空き家活用アイデアは「シェア」の中に。地域に開く再生の物語

シェア型の価値観と行動が広がり続けるいま、それを象徴するのは「空間」のシェアといえるのではないでしょうか。土地や建物のシェアに終わらず、地域コミュニティまでもシェアする体験がそこにはあります。中でも低コストで活用できる空き家はポテンシャルに満ちあふれた存在。地域に開くシェア事例の多様さをお伝えします。

社会デザイン研究者の三浦展さんは、かつての著書「これからの日本のために『シェア』の話をしよう」のなかで、私有を拡大することに喜びを見い出した1980年代までのhaveの時代から、何になりたいかが重要になった1990年代のbeの時代、そして2011年には少しずつシェアの時代になったとつづっています。

またシェアの時代は「自分が何を持つか、何であるかよりも、自分たちが何を一緒に持つか、使うか、みんなで何をするか、何に共感するか、ということが重視される時代」であるとも。

私有することよりも他人とのつながりや共感することに喜びを感じるようになったいま、私たちはどういったかたちで「シェア」を取り入れられるのか。コミュニティづくりともいえる空間のシェアについて、5つの事例を見ていきましょう。

シェアのかたち1. 飲食店事業向けキッチン

地域での開業を後押しする、MONZENのチャレンジキッチン
(大阪府藤井寺市/集、飲、食、歩。天満宮門前が地域にひらかれる未来プロジェクト)

昨年オープンした「MONZEN」(モンゼン)は、まさに道明寺天満宮の門前に地域拠点として誕生するコモンスペース。まちの案内所をはじめ、地ビール醸造所、チャレンジキッチン、レンタルスペースとして、築100年近い古民家がクラウドファンディングで再生活用されました。

「森田さんの地ビールや、曜日別で昼夜さまざまな飲食が出店されるチャレンジキッチンに期待しています。一度訪れたお客さんが、他の曜日や時間帯にもう一度行ってみようかなとか。大阪市内のお店が、南大阪エリアへのポップアップとしてMONZENに出店してもらうのもいいですね。お客さんの反応しだいではお店がそのまま道明寺に本格出店するきっかけになるかもしれません」と、プロジェクトメンバーの一人である道明寺天満宮宮司、南坊城さん。キッチンをシェアするだけでなく、テストマーケティングの場として使ってもらい、地域での開業を後押しします。

大阪・道明寺天満宮宮司 南坊城さんインタビュー「“ついで”でにぎわう門前町を目指して」
https://hello-renovation.jp/topics/detail/11663
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シェアのかたち2. キッチン、棚、憩い

商店街の空きテナントを活用した多世代交流拠点づくり
(神奈川県鎌倉市由比ガ浜/シェアで地域とつながるプロジェクト)

コミュニティ拠点はたくさんありますが、どうしても利用者層は偏りがちです。そこで多様な方が世代間で隔たりを感じることなく楽しめる多世代交流拠点づくりに挑戦したのがこのプロジェクト。高齢者が集まる集会所でも、子育て世代中心の子育て施設でも、若者世代中心のコワーキングスペースでもなく、ちびっこからおじいちゃんまでみんなで交流できる場所を目指し、多世代交流の活性化につながる仕掛けとして、シェアキッチンやシェア棚などさまざまな「シェア」を軸に展開中です。

※このプロジェクトは国土交通省の住まい環境整備モデル事業にも採択され、全国の空き家再生のモデルケースとしても期待されています。

シェアで地域とつながる。鎌倉・由比ガ浜の多世代交流拠点づくりにアイデアを!
https://hello-renovation.jp/topics/detail/12094

シェアのかたち3. グループホームでも同居でもない、自立した住まい

重度障害者がともに暮らす地域密着の住まいづくり
(東京都世田谷区/たまよんガーデン・コミュニティプロジェクト)

STORIES記事「重い障害があっても地域で暮らし続けたい。多摩川とともに生きる、つながる、やさしいまちづくり」(2021年11月14日公開)より

重度障害者の地域密着の住まいづくりプロジェクト「たまよんガーデン・コミュニティ(たまよんプロジェクト https://tamayon.com)」。舞台は東京都世田谷区玉川4丁目(たまよん)にある、プロジェクトリーダーである速水さんの実家です。

