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建築の前に、地域とつながる言葉がある。建築家・藤村龍至さん(2)

ハロリノ編集部

住宅や集合住宅をはじめ、公共プロジェクトも数多く手掛けている建築家の藤村龍至さん。建築家として住民参加型のまちづくりにも積極的に関わる姿勢から、地域を元気にするためには建築物というハード以前に、集まって会話をする仕掛けが必要だと感じました。

藤村龍至さん 
http://ryujifujimura.jp/
建築家/東京藝術大学准教授。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年よりRFA(藤村龍至建築設計事務所)主宰。2016年より現職。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。公共施設の設計のほか、さいたま市・愛知県岡崎市・埼玉県鳩山町・所沢市などで公民連携型都市再生に関わる。

目次
1. 住民の声を集めたほうが建築はおもしろくなる
2. マルシェで人がつながり、まちが動いていく
3. みんなの場を、みんなの投資でつくる

1. 住民の声を集めたほうが建築はおもしろくなる

椿峰ニュータウンの新しい歴史をつくっていくための大きな一歩となった、中央公園での利活用社会実験。シンポジウムでも要望の高かった民間事業者による収益事業で居場所を創出するプロジェクトとして2018年2月に開催されました

――藤村さんはご自身のことをソーシャル・アーキテクトと呼び、日ごろからご自身の活動や思いをSNSで発信されています。建築も人と人のつながりが大切だと考えられるようになったのはなぜでしょうか。

私は多くの人が使う公共建築やまちづくりをフィールドにしているのですが、この20年ぐらい日本の社会は1990年代のゼネコン汚職やバブル崩壊をきっかけに政治不信・建築不信になっていて公共建築をとりまく監視の目が難しい。さらにSNSの広がりで評判が強く影響するようになってきたので、建築家はよりコミュニケーション能力を高めていろいろな人と対話をして共感を得ないと公共的なものはつくれない気がしています。

――新しい時代において一人ひとりの声が持つ可能性を課題解決に生かす試みですね。建築家もコミュニケーションを重視するようになってきたのでしょうか。

だんだん社会がコミュニケーションを重視するようになり、建築も適応していったのだと思います。コミュニティデザイナーの山崎亮さんが活躍されているような造園や土木の領域はもっと早くにそうなっていて、1990年代ぐらいから住民の合意形成のワークショップをするようになりました。私が大学で最初に学んだ先生もそういったことをされていたので、私もそうした現場に触れる機会があったんです。村のおじいさんやおばあさんが集まっていて、最初はぶすっと座っているだけだったのに模造紙と付せん、マジックを用意してワークショップを始めると、ものの5分ぐらいでみんながワーッとしゃべりだす。魔法みたいでした。

――藤村さんは学生時代に社会工学科を卒業され、大学院で建築を専攻されたとうかがいました。建築に進まれて、人とのかかわり方にも変化はありましたか?

私は学生時代に経験していたので住民グループに入っていくことに抵抗はなかったのですが、いざ建築を始めてみると建築の人たちはもう少し繊細というかアーティスティックなところがあって、「厨房に客人を招いてはいけない」みたいなスタンスの人が多かったんです。それが、世の中が変わってきて公共施設の設計も行政の担当者だけで決めるのではなく住民の意見を聞いて反映させることが当然になってきた。こうした変化を私はネガティブに捉えているかというとそうではなくて、的外れな意見におつきあいすることも多いですが「そんなことを考えるんだ」と思えるようなアイデアもいっぱい出てくるから、みんなでもみくちゃになって考えることも嫌いじゃないんですよ。

――SNSで発信されている藤村さんのイメージからは、もみくちゃになって考える姿は想像できないですね!

現実のコミュニケーションは充実していますが細かな話が多いので、私にとってSNSは状況を俯瞰して考える場になっているのだと思います。

 

2. マルシェで人がつながり、まちが動いていく

鳩山町コミュニティマルシェでは「サタデーマルシェ」を開催。お菓子と野菜のマルシェでは新鮮な野菜と美味しいスイーツやパン日替わりランチなどを出店。夏日のこの日は屋内開催

――椿峰のほか、鳩山や白岡など所沢市を中心に数多くのニュータウンで、住民と一緒に活性化に取り組まれていらっしゃいますよね。ハロリノも地域の声をプロジェクトに活かせるよう進めています。建築と不動産はアプローチが根本的には近いのかもしれません。

すごく近づいているなと思いました。福田さん(ハロリノ運営元エンジョイワークス代表)は楽しんでコミュニケーションをしている間に不動産が動いていけばいい、という考え方じゃないですか。「エンジョイしながら一緒につくっていくんだ」というのがストレートで分かりやすい。建築もだんだん似てきていると思うんです。私たちはニュータウン活性化のために、まずは楽しんでマルシェをひらく。それを継続することで人がつながり、まちが動いていく。そこは世代感覚ですね。

