【動画】三浦展×藤村龍至「ニュータウンに住み続ける」刊行記念トーク!椿峰キッチンプロジェクト
「食」を通じて椿峰ニュータウンから所沢を活性化していきたいと拠点づくりに挑む「椿峰キッチン」プロジェクト。第5弾は「三浦展×藤村龍至」トークイベントです。「13年前の二人の対談を読んで心動かされた当時の自分を思い出し、みんなにも後に続いてもらいたい」とプロジェクトリーダーの平山さんは、椿峰キッチンの竣工日に二人をお迎えして開催。見逃した方に向けて、アーカイブ映像を公開します!
1. 今回のトークも、だれかのきっかけになったらいい
埼玉県所沢市の椿峰ニュータウンで「椿峰キッチン」プロジェクトを立ち上げた平山さん、じつは埼玉県出身ではありません。そんな彼が、なぜ椿峰ニュータウンの活性化に取り組むことになったのか。原点は、13年前に「10+1 website(LIXIL出版)」が行った三浦展さんと藤村龍至さんの対談記事までさかのぼります。
編集プロダクション勤務時代から、三浦さんの取り組みは知っていたという平山さん。懐かしい思いもあって対談記事を読み進めていくにつれ、海外の郊外住宅地を研究してつくられた緑豊かな椿峰ニュータウンの活性化に取り組む藤村さんの活動に感銘を受けます。「自分も関わりたい」。そんな思いをさらに強めたのは、宮崎駿監督が森林保護に取り組む「トトロの森」が椿峰ニュータウンに隣接してあったこと。宮崎駿ファンでもあった平山さんはいつしか椿峰キッチン構想を抱くようになりました。
「ひとつの出来事が何かを変えていくということがまちづくりの現場では日々起こっています。ぼくがお二人の対談をきっかけにニュータウンの課題を知り、事業を起こそうと思ったように、今日のイベントがだれかのきっかけになったらいい。そんな思いを込めて企画しました」。トークイベントは平山さんの挨拶から始まりました。
2. ワーカブル、夜の娯楽、シェアタウンがうまくいくと
ニュータウンはおもしろくなる(三浦展さん)
さっそく三浦展さんトークショーのスタートです。80万部のベストセラー「下流社会」などの著書で知られ、昨年11月には多摩ニュータウンにあるシャッター商店街を5年見てきた成果をまとめた編著「ニュータウンに住み続ける-人間の居る場所3-」を刊行された三浦さん。ニュータウンで生まれ育った世代が「いかにまちに住むか」を考え、政府も「“居心地が良く歩きたくなる”まちなかづくり」をすすめる時代、「ワーカブルで、自宅やシェアオフィスで働いた方が能率もいいし、アイデアも浮かぶし、ストレスもたまらない。ニュータウンは『ワーカブル』『夜の娯楽』『シェアタウン』の三つがうまくいくとおもしろくなる」と、これからのニュータウンのあるべき姿を言及します。
多様な人たち、多様な世代、多様な年収、多様な形態の家族が住んでいたら「僕はできないけど、あなたはできる。あなたはできないけど僕はできる」といった無数の組み合わせが成り立ち、シェアや協働性が必然的に生まれていく。「機能的にも住民の属性的にも、いろいろな人々のミックスが大事。郊外もこっちに行くべきではないのか」。そんな思いでライフワークとして郊外を40年間調べ続けた三浦さんのたくさんの気づきや事例、エピソードがたっぷりつまった1時間、アーカイブでどうぞお楽しみください。
3. 椿峰キッチンを先駆的な場にして、街中シェアの仕掛けに(藤村龍至さん)
イベントの締めくくりには、全国の郊外住宅地やまちづくりのリサーチに関わる建築家・藤村龍至さんも登壇し、13年前の対談を振り返りました。
「三浦さんに聞きたいことがたくさんあって2010年に対談させていただきました。最初はニュータウンの話を私に聞いてくださり、そのあと80年代のパルコの話やセゾン文化の話をうかがいました。そもそもまちの個性はどのように生まれるのか、といった話のなかで、三浦さんは郊外の都市化に触れ、郊外と団地の喪失感は否定しようがないから、それを引き受けたうえで考えなければいけないとおっしゃっていました」(藤村さん)
その答えの一つとして当時語られたのが、東京から20、30キロ圏の郊外にスモールタウンがいくつかある状況をつくり、新しい郊外と都市を結びつけること。「スモール・タウンを実現するためには、雇用の問題と関連づけて構想することが大事で、住んでいる地域に働く場があることが重要」と三浦さん。
