大磯町祷龍館プロジェクトが挑む空き家再生。土地に息づく歴史を、価値につなげる
みなさん、こんにちは。ハロリノプロデューサーのダイキです。日本有数の別荘地、神奈川県大磯町の海水浴発祥の地に建つ古民家を、地域に開かれた場として継承する祷龍館プロジェクト。地域のカルチャーに触れながらアイデアを出し合った3回のイベントを経て、地域のポテンシャルやこの地で求められる事業のかたちが見えてきました。
1. 空き家に共感を集め、地域のために活用する
日本全国のまちづくりに関わる中で、さまざまな相談をお寄せいただきます。特に多いのが、「地域貢献のために建物を活用したい」「たくさんの人たちと一緒に進めたいけど具体策が分からない」というもの。「まちづくりに活用してくれる方に」と不動産市場に任せたくても、使いたい人とのマッチングがうまくいかないケースも少なくありません。
そこでハロリノでは、空き家の利活用プロジェクトを考える際、物件や地域が持つ歴史や文化のポテンシャルについて地域の人々やその地域が好きな人たちと深掘りし、物件の背景を読み解くプロセスを取り入れることを心掛けています。
今回の祷龍館プロジェクトでいうと「海水浴発祥の地」。土地に息づく歴史や文化のストーリーを呼び起こし、祷龍館跡地でまちづくりにつながる事業を起こすことをゴールとして、今年8月に始まりました。
大磯町は海と山が近くて、人口は約3万人、JR東海道線が通っていて……といった表面的な情報だけではわからないまちの歴史を知るために、第1回イベントではまち歩きを開催。まちをよく知る、地域プロデューサーの原大祐さんをお迎えし、町のことを教えていただきました。大磯町が海水浴発祥の地となった理由とは? 歴代首相の邸宅が建てられた別荘地になった背景とは? などのお話を聞き、町に対する理解を深めます。
未来のことを考えるには、過去のことを知るべきとはよく言いますが、まさにその通りだと参加者のみなさんは実感していた様子。大磯町在住の参加者もみなさん知らないことばかりで自分の町に対する理解が深まったと話されていました。
2. “遊び心”が生み出すアイデアとコミュニティ
遊びの研究で知られるヨハン・ホイジンガは自著の中で、人間活動の本質が遊びであるという「ホモ・ルーデンス」を提唱していますが、まち歩きのような学びやまちづくりの意識を高めることを目的としたイベントにも“遊び心”ある企画が大切だと感じています。
まち歩きイベントの締めでは、この土地の魅力を味わい尽くそうと照ヶ崎海岸で夕日を見ながら刺し盛りを食す内容に。地元の酒屋さんで買ったお酒と地元の魚屋さんにつくっていただいたお刺身をみんなで楽しみました。
また、イベント2回目の物件活用について意見交換を行うワークショップでも、堅苦しい議論ではなく、ラフに会話を楽しみながら妄想を広げていきました。まちの中にこういったものがあると良いよねという話から、最近新しいお店ができたとか、普段休みの日はどこによく行っているなど会話が膨らみ、共通点が見えてきたりもします。
ワークショップと聞いて、堅そうだなという印象を受ける参加者もいるかもしれません。でも型を決めずに参加者同士で妄想を広げて会話を楽しむことで、自然とキーワードが出てきます。今回も、そのキーワードを軸に「こう活用すると面白いのでは?」とアイデアを出し合い、みんなで“遊び心”を持って「ワクワクする体験」を共有することで、柔軟なアイデアが出てきました。
そして、前半の最終回となる3回目のイベントでは、このワークショップから出た参加者のアイデアを実際に試すことにしました。それが、海岸で楽しむテントサウナ企画です。「明治時代から医療目的で使われていた塩湯治の場所という祷龍館が持つ歴史や文化が持つストーリーをブランディングに活かしたい」「歴史的背景を読み込みつつ、今のニーズに合った活用プランなら大磯町の良さをより体験できるのでは」という思いを込めて企画。
地元の酒屋さんや魚屋さんに続いて、より幅広く町の方々にも関わっていただきたいという思いを込めて、テーマを「地域循環」に設定し、サウナに使う薪の調達は町で森林保全に取り組む方に協力いただくなど、地域のポテンシャルを所々に詰め込みました。
また、当日のゲストは、サウナの楽しみ方やなぜ最近ブームなのか?という理解を深めようと、アウトドアでのサウナの魅力を広めようと活動するユニット「サウナキャンプ」の兼康希望さんをお迎えし、たっぷりお話いただきました。
当日の様子はこちらの記事で紹介しています
https://hello-renovation.jp/topics/detail/17250
海岸で調達した石をサウナストーンに使えるのも砂利で有名な大磯町ならではのサウナスタイル。テント型サウナでしっかりと暖まり、照ヶ崎海岸を水風呂として浸かりました。とても気持ちが良く、昔の方々が塩湯治していた理由がわかるような気がします。
大磯町は相模湾のちょうど中心にあって潮がぶつかるポイントで、河川から淡水が入ることがないため海水の塩分やミネラル濃度が高いといわれています。この照ヶ崎海岸は、この海水を飲むためにアオバトが集団飛来する地域として神奈川県の天然記念物にも指定されています。
3. プロジェクトから生まれるさまざまな関わり方
今回のプロジェクトはテナントの賃貸募集、リーシングに分類されますが、歴史や文化的な背景を活かした事業に活用してもらいたいというオーナーの思いから、イベント形式で取り組んできました。
これまで3回のイベントを終え、「この場所で事業をしたい!」と参加者の一人が手を上げてくれました! 建築設計事務所の代表で、大磯町で築50年の古民家をリノベーションした宿泊施設「a OISO La」の運営を手がける大塚彰宏さんです。来年度以降は、大塚さんが、みなさんと一緒にアイデアをブラッシュアップしながら事業の実現可能性を高め、地元の方々から愛される場づくりを進めていきます。
このプロジェクトは、事業者を募るだけでなく、この場所を応援したい、関わりたいという人たちとの繋がりをつくることも狙いの一つです。事業を始める前から施設や場所のファンになっていただいた仲間と一緒に場所をつくっていくことができるのは大きなアドバンテージになります。
地域貢献やエリアの価値向上を目指す活動には、「人」の存在が必要不可欠です。引き続きイベントを通じて遊休不動産の活性化に取り組んでいきます。祷龍館プロジェクトへの参加をよろしくお願いします!
次回は1月7日、大磯町を一望できる「a OISO La」で
BBQとサウナと〇〇? 新年の抱負を語る会!
新年の抱負と、祷龍館跡地での事業アイデアを語り合いましょう。1月7日(土)、建築家・大塚彰宏さんが運営する小さなVilla「a OISO La」で、新年会を開催します!
〔日 時〕2023年1月7日(土)15:00〜18:00
〔会 場〕a OISO La(神奈川県中郡大磯町東小磯955-5)
〔参加費〕2,000円 ※懇親会費として
〔申 込〕イベントページから詳細をご覧の上、お申し込みください
※本イベントは終了いたしました。たくさんのご参加ありがとうございました。
当日の様子はレポート記事をぜひご覧ください
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プロジェクトのチームメンバーはこちら
- 祷龍館オーナー 吉和田 忍 さん
- 大磯地方創生事業推進コンソーシアム 水谷 歩 さん
- 西湘をあそぶ会 代表 原 大佑 さん
- エンジョイワークス 彼末、永田
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