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あなたの社員もサーフィンに行かせよう③

ハロリノ編集部

2017年6月、鎌倉の海にほど近い場所にあった古いテナントビルをリノベーションし、海辺のワークプレイス「Satellite YUIGAHAMA(サテライトユイガハマ)」がついに完成した。都心から電車でわずか1時間弱。いつもとは環境の異なる、潮風や太陽を感じるこの場所に身を置き、仕事に取り組むことで得られるものとは一体何か?単に古い建物の再活用という意味にとどまらず、Satellite YUIGAHAMAは「働き方」のリノベーションでもある。最終回となる今回は、完成した施設の様子と、実際にこの施設でサテライトワークを始めた利用者の声をお届けする。

古くなったビルを壊して建て替えるのではなく、オーナーが生まれ育った思い出のある建物を活かし、耐震補強や意匠、使い方の変更を通じてワークプレイスという新しい「場」へ生まれ変わらせたSatellite YUIGAHAMA。1階に入っている地元のテナントも営業を継続したまま、無事に工事を完了させることができた。

工事の前にオーナーが「交差点の方から見た時の顔がとても特徴的なんです」と仰っていたこのビルの外観は、元のユニークな形はそのままに、赤茶色のタイル張りだった外壁をモルタルで覆い、シックなウォームグレーの塗装を施してモダンな印象に。オーナーには、ここを仕事場としてさまざまな人が利用し交流することで、大好きな由比ガ浜のまちも元気になったら嬉しい、という想いがある。

 

完成したSatellite YUIGAHAMAの外観

完成したSatellite YUIGAHAMAの外観

Satellite YUIGAHAMAには、4つのブース席(施錠できる個室)と10のスタジオ席(空いている好きな所に座れるフリー席)がある。室内は窓が多く、自然光がたっぷりと差し込んで気持ちのいい明るさ。WiFiや電源、カラー複合機も完備。オプションでロッカーを借りれば貴重品や備品類もしまっておけるし、ポストを契約すれば郵便物も受け取れる。もちろん法人登記も可能だ。共有の打ち合わせスペースは予約制で、室内に1ヶ所、屋外の日当たりの良いデッキスペースにも1ヶ所あり、来客にも対応できる。

契約はスタジオ・個室共に1ヶ月単位でフレキシブルに利用しやすい。例えば、期限のあるプロジェクトに数人で集中して取り組みたいという場合に、それに要する数ヶ月だけ契約する、といった使い方ができる。また「ドロップイン」での利用ができるのもポイント。日頃は別の場所で仕事をしているが、たまたま今日は鎌倉の海の近くで、とか、湘南方面に仕事の約束ができたからその前後の時間で、とか、どんな環境なのか試してみたい、といったニーズにも応えられる。料金も含め、カフェでのノマドワークと同じくらい「気軽」でありながら、快適なWiFi環境や仕事に集中できる静けさ、かつ心地良い開放感が得られるというのが、鎌倉の海辺のワークスタイルらしい。

 

室内の打ち合わせスペースから見た所。シンプルでゆったりした雰囲気が利用者に好評。

室内の打ち合わせスペースから見た所。シンプルでゆったりした雰囲気が利用者に好評。

施錠できるブース席(個室)にはデスクと棚とブラケット照明、そしてカスタマイズの楽しみがある。

施錠できるブース席(個室)にはデスクと棚とブラケット照明、そしてカスタマイズの楽しみがある。

南側の日当たりの良いデッキもミーティングや休憩に利用できる。

南側の日当たりの良いデッキもミーティングや休憩に利用できる。

それだけではない。Satellite YUIGAHAMAの特徴といえば、サーフボード置き場と外シャワーの設備があることだろう。「働き方の自由化」が注目される中、都内や地方都市にもたくさんのワークプレイスが続々と生まれているが、デスクと海とを行ったり来たりするスタイルを実現できるのは海辺ならでは。波の良い日は海に入りながら仕事をする。そんな遊び半分のような働き方で「生産性は上がるのか?」という疑問に対して、サーフィンを趣味とする鎌倉ワーカーのひとりはこのように話している。

「波に乗ろうと思ったら、刻々と変わる波の動きや風などすべてのコンディションをしっかりと自分の目や耳で捉え、情報を瞬時に判断し、自分の体を動かさなければいけない。海や波といった“自然”を相手にする時には、否が応にも主体的、能動的にならざるを得ない。その時、自分の思考回路や行動原理が、ビルの中で慣れきった仕事をしている時とは全く違うものになっていることに気づく。それこそが自分のビジネスにとって、海に入ることでもたらされる大きな効用のひとつ」

 

建物の外にはサーフボード置き場と外シャワー。歩いて5分で海だ。

建物の外にはサーフボード置き場と外シャワー。歩いて5分で海だ。

施設に併設された賃貸住居(レジデンス)の一室。

また、Satellite YUIGAHAMAには2つの賃貸住居(レジデンス)も併設されている。職住近接、通勤時間の長さとストレスから解放されることによって得られるメリットは大きいに違いない。あるいは週末のカジュアルなセカンドハウスとして利用したり、オフィスと合わせて企業で契約し、金曜から月曜にかけて社員の新しい働き方・暮らし方のトライアルの機会とするのも面白いのではないだろうか。

