる人を育成するには、自治体と連携して行っていく仕組みが適切と考えています。
空き家再生プロデューサー育成プログラムの紹介サイト:
https://hello-renovation.jp/producer
2日間のコアプログラムをやってみた
この取り組みの先陣をきってくれたのが、三重県南伊勢町です。
伊勢志摩エリアならではの海と山が複雑に入り組んだ人口1万人程度のまちで、すでに移住定住コーディネーターとして活動されている西川さん、西岡さんのお二人がプロデューサー候補として主軸となり、育成プログラムの中核になっている現地開催の2日間プログラムを実施しましたので、その模様をお伝えします。
参加者はプロデューサー候補と地域で空き家を使って事業を行いたいプロジェクトリーダーの皆さんです。参加者集めの段階からプロデューサーが主体的に動きます。あくまで具体的な空き家再生プロジェクトを実践していくことが目的ですから、地域でさまざまな活動をされている方を中心にプロデューサー側からお声がけしました。その結果、地元青年団、地域おこし協力隊、若者チャレンジ応援事業者、地元の建設会社の代表などなど、実に多様でかつ強力なメンバーが集結しました。
自治体との連携で見えてきた可能性
今回、2チームに分かれ、町内2つのエリアでの展開を検討していくことにしました。各プロジェクトリーダーの皆さんが取り組まれたいことをエリア内の空き家を活用した事業として実装できるか考えていく視点に加え、プロデューサーとしては、それをさらにエリア全体で展開していく構想も組み立てていきます。
自己紹介の後は、2つのエリアを知るためのフィールドワークです。最初に訪ねたのが、現在DIY中の「移住お試し住宅」。海が目の前でBBQにはもってこいの広々とした庭のある平屋ですが、当初は鬱蒼(うっそう)とした草木に覆われ、家の姿が見えないほどだったそう。1チームはこのお試し住宅も仕組みに内包したプロジェクトをまとめていくことにしました。
こうした活動の起点になる場が一つあるかないかが、プロジェクトの進捗に大きく影響します。地域にまず一歩入り込むことができる、お試し住宅のような自治体の仕組みを起点に使う手法は、空き家を活用した移住関心層と地域とのタッチポイントづくりとして、汎用性が高いのではないかと考えます。
また、参加者の面でも同様です。地元の方々と、地域おこし協力隊や若者チャレンジ応援といった自治体の仕組みで、まちに新たに入ってきた方々とがミックスすることで、議論の中でも、お互いに気づきを共有できる瞬間が何度もありました。
例えば空き店舗が目立つ元商業エリア。地元の人も今ではほとんど行かない状況ですが、新たにまちに入って来た人であれば、国道沿いのエリアにはないヒューマンスケールの居心地の良さに気づくことができます。一方、そんな意見をもらった地元の人は、ここがかつてにぎやかだったころの風景を思い出し、参加者へ共有していく。そんなやりとりが、あるべき「まちの姿」を少しずつかたちづくっていきます。
今後の自治体連携を考える上でも、積極的に各自治体の取り組みを具体的な空き家再生プロジェクトやエリアの活性化ビジョンとのつなぎ役として意識することで、より地域にマッチした空き家再生によるまちづくりのかたちが見いだせるだろうと考えました。
特に「空き家バンク」とセットで考えていく視点は重要になりそうです。今回もプロデューサーが移住定住コーディネーターとして、空き家バンクとのマッチングをしているからこそ、さまざまな利活用可能な空き家候補を見学してから、講義&ワークを行うことができました。
「本当に一日中するんですね」
フィールドワーク後は、みっちりと講義とワークを積み重ねていきます。プロジェクトリーダーは、各自の事業をハロリノノート(ハロー! RENOVATIONで提供している無償の事業計画作成支援ツール)を使ってまとめていきます。プロデューサーと議論を深めつつ、作業も進める。時間はたっぷりあるようで、すぐに過ぎていきます。
1日目の終盤に差し掛かるところで「聞いてはいたけど、本当に1日中するんですね」と、ややお疲れ気味の感想。はい、皆さん、仕事を調整して参加しているくらいですから、密度の濃い2日間を目指しています。ただし講義内容は、1日中レクチャーを受けるといった受け身のものではなく、ディスカッションを重ね、自分の意見を出し、他の人の意見も一緒にまとめあげていく作業が中心。最終的には、普段の生活ではなかなか得られない、良い疲労感だったであろうことが、参加者の皆さんの笑顔から感じることができました。
共感してもらえるプロジェクトを目指すために
2日目も前半は講義から始まります。1日目に検討した事業計画を実現するため、例えば資金調達の選択肢など、さらに学びと検討を積み上げ、プロジェクトをブラッシュアップしていきます。後半はプロデューサーを中心に提案をまとめあげる作業を行い、いよいよ最後は「発表タイム」です。2チームの空き家活用とそれによるエリア全体の活性化についての具体的な事業計画(宿泊であれば1泊いくらなどまで)を、プロデューサーが中心になってプレゼンします。
ここでは事業の中身がしっかりと詰められているかよりも、学んだこと、検討したこと、議論したことを、どこまで他の人にも伝わるようにまとめられているかが重要になります。今後、多くの地域の方や、さらに関係人口といえるような人々をプロジェクトに巻き込んでいくとき、簡潔にコンセプトを伝え共感を得られるかがポイントになるためです。
発表後に、参加者同士で意見を出し合いディスカッションすることも大切な時間になります。相手チームの発表からの気づきが、自分たちチームの客観的な振り返りにも役立つことが多くあるためです。
発表された提案は「シャア・リング・河内」と「五ヶ所浦・うみべのいえ」。どんなプロジェクトかは、また後日公開しますので、お楽しみに。
そしてネクストアクションへ
発表タイムを締めくくるのは「ネクストアクション宣言」です。いかにおもしろいプロジェクトでも実行しなければ意味がありません。地域も巻き込んだ展開となれば、当然、一朝一夕には達成できません。まず明日からやれることは何か、また3カ月以内にやれることは何か、マイルストーンを定めることが大きな意味を持ちます。
今後の南伊勢町のネクストアクション、皆さんに参加していただける内容も予定していますので、今後のお知らせをぜひ楽しみにしてください。
※「空き家再生プロデューサー育成プログラム」は、国土交通省「令和2年度空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」に採択され実施しております。