ハロー! RENOVATION

まちの不動産会社が住民と取り組んだSDGs事例。投資型ファンドで持続可能性を高めた古民家を、地域に開く

ハロリノ編集部

みんなの思いある投資とプロジェクトへの参加によって、新しい役割を担うこととなった各地の遊休不動産。本連載では、新しいコンセプトで再生された空き家などの建物がどのように使われているのかをお伝えしていきます。第1回は、鎌倉市景観重要建築物の古民家を再生した「旧村上邸-鎌倉みらいラボ-」。「社会」「環境」「経済」の三側面を循環させる「SDGsのショーケース」となることを目指し、企業研修所や地域活動拠点として新しいスタートを切って約3年。利用者にどういった学びの時間が生まれているのでしょうか。

今回紹介する「旧村上邸-鎌倉みらいラボ-」は、明治末期に建てられた伝統的な様式の和風木造住宅。1941年に村上梅子さんの所有となったあとに母屋の一部を改造したという能舞台の存在が最大の特徴です。敷地内には別棟の茶室もあり、能や謡曲の会、茶会などが行われてきました。広い敷地、雰囲気ある竹垣や門などを持つ鎌倉の典型的なお屋敷の景色を残したいという梅子さんの思いを引き継ぎ、2016年に鎌倉市に寄贈されました。

旧村上邸には、歴史的、文化的にも貴重な建築物を残していく必要がある一方、歴史ある建物だからこその資金面や運用管理上の課題もありました。そこで市は持続可能な活用のために公募型プロポーザルを実施し、ハロリノの運営元であるエンジョイワークスを運営事業者として選定。ハロリノは地域のみなさんや鎌倉が好きな市外の人たちとともに、建物の外観や佇まいはそのままに新しいひとのつながりを生む場として「企業の保養も兼ねた研修所」と「地域コミュニティ施設」、そして「伝統と文化を継承する場」へと機能をアップデートしました。

たくさんの人たちに支えられて進化した旧村上邸はいま、どういった活動に活用されているのでしょうか。この一年を振り返っても、さまざまな利用がありました。

・企業研修・オフサイトミーティング
・近隣自治会の催し
・瞑想会
・能の謡曲の会
・SDGsに関するイベントなど、 イベントスペースとしての利用

旧村上邸のウェブサイトでは、みなさんに取材協力いただき、旧村上邸の具体的な利用内容をレポートしています。この記事では、そこからSDGs(*1)をテーマにした活動をピックアップして紹介します。

“環境負荷のない研修”にとことんこだわった、環境分析の「オオスミ」

オオスミ https://www.o-smi.co.jp

オオスミさんは、1968年の設立以来、環境分析から環境調査・測定、環境コンサルティング分野で培ってきた技術を駆使し、環境の修復や対策を事業者に提案する環境分析の専門会社。昨年4月、旧村上邸を拠点に「五感を使って『環境』を全身で感じる一日を過ごす」をテーマに、鎌倉のリソースを活かした新入社員研修を実施しました。

当日は、エクストリーム出社(早朝から観光、海水浴、登山などのアクティビティをこなしつつ定時出社すること)から始めて、この日のためにオーダーしたパタゴニア別注Tシャツをみんなで着用して由比ガ浜海岸集合しました。ビーチクリーン活動のあとには、パタゴニア鎌倉店の視察へ。お昼に旧村上邸でヴィーガンメニューのお弁当をいただいたあと、鎌倉市で活躍する二人の専門家を講師に迎えた研修で、コミュニケーションとマーケティングについて学びました。地球環境に配慮してゴミを極力出さないようにするなど、こだわり抜かれた「環境負荷のない研修」の全貌は旧村上邸のブログで!

鎌倉ならではのSDGs体験型ワーケーションを。アパレル「プチバトージャパン」

プチバトージャパン https://www.petit-bateau.co.jp/shop/pages/brand_engagements05.aspx

アパレル企業のプチバトージャパンさんは、ブランドのミッションである「子どもたちと自然をつなぐ」を実践していくため、まずは社員のみなさんが環境活動をし、身をもって学び、体験していく一日にしたいとご相談いただきました。そこで6月8日の世界海洋デーに合わせ、世界中で海の豊かさを守るために海洋汚染問題を考え、地球環境「DURABILITE」をテーマにSDGsを体感できる研修内容を提案したのです。