 

2017年6月に開催された「鎌倉サテライトオフィスツアー」では都心企業数社が見学に訪れた。

2017年6月に開催された「鎌倉サテライトオフィスツアー」では都心企業数社が見学に訪れた。

施設が完成して間もなく、鎌倉に住む人事コンサルタント 池照佳代さん(有限会社アイズプラス 代表取締役)が、新しい働き方を推進しようとしている都心の企業数社の人事に関わる担当者を募り「鎌倉サテライトオフィスツアー」を開催した。この日の内容は、Satellite YUIGAHAMAと同じく、「働くまち」を目指す鎌倉市の空き家・空き店舗を利用した企業活動拠点整備事業の助成を受けて同時期に誕生した「旅する仕事場 御成オフィス/運営:株式会社ANTz」も合わせて見学し、鎌倉のまちの雰囲気やカルチャーなども感じながら「鎌倉で働く1日」を体感、最後に参加者全員でディスカッションを行い、各自が「我が社の新しい働き方改革」の糸口を見つけ出そうとするもの。

参加者からは、

「東京からたった1時間でも鎌倉は見える景色や雰囲気が全く違い、まち自体に独特のパワーもある。百聞は一見にしかずで実際に身を置くことで、場所を変えることの意義をリアルに体感できた1日だった。メリットの言語化が難しい部分があるので、社内推進の努力を重ねていきたい」

「会社以外で仕事をする場合、セキュリティー面が懸念事項の筆頭に上がる。が、機密性の高い仕事をどう社外に持ち出すか、という議論ではなく、このようないつもとは違う環境だからこそ、いつもとは違う仕事、例えば長期プランを立てるなどの創造的な仕事をするという発想にならなければと気がついた」

といったコメントが聞かれた。

 

Satellite YUIGAHAMA利用者の加藤さん(LIFE STYLE Inc.)

Satellite YUIGAHAMA利用者の加藤さん(LIFE STYLE Inc.)

2017年7月、Satellite YUIGAHAMAは本格的に稼働し始めた。完成前からさまざまな人がこのサーフボード置き場付きのオフィスを見学に訪れていたが、実際に入居者として早期に契約を結ぶのは、やはり個人の建築家やWebデザイナー、広告関係などのクリエイティブ職で自ら決定権をお持ちの方。自宅にもワークスペースはあるが、お子さんがいたりして集中できない、こもりきりだと煮詰まってしまうといった事情のある方だ。

そんな中、東京の南青山にオフィスのあるVRのベンチャー企業 LIFE STYLE Inc.の人事スタッフを務めている加藤マキさんは、自らが「会社の新しい働き方の実践事例」となるべく、自宅のある鵠沼海岸に近い場所ということで、このSatellite YUIGAHAMAに席を借りた。加藤さんにお話を伺ってみると、

「自分らしい生き方を実現するために、働き方も選んでいくという時代になりつつあります。私がLIFE STYLE社に入社したいと思ったのも、この会社の目指すものが『新しい生き方を表現する場所』であり、そこへ向かうさまざまな行動にチャレンジさせてもらえる風土があるからです。私自身が自分のためのライフスタイルを考えた時、20年以上東京に暮らして楽しめることが変わってきたのを感じたので、海のある鵠沼海岸に引っ越しました。今までは会社に近い所を住む場所として選んでいたけれど、これからは住みたい場所・過ごしたい場所で選ぼうと思ったんです。ライフスタイル社に入ってからは片道2時間の通勤ももちろん試してみました。グリーン車や通勤ライナーを利用して、電車の中で仕事をする環境をお金で買う、ということもやってみました。それを経て、今はコストの面でも環境の面でも、このSatellite YUIGAHAMAが、私にとっても、雇い主である会社にとっても、最も賢明な選択なのではないかと思っています。まだ実証実験中ですが(笑)重要なのは『今、自分がやるべき事に対して最大のパフォーマンスを発揮できる場・スタイルを選ぶ』ということだと思います。私はやみくもにリモートワークや新しい働き方を推進することには疑問を持っているんです。例えば役割や仕事内容によっては、チームのメンバーがいつも同じ場所に一緒にいて、電話を取ったり、密にコミュニケーションしたり、空気を共有したりすることが重要な場合もあります。要は、時流だけに惑わされず、本質的な選択をするということですね」

Satellite YUIGAHAMAでは、今後もさまざまな企業から視察のアポイントが入っている他、入居者たちが働き方や地域貢献について情報交換をするイベントなども企画されている。この施設を始まりとして、鎌倉のあちこちに空き家・空き店舗を活用したシェアオフィスや企業のサテライトオフィスが誕生し、それらが繋がり合って、仕事や情報や人材が循環するような日が来るのも遠くはないのかもしれない。

 


Satellite YUIGAHAMA公式サイト

第2話

第1話

 

 

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