【FUND STORIES Vol.2】 「そんな物件ねーよ!」から始まった逗子「桜山シェアアトリエ」の10年

ハロー!RENOVATIONでこれまでに組成したファンドを振り返り、プロジェクトの背景や現在、地域で生まれた変化を深掘りするシリーズ。第2回目は2018年に成立した「桜山シェアアトリエファンド」です。廃工場をアトリエやオフィス、ガレージなどのシェアスペースに再生する——それだけなら、今ではよくある話かもしれません。けれどこのプロジェクトが特別なのは、その「つくり方」にあります。オーナー、投資家、借り手候補が同じテーブルで妄想をぶつけ合い、10年近く経ったいまも稼働率95%前後を保ちながら、関わる人を増やし続けているのです。

「そんな物件ねーよ!」妄想会議

逗子駅から徒歩20分、住宅街にひっそり建つ元・電子部品工場。隣地は神社の借地権付きで売りづらく、解体費もかさむ。売主にとっては「処分に困る負動産」でしかありませんでした。そんな時、エンジョイワークスが主催で開催されたのが「そんな物件ねーよ!をつくる会議」。名前はふざけていますが、中身は「こんな物件があったらいいな」を語り合うブレスト会。市場調査から入る従来の不動産開発とは真逆で、妄想から出口を探すアプローチです。
集まったのは工房を探すクリエイター、物件オーナー、そして利回りだけでなく意義のある投資先を探す投資家たち。「湘南にはものづくり好きが多いのに、音を気にせず作業できる物件がない」——そんな声から、あの廃工場をシェアアトリエにするというアイデアが生まれました。市場調査ではなく「あったらいいな」という“妄想”が起点だったからこそ、既存の物件では満たせなかったニーズにまっすぐ応えるものになったのです。

一見すると価値が見出せなかった元・電子部品工場。立場を超えた対話からシェアアトリエの構想が生まれました

つくる過程が、人を集める

内装は、ベニヤでブースを仕切っただけのシンプルな設計。完璧に整った物件より、自分でカスタマイズできる余白がほしい——会議で見えてきたこの気づきをもとに、各ブースの内装は入居者が自由にDIYでカスタマイズできる「余白」として残しました。薪ストーブやウッドデッキのある共用部は、人が自然と集まる仕掛けです。
工事の様子はSNSで発信するたびに問い合わせが殺到。「つくる過程から参加する体験」そのものがコンテンツになり、なんと完成前に14ブース満室という異例のオープンを迎えます。ファンドを待たずして、すでに「参加型」は始まっていたのです。

工事もイベントの一つ。余白があるからこそ、自分らしい空間が生まれます

「みんなで育てる」を仕組みにするファンド

こうして約3年間、個人オーナーのもとで運営されてきた桜山シェアアトリエを、「もっと多くの人と育てたい」との想いで2018年7月、ハロリノファンドの募集が始まりました。想定利回り最大年率約8%、運用期間5年。開業3年間で稼働率94%→97%→99%と右肩上がりの実績が後ろ盾です。

「桜山シェアアトリエファンド」
https://hello-renovation.jp/renovations/3403

運営情報はオープンに共有し、稼働実績に連動するリターン設計、将来の売却益や優先買取権も用意。単なる資産運用ではなく、まちづくりコミュニティへの参加権としての出資でした。1口5万円、1人最大20口という手の届きやすい設計もあってか、募集額1,200万円に対し、延べ70人が出資。オーナー個人の持ち物だった場所は、ここで「みんなの場所」に変わりました。

3号ファンドへとつながる、共創の力

運営開始後も、アトリエの一般公開や投資家イベントを定期的に実施。地元のアートフェスティバルに合わせて普段は非公開のアトリエを開放したり、入居クリエイターと投資家が「ここでやりたいこと」を語り合うワークショップを開いたり。入居者の「材料が足りない」という一言に投資家が反応し、その場で支援が決まる——そんな光景が日常的に生まれました。「出資する人」と「使う人」の垣根を越えたやりとりが、空室が出てもコミュニティ経由で次が決まる好循環を生み、稼働率は95%前後をキープしています。

1号ファンドは想定超の利回りで償還、2号も順調に運営し、2025年には3号ファンドの運営も始まっています。廃工場発の「共創の場」は、一過性で終わらず育ち続けているのです。

投資家もクリエイターも、みんなが当事者。対話を重ねながら、共創のコミュニティは育ち続けています

妄想が形となる「参加型まちづくり」

この物語の主役は、建物そのものより「関わった人たち」かもしれません。企画段階から当事者として巻き込まれた人ほど、完成後も場所を育てる仲間になる。関わる人が増えるほど場所の価値が上がる——それが桜山シェアアトリエの証明する「参加型まちづくり」のかたちです。次回も、まちで育まれたファンドストーリーをお届けします。

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