【FUND STORIES vol.3】「葉山泊まれる蔵ファンド」——1棟の空き蔵から、全国100棟へ

ハロー!RENOVATIONでこれまでに組成したファンドを振り返り、プロジェクトの背景や現在、地域で生まれた変化を深掘りするシリーズ。第3弾は、ハロー! RENOVATION初のファンド「葉山泊まれる蔵ファンド」を取り上げます。
2018年、神奈川県葉山町の小さな空き蔵からスタートしたこの宿泊施設は、いまや「The Bath & Bed」というブランドとして全国に広がり、国際広告祭でも評価される事業へと育ちました。ハロリノの原点とも言えるこのプロジェクトを、あらためて紹介します。

300人で育てた蔵の再生

舞台は、神奈川県三浦郡葉山町の中心・元町エリア。このプロジェクトのきっかけは、エンジョイワークスが地域の仲介・賃貸事業やイベントを通じて知り合った大家さんから、「空いている蔵がある」という情報をもらったことからでした。
そこから、葉山町で毎年開催される「葉山芸術祭」のプログラムの一環として、ワークショップを実施してアイデアを形にしていきました。葉山在住のクリエイターやアーティスト、スタイリストを講師に迎え、「自分が泊まるなら、どんな空間がいいか」という視点でアイデアを出し合いました。リノベーション前には全11回のオフラインイベントを開催。その後も関連ワークショップを重ね、約20回にわたる取り組みに参加した人数は延べ300人近くにのぼりました。SNSでもこの経過をリアルタイムに発信し続けました。

何度も議論を重ねた末にたどり着いたのが、「日常にあったはずの小さな“非日常”を取り戻す場所」というコンセプト。1階には大きなジャグジー、2階には最大4名が泊まれる小上がり付きのベッドルーム——必要なものだけを残した、削ぎ落とされた空間です。入浴と睡眠以外の時間は、自然とまちへ繰り出す仕掛けにもなっています。ソファや建具、階段には、時代を経た蔵の古材を徹底的にリユース。「まっさらな新築」では決して出せない味わいを残しました。その「小上がり」も、こうした場から生まれたアイデアのひとつです。
つまりこのプロジェクトは、資金を調達する前から、施設が完成する前から、すでに300人近い「当事者」がいる状態でスタートを切っていたのです。

出資という、応援のカタチ

2018年6月、ハロー! RENOVATIONは投資型クラウドファンディングを搭載して正式ローンチ。これは前年に日本で初めて「小規模不動産特定共同事業者」の登録をし、その第1号案件として組成したファンドとなりました。物件目標募集金額は600万円。募集開始からわずか1日で目標金額を達成。日本初の制度でのファンド組成としては、異例のスピードでした。
なぜここまで速く集まったのか。理由のひとつは、先に触れたワークショップの存在です。ファンドの募集が始まる前から、すでに300人近い人たちが「自分ごと」としてこの蔵に関わっていました。彼らにとって出資は、見知らぬ物件への投資ではなく、「自分たちで考えたコンセプトを、実際に形にするための最後の一押し」だったのです。応援したい気持ちが先にあり、それを表現する手段としてファンドがちょうど用意されていた——そんな順番でした。

ファンドページ
https://hello-renovation.jp/renovations/3099

投資家と一緒に育て続けた4年間

2018年夏に運営を開始した「The Bath & Bed Hayama(BBH)」は、開業以来、着実に実績を重ねてきました。コロナ禍でも年間稼働率65%(2021年度)を記録し、ハイシーズンには90%超え。「泊まれる蔵」というユニークさからSNSでも話題となり、最大で月間稼働率95〜100%を記録した時期もありました。2023年度の平均稼働率は71.7%と、開業から5年以上経っても高水準を維持しています。

投資家に対しては、定期的なIRレポートを通じて稼働状況や運営の取り組みを共有。さら3カ月に1度のペースで「投資家Meet Up」を開催し、施設内部の案内やプロジェクトの進捗を報告しました。ある回では、冬場の稼働率をどう上げるかをテーマに、投資家とともにアイデアを出し合いました。その中から生まれた施策は、実際に「冬の蔵こもりプラン」として商品化され、次回の投資家イベントでは、その実施結果も共有されました。こうした対話を重ねながら、投資家も運営に関わり続ける関係性が育みました。1回目のファンドは4年2ヶ月の運用期間を経て、2022年9月に無事償還を迎えたのです。

「泊まれる蔵」、全国へ。電通との協力で始まったブランド化

葉山での実績をもとに、2022年からは「The Bath & Bed」を全国ブランドとして展開するフェーズに入ります。ここから株式会社電通との協業がスタート。
電通がブランディングとプロモーションを担当し、これまで培ってきたマーケティング力・クリエイティブ力を掛け合わせることで、他にない世界観を持つ宿泊ブランドの確立を目指す体制がつくられました。インテリアデザインは、BBH開業時から携わるスタイリスト・石井佳苗さんが引き続き担当しさまざまな場面で関わる人たちによる「The Bath & Bed Team」として、ブランド全体の世界観を統一しています。

全国展開第1号となったのが「The Bath & Bed ファンド1号」(富山県立山町、長野県佐久穂町・小布施町の3拠点、2022年募集)。続く「The Bath & Bed 100棟ファンド」(2024年募集)では、愛媛県松山市・道後温泉エリアと栃木県鹿沼市に5棟目・6棟目を開業。道後エリアの物件では、天然温泉を引き込んだ、まさにご当地「The Bath & Bed」が実現しています。

各エリアで、地域の事業者やまちづくり会社と連携していることも、このブランドの特徴。鹿沼では日光珈琲を営むDANNAVISION、道後ではスイーツカフェを展開するBluetoothなど、地域に根ざした事業者がホスト(運営)側として関わることで、宿泊体験と地域の魅力をセットにした仕組みが各地でつくられています。
「100棟ファンド」という名の通り、目標は全国100棟。神奈川から始まったこのプロジェクトは、長野・富山・愛媛・栃木へと広がり、これからも各地に眠る蔵を舞台に展開が続いていく予定です。

広告賞での「思いがけない」評価

2026年3月には、この「泊まれる蔵(The Bath & Bed Team)」がアジア太平洋最大級の広告祭「ADFEST 2026」で、SUSTAINABLE LotusとCREATIVE STRATEGY Lotusの2部門でブロンズ賞を受賞。革新的なアイデアを評価するINNOVA Lotusでもショートリストに選出されました。
単に施設をつくることにとどまらず、資金調達から企画・運営までのプロセス全体に、投資家や地域住民、事業者など多様な人が関わり続けてきたことこそが、このプロジェクトの本質という点で評価されました。空き蔵を「泊まれる蔵」として再価値化し、循環させると同時に、人と人との関係性を育むプロジェクトであること。その00「仕組み」そのものが評価されました。

葉山の小さな空き蔵から始まったひとつのプロジェクトは、地域の人々や投資家とともに育ち、全国へと広がり、国際的な評価を受けるブランドへと成長しました。この歩みそのものが、ハロー! RENOVATIONが大切にしてきた「参加型」のまちづくりを体現しています。
次回のFUND STORIESもお楽しみに。

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