豊島区の空き家事情から考える、福祉視点の空き家再生。「としままちごと福祉支援プロジェクト会議vol.5」レポート
一般社団法人コミュニティネットワーク協会とエンジョイワークスで進めている「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」。まちごとまるっと福祉の機能をもち、住み慣れた「家やまち」で暮らし続けることができる仕組みを、みんなで一緒につくるプロジェクトです。
福祉を必要としている人だけでなく、まちのみんなが交流できる場づくりを、参加型で進めていく
2月14日に開催した「としま・まちごと福祉支援プロジェクト会議vol.5」。
株式会社ハウスメイトの伊部尚子さんをお呼びし、不動産の視点で、空き家がなぜ増えるのか、どうすれば空き家が減り、安心して暮らすことができるのかをお話していただきました。回を重ねるごとに反響が大きくなっているこの会議。70名定員の会議室が満席となり、大盛況での開催となりました。
今回は講演形式で「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」の振り返りからスタート。
参加型で進めてきた当プロジェクトのご紹介をさせていただきました。
見守り機能を持った交流拠点をつくり、まちにセーフティーネット住宅を点在させることで、みんなが、住み慣れた家で安心して過ごすことができる仕組みを、参加型でつくっています。
豊島区と民間と住民とが、手を取り進めるチャレンジ
次に豊島区住宅課の星野良課長より、「豊島区の空き家の実態と高齢社会に対応した住宅施策について」のお話しがありました。
「豊島区は、賃貸用の空き家率が高いが、オーナーさんと民間をつなぐ支援のかたちを模索中。その中で、民間が取組みを始めたのは23区内でも豊島区が初めてのものだ」と心強いお言葉をいただきました。
不動産業界から見た、老後の住宅確保問題と居住支援
続いて、伊部尚子さんより「不動産業界から見た老後の住宅確保問題と居住支援の進捗」についての講演。
伊部さんからは、不動産会社の現場で聞く生の声を交えてお話ししていただき、空き家や高齢者問題の現状が、とてもわかりやすく語られました。
そもそも、なぜ空き家のまま放置されるのか?賃貸に出せない空き家が増えるワケ
そもそも、なぜ空き家はそのまま放置されるのでしょうか? 現代の賃貸物件事情として、スマートフォン上で、物件を確認することができるため、内見の回数が減ってしまった。インターネットで、まず物件を見てもらうためにも、写真映えが重要な要素となり、リフォームをしないと借り手が見つかりづらい、というのが現状だそう。
リフォーム代がかかるというのは、初めて賃貸に出そうとする人にとって、ハードルが上がっており、賃貸に出せない空き家が増えているようです。
そこで、リフォーム代を最小限にして貸し出せる「DIY型賃貸借」という仕組みも出てきています。家賃を低く設定する代わりに、借主がDIYで物件を整備することで、大家さんと借主のマッチングを促進する仕組みです。
見守り機能で、安心して高齢者に貸せる仕組みを。孤独死の問題と合わせて考える
もうひとつの課題。高齢者に貸せる賃貸物件が少ないということ。70代の大家さんが、自身と同世代の高齢者の入居をNGにする現状として、空き家が多いのに、どうして困っている人々に貸せないのでしょうか。
高齢者が亡くなった場合の資産価値の低下や、高齢者を受け入れることができる設備が整っていないなどの理由が挙げられます。
近年では、高齢者の孤独死が増加しており、また、命に関わる問題を大家さんや不動産会社が負えないといった現状があるようです。
孤独死の対策として、異変の早期発見が重要。IoT家電やヤクルトの配達を駆使して、大家さんが見守り体勢を整えている例もあります。
医療や福祉との連携を。不動産×福祉で、空き家問題の解決を促進
保証会社や見守りサービスはあるものの、不動産の解決だけでは限界があります。
大家さんに「高齢者に安心してお部屋を貸すために必要なもの」をアンケートしたところ、なんと80%以上が、「見守りサービスを実施する医療系や福祉系の法人・団体等のネットワークの構築」と回答したという結果も。
「としままちごと福祉支援プロジェクト」の仕組みを使うことで、大家さんが安心して、高齢者に空き家を貸すことができ、不動産と福祉の視点で空き家を活用していくことが、空き家問題の解決に一歩前進するのではないでしょうか。
誰もが安心・安全に暮らすために
終了後は懇親会。参加者のみなさんの活動や、協力できることを発表していただくなど、発展的な交流につながりました。集まった皆様は誰もが安心・安全に暮らすにはどうすればいいか、自分の問題として捉えているからこそ、打ったら響くような良い反応を毎回いただいているように感じます。
登壇者 伊部尚子 氏
賃貸管理会社のハウスメイトグループで賃貸住宅の仲介・管理業に20年従事。
賃貸住宅の入居者の高齢化問題、空き家問題に積極的に取り組んでいる。
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会主催の「住宅確保要配慮者等の居住支援に関する調査研究会」に不動産業者で唯一の委員として関わり、二期目を迎える。
研究会では、高齢者が安心して賃貸住宅を借りることができ、賃貸住宅オーナー、不動産会社、みんなが安心することができる仕組みを検討している。
今後のイベント予定
3月17日(火)18時30分
「講演会 孤立と貧困を解決する居住支援のあり方」
講師:小林 秀樹さん
千葉大学大学院工学研究院教授、豊島区居住支援協議会会長、豊島区住宅対策審議会会長
空き家を有効活用した居住支援のあり方について講演していただきます。
お申し込みはこちらから
https://www.facebook.com/events/120841409354376/
3月27日(金)18時30分
「第6回としま・まちごと福祉支援プロジェクト会議」
メッセンジャーナースの鈴木紀子さんと厚美道子さん(南池袋訪問看護ステーション所長)をゲストにお迎えして、「もしものときの安心のしくみ〜医療と看護」(仮)を出し合います。
【これまでの「としま福祉支援プロジェクト」イベント】
*第1回:7月18日「初顔合わせ」&「アイデアブレスト会議」
*第2回:9月7日「大塚交流拠点のコンテンツ会議」
https://hello-renovation.jp/topics/detail/5890
https://hello-renovation.jp/topics/detail/5899
*第3回:11月20日「図面をみながら妄想会議」
*第4回:1月22日「国交省住まい環境整備モデル事業採択の報告」
https://hello-renovation.jp/topics/detail/7590
*第5回:2月14日「豊島区内の住宅事情、高齢者の居住支援について」【伊部尚子氏】