ニュータウン問題や社会課題を解決しようと考えると途方に暮れてしまうときもありますが、みんなが楽しめる場所をつくれば人は集まるんですよ。集まったところでいろいろ考えてみると、やっぱり「食」が大事だと気づく。だから椿峰ニュータウンでいうと、私が「母の家」をつくったり「椿峰キッチンプロジェクト」のお手伝いをしたりしているように、集まったあとの次のステップとして食に関係する場所ができてくると、まち全体が動いていくんじゃないかなと思っています。

――すると自治体との連携を考えるのは先の話でしょうか。

そうですね、みんなが集まるようになって、次にやりたいことが見えてきたら、今度は公共施設をそういうふうに改修しようか、となってくると思うのです。だから椿峰キッチンのプロジェクトリーダーである平山さん(*1)が考える椿峰キッチンプロジェクトが成功したら、次のステップは公園にカフェを出すことじゃないかな。平山さんはいま東所沢公園にPFI-PPP(官民連携)でつくられた小さな建物を使って「武蔵野樹林カフェ」を経営されているので、次は椿峰バージョンをつくって椿峰キッチンのシェアキッチンで育った人たちがそこに日替わりで出店することで公園に人が集まるようになる。そこまで持っていけるといいですね。

まちつくり所沢代表で、ハロリノで椿峰キッチンプロジェクトを展開中の平山毅さんが東所沢公園(埼玉県所沢市)で運営する「武蔵野樹林カフェ」。ハロリノでは椿峰ニュータウン入口にあたる山口中学校前の空き店舗を改修し、まちづくり拠点の創出に挑戦しています (過去記事より)

 

3. みんなの場を、みんなの投資でつくる

椿峰キッチンのまち歩きイベントではリノベーション前の建物の見学も。参加者みんなで、どのような空間になるのか想像が膨らませました(過去記事より)

――集まる場をつくるためには改修費用など何かと資金が必要になってきます。椿峰キッチンプロジェクトはまさにいまファンドで出資を募っていますが、最初にファンドの話を聞いたときは、どういった印象を持たれましたか。

今回の椿峰キッチンプロジェクトは本当にチャレンジングで、あそこで住民のみなさんの共感を集めて投資してもらい場づくりすることができたら、次につながると思いました。鳩山町のように最初から行政が公共施設として大きく投資してくださればそれでいいんですけど、椿峰の場合はみんなで投資してみんなで使うようになるといい。もしこれが成功するとほかのニュータウンでの再生のヒントにもなるので、民間主導型のニュータウン再生のモデルケースになるのではないかと期待しています。

椿峰キッチンの完成予想イラスト ©RFA

エンジョイワークスさんと平山さんが一緒に参加者を募ってまち歩きツアーをされたときに思ったことですが、プロジェクトの進め方が資金調達というよりはコミュニティデザイン的だったのは意外でした。鳩山で創造系不動産さんにお手伝いいただいたときもツアーをしましたし、まち歩きをして共感を高めるのは近年のまちづくり共通の手法なのかもしれませんね。

椿峰キッチンプロジェクトで行ったまちあるきイベントの様子(過去記事より)

まちづくりはこの10年ぐらいでどんどん新しい手法が生まれてきました。2011年に山崎さんが「コミュニティデザイン」でブレイクしたころのまちづくりの主流は合意形成支援で、次に2014年くらいに空き家を使った起業をみんなでサポートしましょうという清水義次さんらの「リノベーションまちづくり」が出てきた。その前後に空き家や空き店舗の使い方を建築の視点と不動産の視点を重ねて考える高橋寿太郎さんの「建築と不動産のあいだ」が出てきて、さらに今はそれらに加えて資金調達が必要だと、エンジョイワークスさんのような金融出身のプレイヤーが活躍されています。このように合意形成支援、起業支援、不動産流通、資金調達と重なってきた四つのレイヤーで仕掛けることで空き家や空き店舗がようやく動いていくことがわかってきた、というのがこの10年で広まってきたのかなと思います。

――こうした流れの中で、あらためて建築家としてどんなスタンスでまちづくりに関わっていきたいとお考えですか?

建築家はゼロのところに何かをつくるスキルだけでなく、今ある空間を使うスキルも持っています。例えば空き家を見て、一般の方も「ここは水まわりにするといいよね」と、ある程度のイメージは思い浮かぶと思いますが、それを法規的や設備的、構造的といった技術面から考えることができる。私はいろいろな都市の活性化に関わらせていただいていますが、「この公園のここが空いているから、ここに集まる場所をつくればこういった感じで使えるよね」といったようなアイディアを法規や設備、構造などを含めて提案し発展させていく立場でプロジェクトに入ることがすごく増えているんです。だから私たち建築家は、何かをつくるときだけでなく、使おうとしたときにもパートナーみたいに思ってもらえるようにこうしたスキルがあることをもっと強調していかなければなりませんね。

(おわり)

 

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ニュータウン再生への一歩は、集まる場をつくること。建築家・藤村龍至さん(1)

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椿峰キッチンの現場は昨年10月、内部の解体が始まりました。「剥がすとどんどん透明になる在来木造の世界。透明にするとやるべきことが明確になります」

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形 態:Zoomによるオンライン開催
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