速水さんの娘、雅子さんは重症心身障害者。この地域に育って30年余り、表情は豊かで声も出ますが、座位、立位はとれず全介助が必要な状態です。ここ数年、障害はさらに重くなり医療的ケアが必要になるのも目前。また速水さんの老いとともに「親なきあと」の課題も見据え、グループホームでも同居でもない、自立した住まいをつくりあげていこうと立ち上がりました。目指すのは、多摩川とともに普通に暮らす、つながる、生きる、やさしいまちづくり。今年7月の入居者募集開始、11月の内覧会開催に向けて活動中です。

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シェアのかたち4. ものづくりを楽しむ心と住まい

オーナー一家の思いを受け継ぎ、シェアハウスに共有アトリエを
(神奈川県葉山町/葉山一色ものづくりシェアハウスプロジェクト)

STORIES記事「葉山町一色の“ものづくりシェアハウス”完成! お披露目イベントレポート」(2021年6月12日公開)より

神奈川県葉山町の自然豊かな一色エリアの空き家をシェアハウスにするプロジェクトは、「ものづくり」をテーマにリノベーション計画が進んでいきました。

なぜものづくりだったのでしょうか。それは、かつてこの家に住んでいたオーナーご家族が、「ものづくりを楽しむこと」を暮らしの中で大切にされてきたから。シェアハウスにする際は建物をただ残すだけでなく、思い入れのある実家への想いを受け継ぎ、ものづくりを楽しむ人が集まれるような拠点にすることになりました。

今回もほかのプロジェクトと同じように、イベントでアイデアを出し合いながら余白を埋めていきました。参加者は入居希望者をはじめ、地域の人たちやシェアハウスの運営に興味のある人などさまざま。「時や世代を越えて次につなげたい」「もともとあるものを活かしながら新たな命を吹き込み、大切にしていきたい」といった丁寧な暮らし方への意見がヒントとなり、自由なアイデアが飛び交いました。そこでまとまったのが「今日スペースの一角にみんなのアトリエスペースをつくる」というアイデアでした。すぐにリノベーション計画に反映し、ものづくりシェアハウスとしての運営がスタートしました。

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シェアのかたち5. 函館の伝統的建造物をシェア

地元の人たちが気軽に事業に挑戦できる複合施設に
(北海道函館市/函館・歴史的建造物の継承プロジェクト)

STORIES記事「函館・歴史的建造物の継承ファンド達成お礼! 最新間取り図も初公開」(2022年10月7日公開)より

昨秋、募集金額880万円を達成した、函館西部地区にある伝統的建造物の旧守屋住宅を再生する「函館・歴史的建造物の継承ファンド」。このプロジェクトが目指すのは、地元の人たちが気軽に新規創業などにチャレンジできる場所です。「出店者から広がるコミュニティ」をコンセプトに、既存の和室の間取りを生かして小分けのブースをつくり、通り土間を通すことで商店街のように出店者同士の顔が見え、つながりが生まれるようにリノベーションプランを考えました。

正面テナントの焼き菓子屋さんを訪れたついでに、奥の雑貨屋さんにも足を運んだり、2階に入居したデザイナーさんとの打ち合わせ前にコーヒーをいただいたり。まだまだ僕らの利用イメージで実際のテナントはこれから募集しますが、周辺エリアは個性豊かな小商いが続々増えているので、ドリンクを片手にまち歩きも存分に楽しんでください。完成をどうぞお楽しみに。

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函館旧市街の小商いがおもしろい。伝統建築を再生するまちの不動産屋、蒲生寛之さんが考えること
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ほかにもハロリノには、さまざまな空間のシェアのかたちがあります。魅力的なアイデアに想いをのせて、ふるさとをつくる投資に参加しませんか。また、事業を起こしたい人をハロリノは応援します! 画面右下の「お問い合わせ」から気軽にご相談ください。

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