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面白法人カヤックCEO柳澤大輔さん vol.1 自分の住むまちを“ジブンゴト”として考えると、住むのが楽しくなる。

ハロリノ編集部

ウェブサービスやスマートフォンアプリなどを手がける面白法人カヤックは、全社員がサイコロを振って月給にプラスされる手当額を決める「サイコロ給」制度、毎年趣向を凝らした採用サイトなど、会社を挙げて面白いことを追求する経営方針でも注目を集める。

同時に、本社を置く鎌倉で地域活動に取り組んでいることでも知られ、同じく鎌倉で地域に根ざして活動するウェブサービス「ハロー!RENOVATION」としても大いに共感を覚える。

そこで今回は、カヤックが携わる鎌倉での地域活動とは具体的にどんなものか、そもそもコミュニティに関わり続ける理由はなにかを聞いた。


柳澤大輔(やなさわ だいすけ)

面白法人カヤック代表取締役CEO(最高経営責任者)。1974年生まれ。98年、学生時代の友人3人でカヤックを設立。2002年9月、鎌倉に本社移転。13年に鎌倉を拠点にする企業とともに「カマコンバレー」を設立(現在の名称はカマコン)。


■まちのためになるアイデアを提案・実行する場「カマコン」が成功した理由


—以前、SuMiKa(※)という住まいに関するウェブサービスを提供されていましたね。カヤックが住宅分野に注目したのはどのような理由からでしょうか。

(※)現在はタマホームに売却

柳澤大輔さん(以下柳澤):カヤックでは過去にクリエイターのプラットフォームをたくさん作っていて、SuMiKaもその一環の、建築家のためのプラットフォームとしてスタートしたサービスです。提供するのは、家を建てたい人と専門家がつながるための場。登録している専門家のポートフォリオを閲覧したり、建築家や工務店、施主などに直接質問や相談をしたり、予算などの条件を公開して専門家を募集したりもできます。

やってみて思ったのは、家についても主体的になるのはいいことだ、ということでした。“家を買う”より、“一緒に作る”という感覚でいるほうが満足度が高いんですよね。多少の欠陥も愛せる、というか。

そもそも“つくる人を増やす”がカヤックの経営理念です。必ずユーザーを巻き込んで、一緒にサイトの運営にかかわってもらい、ロイヤリティを高めてもらう。意識的にそういうサービスを提供してきましたが、住宅についても同じなんだと実感しました。


−「ハロー!RENOVATION」でも、さまざまな人が出会って直接行動を起こすための“場”づくりをしてきました。その経験からも“つくる人を増やす”という理念には大いに共感します。

柳澤:そうですね、軸は同じかもしれません。“まちづくり”も同様なんです。自分の住むまちを自分が作っているという感覚を持てば、住むことが楽しくなります。だから、まちのためによいと思うプロジェクトを簡単に立ち上げることができるようなフォーマットをつくろう、ということで「カマコン」が生まれたんです。

***

カマコンとは、鎌倉に拠点を置く複数のIT企業を中心に始まった、鎌倉をよくしたいという人を応援するための活動のこと。カマコンに賛同する人・団体であれば、IT企業に限らず参加できる。

定例会は月1回で、5〜6人のプレゼンターが鎌倉をよくするプロジェクトを提案する。その後参加者は関心のあるプロジェクトをひとつ選び、グループに分かれてブレスト(ブレインストーミング)を行って、どのプロジェクトを実行するかを決定。プロジェクトリーダーを決め、メンバーを募ってプロジェクトが実行に移される。カマコンからはすでに多くの企画が生まれ、たくさんの人の賛同を得てきた。

たとえば2015年に実施された「まもり鳩巨大砂像プロジェクト」。マナーの悪化により地元の人の足が遠のいていた由比ヶ浜に人を呼び戻すべく、由比ヶ浜のキャラクターである鳩をモチーフとした像を砂でつくり、子供たちを対象に砂像ワークショップを開催するというものだ。