「非正規雇用だったらその街で仕事が見つかる。大工やパン屋、魚屋など専門性が身につく業種の店がたくさんあり、3年もすれば外で働けるような機能が町に備わればいいと、三浦さんはおっしゃっていました。でも当時の私はそれが全然よく分からなかったんですよね(笑)そのあとの10年、まちづくりのキャリアを重ねていく中で、三浦さんがいっていた言葉のリアリティーが増していきました」と、笑いを誘う一幕もありました。
まちを復活させるためには、空き地にコンテナを立てるなどして人が集まるようにし、集まるようになってきたら少しずつ投資をして、小さく起動させていく。地域に入ってスキルを身につけ、小さくお金を回していく仕組みが必要とのこと。
イベント終盤には大型投資が動き出した所沢のまちづくりに触れ、「どういったまちづくりを行うのか、プレイヤーの方々がどういうイメージをシェアするかで街の動きは変わってきます。椿峰キッチンが具体的な仕掛けの一つとして先駆的な場にしていき、もう一段階さらに進んで、街中でもシェアできるようになると郊外の都市化が起こるのではないでしょうか」と、藤村さんは椿峰キッチンについて期待を込めました。
このアーカイブは、こんな人におすすめ!
- 郊外住宅地、ニュータウンの活性化に興味がある方
- 住民参加型のまちづくりに興味がある方
- 埼玉県所沢市にゆかりのある方
- 三浦展さんの都市論・郊外論に興味のある方
- 藤村龍至さんのまちづくり、コミュニティづくりに興味がある方
- 椿峰ニュータウンのまちづくり事業を一緒に考えたい方
椿峰キッチンプロジェクトについて
椿峰ニュータウンの入口にある2階建ての空き店舗の1階をシェアキッチン、2階をコワーキングスペースにリノベーションし、椿峰ニュータウンを変えていくためのコミュニティ拠点をつくります! 椿峰ニュータウンは、埼玉県所沢市の中でも西部に位置するエリア。「トトロの森」と呼ばれる狭山丘陵の豊かな自然地形と植生を活かしながら1980年代に開発され、集合住宅や戸建て、タウンハウスが立ち並ぶみどり豊かなまちで、東京の郊外を研究する三浦展氏に「これまで見てきた郊外住宅地の中でもベストと言ってよい素晴らしさ」と評価されるニュータウンです。
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イベント登壇者プロフィール
三浦展さん
カルチャースタディーズ研究所 代表、1958年生まれ。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。著書に、80万部のベストセラー「下流社会」のほか、主著として「第四の消費」「家族と幸福の戦後史」「ファスト風土化する日本」がある。その他、近著として「データでわかる2030年の日本」「日本人はこれから何を買うのか?」「東京は郊外から消えていく!」「富裕層の財布」「日本の地価が3分の1になる!」「東京郊外の生存競争が始まった」「中高年シングルが日本を動かす」など多数
藤村 龍至さん
建築家/東京藝術大学准教授、1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年よりRFA(藤村龍至建築設計事務所)主宰。2016年より現職。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。公共施設の設計のほか、さいたま市・愛知県岡崎市・埼玉県鳩山町・所沢市などで公民連携型都市再生に関わる
平山 毅さん
となりのトトロに憧れて所沢市に移住。その後Web制作会社を営みつつ、日本三大名茶の狭山茶のブランディングや大規模な屋外バルイベントなど「食」に関わる取り組みを行う。2020年からはKADOKAWAサクラタウンに隣接する東所沢公園で、建築家・隈研吾氏設計の「武蔵野樹林カフェ」をPFI事業として運営している。現在、椿峰ニュータウンにて「食」をテーマにコミュニティづくりを行う椿峰キッチンプロジェクトに挑戦中
参考情報
三浦展(消費社会研究家、評論家)×藤村龍至(建築家)対談「郊外の歴史と未来像」
1 郊外から建築を考える
2 パルコ、セゾン的なるものと現在のショッピングモールの違い
3 「閉じる歴史から再び開く歴史へ」のキーワード
※この動画は2022年12月4日に開催した椿峰キッチンプロジェクト主催のイベント「三浦展氏新著発売記念トークショー&椿峰キッチン竣工内覧会!」のトーク部分のアーカイブです。