当日は由比ヶ浜海岸に集合してビーチクリーン活動からスタート。砂浜で体を動かしたあとは旧村上邸に移動して能舞台で研修の趣旨を確認するガイダンスを行いました。そのあとはお楽しみのランチタイム。Café&Meal MUJI 鎌倉の「地球にやさしいおべんとう」を縁側で広げ、お庭を眺めながらいただくのも好評でした。

続いて午後はアクティビティの時間。鎌倉には研修の一環で体験できるような企業向けアクティビティを提供する講師の方がたくさんいらっしゃいます。今回体験するのは「カードゲーム2030SDGs」と「ゴングメディテーション」。

旧村上邸ブログ「鎌倉ならではのSDGs体験型ワーケーションとは」より

カードゲーム「2030SDGs」はSDGsの17の目標を達成するために、現在から2030年までの道のりを体験するゲームで、すでに世界中で約5万人がプレイしており、2018年にはニューヨーク国連本部でも実施されて話題になりました。この日は参加者40名がラウンジスペースと会議室の2部屋に分かれて実施しました。普段顔を合わせる機会の少ない他部署同士の組み合わせで2人1組に。チームビルディングも兼ねて協力し合い楽しみながらSDGsの本質を理解できるよい機会となったようです。

そして後半のアクティビティは、能舞台でのゴングメディテーション。これは「Gong(ゴング)」という楽器を使った瞑想のことで、音に心身を委ねるだけで深い瞑想状態に導いてくれるものです。普段は仕事に追われてゆっくり内省したり考えたりする時間を持てない方におすすめのアクティビティで、今回は1時間の体験プログラムを実施しました。

地元企業「カヤック」のちいき資本主義事業部キックオフに

カヤック https://www.kayac.com/service/rc

そして、最後にご紹介するのは、地元鎌倉に本社を置くカヤックのみなさん。旧村上邸の運営が始まって1年が経ったころ、旧村上邸を次の世代に残していくには地元の方々の協力が欠かせないと感じました。そんななか、カヤックさんが新たに立ち上げた「ちいき資本主義事業部」のキックオフミーティングの場としてご利用いただきました!

旧村上邸のブログ「地元、鎌倉の企業カヤックさんにご利用いただきました!」より

今回のミーティングは社内の地域関連事業部門とカヤックLiving、QWANで発足した部の個性あふれるメンバーをお互いに知るために企画されたそう。環境資源の限界、少子高齢化による過疎、事業承継などさまざまな地域課題に対してカヤックのもつクリエイティブ力と鎌倉で実践してきたコミュニティづくりの経験から、地域に関わる人たちがまちづくりをジブンゴト化できるようサポートしていきます。

お昼の休憩時には能舞台の縁側で並んで食事をし、距離を縮めていきます。みなさんの笑い声が聞こえてきて、とてもいい雰囲気。最後はみなさん集合して能舞台で記念撮影も。

鎌倉と企業をつなぐ役割も担っていきたい

鎌倉市は、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」であるSDGsの達成に向けて優れた取り組みを提案する都市として、国から「SDGs未来都市」(*2)に選定されました。「SDGs未来都市かまくら」の中で、旧村上邸は「社会」「環境」「経済」の三側面を循環させるSDGsのショーケースとなることを目指しています。

SDGsの中に「パートナーシップで目標を達成しよう」というゴールがあります。目まぐるしく変化する時代において、単独で目標を達成していくには限界があります。これまでよりも、より一層協力し合うことが大切になってくるなか、旧村上邸が鎌倉と企業をつなぐ役割も担っていけたらと考えています。施設利用を検討されている方はぜひご相談ください。

旧村上邸-鎌倉みらいラボ-の最新情報はこちら

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*1 SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一 人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目 指す世界共通の目標です。2015年の国連サミットにおいて全ての加盟国が合意 した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030 年を達成年限とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

SDGs(持続可能な開発目標)持続可能な開発のための2030アジェンダ(外務省ウェブサイトへ)

*2 SDGs未来都市
日本政府は2018年から「SDGs未来都市」を選定しています。これは、SDGsを原動力とした地方創生を推進するため、優れたSDGsの取組を提案する都市·地域を新しい時代の流れを踏まえ選定するものです。その中でも特に先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として選定し、資金面での支援を行うことなどによりモデル事例を形成しています。2020年までに、すでに全国各地の93都市が選定され、地方におけるSDGsに資する取組を推進しています。

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