砂像

その制作風景をFacebookなどで発信していたところ、鎌倉にあるお寺のご住職の方々から「開眼法要(※)をしたい」と申し出を受けた。鎌倉土産の鳩サブレーで知られる豊島屋もメインスポンサーとして協力してくれた。
(※)開眼法要…仏像、仏壇、お墓などを新しくする際、僧侶に読経をあげてもらう儀式のこと。つまりこのとき、鳩の砂像は由比ヶ浜を見守る仏像としてお墨付きをもらったのだ。

最近は大学生が中心となって、2017年4月の市議会議員選挙における投票率アップをめざすプロジェクトが実施された。期日前投票に来た人の中から、希望者を人力車で自宅まで無料で送迎しようというイベントだ。

選挙イベント

このプロジェクトは地元の新聞に取り上げられたり、SNS等で拡散されるなど、大きな反響を呼んだ。この活動をきっかけに、友人や家族に選挙への参加を促したという人もいた。活動の中心となった学生には選挙管理委員会から励ましの言葉もあった。
今回は「勝手連」的な活動だったが、今後は市との協力も可能なのではないか、そんな手応えも感じられた。

こうしたイベントそのものはまちづくりとは言えないかもしれない。ただ、同じ目的のもとに集まった人たちだから活動を楽しんでくれる。そしてますますまちが好きになるという好循環が生まれるのだ。


■ 住民が自ら考え、行動を起こす=ジブンゴト化することが大切

柳澤:この仕組みができて5年目になりますが、今、全国20箇所以上でこの「カマコン・フォーマット」を展開しています。カマコンを導入したいと希望する地域は地方展開チームがサポートしています。もちろん各地の特性に合わせ少しずつアレンジはしますが、ブレストを基本に、参加者全員が主体的になることをめざすのは同じです。カマコンをやると、今までまちづくりに参加したことのなかった人が「こんなことをやりたい」と手を挙げるようになり、それをみんなが応援するというポジティブな連鎖が起きます。自分がトップになったつもりで必死に考えるから、“ジブンゴト化”するんです。

ブレストは、もとはカヤックの社員全員が会社をつくる感覚を持つために実施していたもの。それがうまくいったので、外部向けのサービスや株主との関係に生かし、さらに自分たちが拠点を置く鎌倉に展開してカマコンになったという経緯があります。


−当初カマコンはIT企業が主体になっていました。ITがまちづくりに果たす役割はやはり大きいですか?

柳澤:IT企業だからこそ、プロジェクトの資金集めのためにクラウドファンディングの仕組みをつくることができました。でも正直なところ、それ以外はほとんどITは関係ないですね(笑)。フェイスブックでイベントの告知や連絡のやりとりをしている程度ですので、興味があれば気軽に参加してもらいたいですね。今では、IT関係ではない参加者のほうが多いかもしれません。80代のおばあちゃんもいます。

結果として形にならなくてもいいんです。まずはつくる側の気持ちになることが大切。そうすると住むのが楽しくなる。それがカマコンの目的です。


−大切なのは、住んでいる人たちが自ら考え、動くことなんですね。

柳澤:識者を集めて会議を開いても、お互い自論を主張して一向に進まない、ということはなんども体験してきました(笑)。

カヤックが社内でずっと続けてきて、参加者がアイデアを出しやすくする形やルールができあがってきたこともあり、つくる側の気持ちになるためにはブレストの方が有効なんだと実感しています。僕も一参加者としてブレストに加わるんですが、みんなが本気でやるといいアイデアが出て、自分で動きたくなってしまいます(笑)。

ただし、カマコンのような地域活動と企業活動とはセットだと思っています。カマコン単体だと楽しいだけですが、そこに企業が参加することで初めて実効性が生まれます。


—カマコンはすでに地方展開しているとのことですが、どんな地域でも有効なんでしょうか。

柳澤:鎌倉での成功は特殊なことではありません。どの地域でも、「カマコン・フォーマット」を導入して、状況を動かすことはできます。これまでは、参加者の中から地元で続けたいという人が出て、継続してくれて、広がってきました。
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地域や行政については「自分ひとりが行動したからってなにが変わる?」という諦めのような感情を抱える人は多いのでは。でも、主体的に考え、行動する仕組みを作ることはできるし、そうすればこんなに楽しくなる。カマコンの成功がそれを教えてくれる。

インタビュー後編では、柳澤さんが考える地方の可能性についてうかがいます!

後編

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