ネコ好き専用シェアオフィス? 人と不動産の小上馬大作さんが考える、“人を輝かせる”不動産のつくり方

大阪空堀のまちづくり団体・からほり倶楽部の理事を務め、挑戦する若者のサポートなども行う小上馬大作さん。ふだんは不動産会社「人と不動産」の代表として、ユニークな空室対策事業を展開しています。会社のコンセプトは「“人”を中心に不動産を考える」。その取り組みと事業誕生の背景にある想いを聞きました。

不動産をオーナーの分身に。愛される不動産を生む工夫

「空室の再生方法を考えるうえで大事にしているのは、人にフォーカスするということ。不動産を大家(所有者)さんの分身化することが大事だと感じています」と、大家さんの好きなことや人柄、性格を物件の活用アイデアに取り入れる小上馬さん。

この10月にオープンする動物と共生する複合型オフィス「網島サンク( https://www.hitotofudosan.com/amijimasanq )」は、動物好きのビルオーナーに提案して実現したもの。オーナー自身も楽しみながらアイデアを出すようになり、施設内には猫好き専用のシェアオフィススペースを併設。“ペットと人が共存できるオフィス”に生まれ変わりました。

見学会情報はこちら https://www.hitotofudosan.com/post/amijimasanqtourevent

網島サンクも「大家さん自身が不動産に愛情をもってもらいたい」という思いから考えた、大家さんに賃貸経営だけでなく不動産運営に参加してもらうための仕掛けです。

「デザインや空間づくりも大事。でもオーナーさんの分身になれば、子どものように愛情をこめて不動産を大事にしてくれるようになる」。大家さんと不動産にかかわる人に顔の見える機会を必ずつくるようにしています。

賃貸でも、入居者の個性があふれるオンリーワンをつくる

2019年に始めたのが、「自分好み賃貸」事業です。空室の多いマンションの全空室を一気にリノベーションするのではなく、一部屋ごと入居申し込みを受け付けて、都度入居者に合った間取りにリノベーションする方法を考え、これまで10室以上の部屋を改装しました。

「空室全部を一気にリノベーションすることでスケールメリットが生まれますが、入居者が決まるまで投資回収は見込めません。費用面での大家さんの不安を解消しようと提案しました」

借り手にも大きなメリットがあります。それは賃貸でありながら入居予定者の希望に合わせて部屋を改装できること。入居申込が入る度、入居希望者、大家さん、設計士、大工さん、仲介会社を含めて内装の打ち合わせを行います。入居希望者へのヒアリングでは「どんな間取りにしたいか」という画一的な質問ではなく、趣味や休日の過ごし方など、その人の人となりを丁寧に理解していきます。

大阪府豊中の神吉マンションプロジェクト( https://kankimansion.studio.site/ )では、築51年の3階建てマンションが間取りやDIYを自由に考えられる“自分好みDIY賃貸住宅”に。第1号の部屋は、入居者が大切にしている自転車やスニーカーが映える内装や間取りにこだわり、いまも問い合わせの多い人気物件に。
「改装工事をする際は、工程の一部をワークショップ形式のイベントにして、多くの人がかかわり合う流れをつくるようにしています」。業務量が増えても時間と手間をいとわず、一人ひとりときちんと向き合うこと。このスタンスがブレることはありません。

一般的に世の中のマンションの内装は、ターゲットのうち80%の人が、80%好む空間をつくっているそうです。小上馬さんいわく「80%と聞くと良く聞こえるかもしれませんが、80%の人が80%『いいな』と思う部屋なので、80%×80%=64%の満足しか得られない部屋づくりになっています」。

それでも空室は「一人が100%好きになってくれれば必ず埋まる」といいます。オンリーワンのものを売っていかなければいけない時代に大切なのは、大勢にとっての64%ではなく、1人の100%」。唯一無二のユニークな物件を手掛けてきた背景には、そんな思いが込められています。

