リノベ前からマルシェを続けよう。「さかみちの市」で広がる椿峰コミュニティ

こんにちは。「椿峰キッチン」のプロジェクトリーダーをしている、まちつくり所沢の平山毅です。現場ではリノベ―ション工事が着工し、ファンド募集は大詰めを迎えるなど、いよいよ山場を迎えています。そこで、これまでの取り組みと、複数のイベントを通じて見えてきた地域と人のつながりを振り返ります。

1. 定期開催のミニマルシェを始めようと思った経緯

2月にまち歩きイベント、3月にトークイベントを開催し、椿峰ニュータウンのまちのことを参加者みんなで少しずつ知ることができました。参加者からは好評の声をいただく一方、近隣の主婦層や若い世代の参加はほとんどなく、日時を限定したイベントに参加いただくことの難しさを感じるように。そこで店頭で時間をゆったりと設けた企画にすることで、ふらっとのぞきに来ていただけるようになるのではと考えました。

また、単発イベントを開催するなかで、投資検討者が地域の魅力に触れられる機会づくり、そしてオープンまでにシェアキッチンとシェアオフィスの利用見込みをつけていく必要性を感じてきたことも理由です。これが定期開催のミニマルシェ「さかみちの市 / sakamichi no ichi」誕生の経緯です。さっそくスタッフと企画を練り、藤村龍至さんの建築設計事務所RFAやエンジョイワークスといったプロジェクトチームのみんなへ投げかけて骨子を固めていきました。

「さかみちの市」のロゴと垂れ幕

出店の様子

2. ネーミングとロゴは椿峰在住スタッフのアイデア

ネーミングとロゴは、椿峰ニュータウン在住のRFAスタッフである錦織ひとみさんが考えてくれました。椿峰のイメージ“さかみちのまち”と、椿峰キッチンの前にある“長い坂”から生まれたこの名称に、アイドル「坂道グループ」のような明るさと椿峰へとつながっていく前向き感、そして藤村さんが先んじて完成させた「HAHA・NO・IE」(実家を改修した)と語呂が似ている感じ、“michi no ichi”の部分が韻を踏んでいる点などから私も気に入っています。

椿峰ニュータウン在住のRFAスタッフ、錦織ひとみさんがデザインした「さかみちの市」グッズ

3. SNS運用やチラシづくり、いよいよ住民への挨拶へ

椿峰キッチンの場所はかつて「桜通り」と呼ばれる商店街があり、いまも西武鉄道狭山線下山口駅から椿峰ニュータウンを通って小手指方面に抜ける道路として比較的交通量の多い道路です。そのため、椿峰キッチンの前でマルシェを企画すれば集客ができるのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、現実はそう甘くありません。過去にまちバルイベントなどを手がけてきたのでその経験が役立ちました。

前面道路の様子。写真右道路の先は小手指方面につながる

予約なしで飛び入り参加できるよう終日開催のミニマルシェを目指し、まずは私一人で小さく始めようと第1回を企画。当日の様子を広く発信し、それを見た方が「ぜひ行ってみたい!」「ここに出店してみたい!」と思っていただけるようFacebook、Instagram、LINEを立ち上げました。

SNSの使い分けなどは分からない点が多く、日々若手スタッフに助けられています。日々の投稿作業は結構大変。三つ立ち上げたもののSNSによってユーザー層が異なるため、施設運営に相性がよさそうなLINEを中心に運用していくことを決めました。ぜひこれを読んでくださっているみなさんもお友だちになってください。「今日の出展者は誰だろう?」などの疑問に、チャット形式でカレンダーを表示してお知らせしています。

SNSに加えて、チラシを現地に設置してお迎えする準備が整ってきたら、いよいよ近隣にお住まいの方々への挨拶まわりです。プロジェクトに込めた思いをお伝えすると、みなさんあたたかい言葉をかけてくださり、とても励みになりました。

プロジェクトに込める思いはこちらの記事から
所沢・椿峰ニュータウンを舞台としたプロジェクトがキックオフ! まち歩きレポート

チラシ配布の様子

4. 最高のタイミングで、椿峰出身の若者2名もジョイン!

