MONZENの2階に広がる、アーティストwackの世界観【古民家リノベーション事例】

昨年、ファンド運営を開始した大阪府藤井寺市のMONZENプロジェクト。道明寺天満宮前の古民家をリノベーションしてつくった地域交流拠点「MONZEN」の天井にはいま青空が広がっています。 手掛けたのは、土師ノ里のアーティストランアパートメント「マンションみどり」運営管理人でもある作家、wackさん。ブルーラインの重なりが表現するものとは。MONZENプロジェクトのサポートメンバーが手掛けるウェブメディア「ところと、」の記事を紹介します。

<wack さん プロフィール>
1998年京都府生まれ。作家
大阪藤井寺市のアーティストランアパートメント「マンションみどり」に住みながら管理、展示企画をしている。現在、空と絵画の平面性を重ねた制作をしている。

古民家の天井に空を描くとは?

MONZENの2階シェアスペースには、天井一面に青空のようなペイントが描かれている。 土師ノ里のアーティストランアパートメント「マンションみどり」運営管理人でもある作家、wackによる作品である。

MONZENはいわゆる古民家の建築様式で、二階というよりは屋根裏を物置や住居に使っていた(厨子2階とも呼ばれる)ため、天井が低い。

「今後シェアスペースとしても使われる現代の厨子2階として、天井が低いイメージを解消し、居心地の良い空間を描けたら」とwackはいう。

空は、そもそもwackの作品モチーフのひとつでもあり、その多様で繊細なブルースケールの重なりによって、眼前の平面と永遠の奥行きという距離感の曖昧さを見るものに感じさせる。言い換えると、「距離感がバグる快感」が、空にはあるのだ。

「距離感を消す」、「天井の存在感を消す」と本人が語る通り、wackの空というモチーフと、MONZENの2階スペースのイメージが合致し、「描く作業というより、むしろ消す作業であると気づいた」時に制作の目的がはっきり見えた、という。

ブルーラインの重なりに、MONZENのにぎわいを繋いでいく

この作品にはもうひとつ特徴があり、一面に描かれたブルーは何本ものライン(path)によって構成されている。それが空ともうひとつの意味、path=往来、なのである。

MONZENの立地は文字通り道明寺天満宮の門前であり、古くから多くの参拝客で通りがにぎわい、京都から高野山を結ぶ東高野街道はいうまでもなく交通の幹線でもあった。

天井にペイントされた多層なブルーのラインの重なりは、この地に無数に交錯してきた人々の足どりであり、営みの軌跡でもある。wackは、「たとえばここに重ねて、いろんな人に線を描いてもらい、その線がここMONZENに収束するような。そんなペイントのワークショップを行ってもいいかなと思っています」とのこと。

この作品は、まだ未完なのだ。現状はあくまでもMONZENの「イマココ」であり、今後もこの地にさまざまな人の交わりがあり、ヒトやモノが行き交う場所としてにぎわいが増すにつれて、ブルーラインが重層に描き足され、作品の奥行きもさらに深まるだろうか、と期待させる空間となっている。

MONZENを訪れた際は、ぜひご覧いただきたい。

この記事はウェブメディア「ところと、」の転載許諾を受けています。元記事はこちら
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