“大阪最狭”という、約1㎡の空間を活用した路地の中のレンタルスペース「ツカサのコバコ」も手がけるなど、小上馬さんのプロジェクトは多種多様。その理由は新規に立ち上げるたび、設計士から職人さんまでコンセプトに合うフリーランスの方を都度お声がけしているからだそう。小上馬さんの取り組みに興味のある人はぜひ声がけを。

「自分の取り組みに共感してくださる方がいるなら視察や共同企画などでぜひご一緒したいですね。借り手の“100%の満足”を求めて行動する不動産会社が世の中に一人でも二人でも増えていくとより多くの空室が埋まり、僕の手の届かない大家さんが助かります。空室や空き家など価値を見い出されなくなった物件をまた借りてもらえるようスキームづくりに挑戦し続けたいです」

「やりたいことがあるならやった方がいい」と若者をサポート

まちづくりに興味を持つ若い人の中には、柔軟な発想でまちの魅力も高めようという小上馬さんの姿に憧れる人がたくさんいます。

「何を始めるにしてもハードルは常にあります。ハードルはジャンプしないと越えられません。自分もここまで何度も越えてきて、手を差し伸べてくれる人は必ずいると感じるようになりました。やりたいことがある人はやらないと、人生を無駄にしちゃう。失敗を恐れて何もしないよりも、いま何かをやってみて失敗した方がいい」

こうしたエールを送る背景には、自身も若いころに悩んでいた時間が長かった経験があるといいます。周囲からの後押しも受けながら起業したとき、「もっと早くやればよかった」と思ったそうです。

そんな小上馬さんには大切にしている言葉があります。それは起業したときにお父さんからいわれたことでした。

「事業とは、自分のためにあるものじゃなくて、人のためにあるもの。その人にメリットがあるものが事業で、そのメリットの一部を自分の会社の利益として一部もらうもの。自分のための事業をつくったら、誰もその事業には賛同しない」。すでに決めていた社名にも、自分の考え方にもぴったり合う言葉で、いまも決断に迷ったときは思い出すそうです。

今年、空堀で始まった空室再生プロジェクトのリーダー、松下美沙子さんも、小上馬さんの取り組みを近くで学んだ一人です。誰もが気軽に絵を楽しめる「ペイント・ラウンジ」という場をつくるため、ハロリノでプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングを活用しながら仲間と資金を集めました。

「これまでもビル空室活用に向けて、企画や図面の見方などをアドバイスしながら一緒に取り組んできましたが、ペイント・ラウンジは彼女自身が実現したもの。その成長ぶりには驚きましたね。空堀はもともとクリエイターやアーティストや芸能活動をしている人が多く、芸術との親和性があるまちです。日本は芸術に携わるきっかけが海外に比べて少ない。ペイント・ラウンジが、芸術が好きな人はもちろん、芸術が苦手な人も集まる場になってほしい」

志をともにする次世代のサポートにも熱心に取り組む小上馬さん。「やりたいことがあるけど何から始めたらいいか分からない人や、何かしたいけど何をしたいのか分からない人も、相談してくれたら一緒に考えますよ」。工夫と試行錯誤を重ねながら人を巻き込み、人を中心とした不動産やまちづくりの在り方を模索し続けます。

プロフィール

株式会社人と不動産 代表 小上馬大作 さん
“不動産と人に関わる業務であれば基本的に何でもやる”をモットーに、物件仲介をはじめ、空き家対策や開業のコンサルティング、店舗や販促物のデザインなど幅広く事業を展開する不動産会社を運営。
https://www.hitotofudosan.com/

人と不動産SNS
Facebook https://www.facebook.com/hitotofudosan/
Instagram https://www.instagram.com/hitoto_fudosan/
小上馬 大作さんのFacebookアカウン https://www.facebook.com/daisaku.kojoma

「ペイント・ラウンジ」の詳細はこちら
■絵を描く機会を身近に!大阪レトロなまちから始まる、ペイント・ラウンジ
https://hello-renovation.jp/renovations/10276

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