地域に根差したつながりを広げながら、より強力な仲間になってくれそうなコアメンバーを探す必要もでてきました。そんな最高のタイミングで連絡をくれたのは、椿峰ニュータウン出身の二人の若者。「事業をしたいので相談に乗ってほしい」と問い合わせしてくれました。

そこでさっそく「オープン前に現地の店の前で一緒にイベントをしませんか?」と提案し、快諾いただきました。さらにその二人から、下山口出身の飲食店オーナーを紹介してもらうという数珠つなぎも生まれてきました。

右からFUKU-SOUのお二人

5. いよいよ当日! 第1回「さかみちの市」

いよいよ第1回の開催日。最初は一人で実施する予定でしたがFUKU-SOUさんにも出店いただき、初回にして感触も売上も好調。知人の紹介や告知で知って来てくれた方と、現地を見て「まちの中で何か変化が起きている」と感じてふらっと立ち寄った方が交じり合って大盛況でした。多くの方と一緒に場をつくっていく楽しさをみんなで体感することができました。

さかみちの市1回目イベントの様子

プロジェクトの目的である“椿峰ニュータウン内のコミュニティを横串につなぐ”ということがまさに体現できたと思っています。また、一番うれしかったことは掲示板の告知を見て、キッチンを借りたいと考えている人にわざわざ来ていただいたことです。これまでの頑張りが報われた瞬間でした。

1、2回目それぞれ、約50名の方々にお越しいただきました。立ち上げとしては大成功だと思っています。実際に事業を考える際にこの場所がどんなふうに使われるのかをいつも考えていたのですが、そのイメージを具体的にすることができました。

6. 最後に

場づくりは、建物ができあがってからお披露目会などで認知を上げていくことが一般的ななかで、施設オープン前からイベントをするのはめずらしく、さかみちの市にいらっしゃった方々から「まだオープンしていないの?」と質問を多くいただきました。

第2回の「さかみちの市」に来ていただいた所沢在住の建築家・高橋真理奈さん(シン設計室)は「施設が完成してからでなく、工事中でもイベントをやって告知&仲間集めをする取り組み、めちゃくちゃ勉強になりました」とTwitterに投稿してくれました。また藤村龍至さんからは「これは一種の発明のようなもの」と評価いただいた点もうれしかったです。

古い建物をできるだけ残し、まちのためになる場所をつくろうという取り組みは各地で行われています。リノベーション工事は想定外のことも多く大変ですが、場所ができてからのことを考えると楽しみです。

私たちは場を一緒につくっていく体験を地域のみなさんと共有することでさらに共感を広げ、より多くの人にプロジェクトに参加いただけたらと考えています。また、この椿峰キッチンを実現して全国の郊外都市やニュータウンへ横展開ができるようなモデルづくりを考えています。ファンド募集の期間が残りわずかとなっています。ぜひ応援のほどお願いいたします。

リノベーション最新状況

さかみちの市が軌道に乗りつつある一方で建物工事を先行して進めています。解体してみると痛んでしまっている柱や梁、外壁などかなりの想定外の出費が嵩んでしまうことが発覚しました。当初リノベーションの予算は600万円程度でしたが、先行解体のあと構造体に修復すべき点が見つかり、工事費用は倍以上に膨らみそうです。最新の状況はSNSでもお伝えしていきます!

建物解体後の痛みが激しい部分


「椿峰キッチン」の記事一覧
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建築家・藤村龍至さんインタビュー(1)ニュータウン再生への一歩は、集まる場をつくること
建築家・藤村龍至さんインタビュー(2)建築の前に、地域とつながる言葉がある
【動画】まちづくりのトップランナーが考える、ニュータウン再生の切り札とは?
【動画】三浦展×藤村龍至「ニュータウンに住み続ける」刊行記念トーク!椿峰キッチンプロジェクト

公式サイト・SNS
椿峰キッチンプロジェクト

Instagram @tsubakimine.kitchen
Twitter @TsubakimineK
LINE @349rckib

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